【オールカマー】持続力戦に優れた「Lyphard」内包馬が中山外回りにピッタリ 有力馬の血統を一挙解説

坂上明大

2022年オールカマー注目の血統,ⒸSPAIA

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オールカマーの血統傾向

秋のGⅠに向けて多くの実績馬が集うオールカマー。中山芝2200m(外)という少々トリッキーなコースで行われる重賞ですが、意外なことに過去10年(※新潟開催の2014年除く。以下同様)で6番人気以下からの連対は1頭しかいません。中山芝2200mに強い血統を中心に、オールカマーのレース傾向を整理していきましょう。

まず、各データを分析する前に理解しておかないといけないのは、オールカマーというレースがGⅠに向けての別定GⅡ、つまりステップレースであるという点です。時期的にも斤量的にも条件の整った前哨戦のひとつであるため、天皇賞(秋)やジャパンC、エリザベス女王杯などに向けての始動戦として使うGⅠ級の馬が多く、出走馬の中での格の差が大きくなりやすい重賞というわけです。過去10年で馬券圏内に好走した馬の7割以上が単勝オッズ9.9倍以下であり、9割以上が同19.9倍以下だったというデータがそれを強く表しています。

単勝オッズ別成績(過去10年)※新潟開催を除く,ⒸSPAIA


単勝オッズ別成績(過去10年 ※新潟開催を除く)
単勝オッズ 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
~9.9倍 7-7-5-16/35 20.0% 40.0% 54.3% 103 93
10.0~19.9倍 1-2-3-15/21 4.8% 14.3% 28.6% 53 101
20.0~49.9倍 1-0-1-22/24 4.2% 4.2% 8.3% 158 40
50.0倍~ 0-0-0-43/43 0.0% 0.0% 0.0% 0 0

上記の理由から、馬券予想における血統の重要性は低いレースといえますが、そのなかでも注目血統として挙げたいのはLyphard。ディープインパクトやハーツクライの血統表内に入る同血脈はHyperionとFair Trialを内包した機動力と持続力に優れる血脈であり、中山外回りコース特有の持続力戦にはピッタリといえるでしょう。

Lyphard内包馬の成績(過去10年)※新潟開催を除く,ⒸSPAIA


Lyphard内包馬の成績(過去10年 ※新潟開催を除く)
単勝オッズ 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
~9.9倍 3-7-3-10/23 13.0% 43.5% 56.5% 81 97

ただ、Lyphard自身は1969年生まれの競走馬のため、現在はその血をどう増幅するかがポイントとなっています。2021年3着馬グローリーヴェイズや2019年2着馬ミッキースワローのようにLyphardのインブリードを持つ馬の好走が近年は目立ちますし、トニービン(2016年2着サトノノブレスなど)やNureyev≒Sadler's Wells(2018年1着レイデオロなど)、Danzig(2015年2着ヌーヴォレコルトなど)といったHyperion+Fair Trial(母Lady Juror)を持つ名種牡馬との組み合わせでも類似の効果が見込めるでしょう。

注目馬の血統解説

・デアリングタクト
エピファネイア×キングカメハメハ×サンデーサイレンス×名牝系という綺麗な血統構成で、苦手条件の少ない三冠牝馬です。立ち肩のピッチ走法のため後半の持続力勝負はベスト条件とはいえませんが、上位争いに加われる地力と適応能力は十分に備えています。

・ソーヴァリアント
2020年秋華賞でデアリングタクトの2着だったマジックキャッスルの半弟。母ソーマジック譲りのパワースピードに父オルフェーヴルからスタミナを補強した配合形で、姉同様バランスに優れたタイプです。適距離は1800~2000mでしょうが、母母が持つHyperion+Fair Trial(母Lady Juror)血脈も支えとなって中山芝2200mでは3戦3連対の実績を残しています。

・ヴェルトライゼンデ
母マンデラは2003年独オークス3着馬。代々Hyperion血脈を掛け合わせてきたドイツ牝系であり、本馬はノーザンテースト(Hyperionの4×3)の4×3を持つドリームジャーニーの仔という点からもタフさに優れた中長距離馬といえるでしょう。芝2200mは適距離ですが、道中から厳しい流れになった方が持ち味がさらに活きそうなタイプです。

・ジェラルディーナ
母ジェンティルドンナはLyphardの4×4や母父父Danzigなどを持ち、ディープインパクト産駒の中でも特に機動力と粘り強さに優れた名牝。本馬は父にモーリスを配したことでDanzigの5×4、Lyphardの5×5・5など母の良さを継続しており、オールカマーとも相性の良い血統構成といえます。本馬自身は気性面に課題があり機動力型と呼べる走りは見せていませんが、後半の持続力勝負なら十分に勝負になる力は秘めているでしょう。血統面から注目の一頭です。

Lyphard内包馬の成績(過去10年)と注目馬,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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