【菊花賞】「芝2200mの2~3勝クラス勝ち馬」は複回収率276% データで導く穴馬候補3頭
鈴木ユウヤ
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データで見る「穴候補3頭」
今週日曜の京都メインは菊花賞。牡馬クラシックの最終戦であり、スタミナ自慢にとって待望の長距離GⅠでもある。
先週の秋華賞は「そもそも荒れにくい」という話から入ったが、今度は少しだけ趣が異なる。まず、菊花賞の過去10年で単勝オッズ50倍以上の馬は【0-0-0-74】と馬券絡みがなく、突拍子もない大穴を狙ってもなかなか実らない。ところが1~3番人気も【6-4-3-17】複勝率43.3%、複回収率72%と微妙で、馬券の命運はいわゆる「中穴」くらいの馬から何を選ぶかにかかっている。
では今年はどの馬を狙っていくか。様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴候補を導き出した。
古馬相手の芝2200m実績を見ろ ヘデントール
まず1頭目はヘデントール。新馬戦で後の皐月賞馬ジャスティンミラノに敗れ、それから5戦して4勝。3勝クラスの日本海Sを圧勝してここへ駒を進めてきた。
菊花賞には「2200m実績馬が穴を開ける」という法則がある。芝2200m戦で勝利歴があった馬は過去10年の当レースで【3-4-5-39】複勝率23.5%、複回収率108%だ。
「セントライト記念勝ち馬が走っているだけでは?」と思うかもしれないが、内訳を見るとそうではない。数字を押し上げているのは「古馬相手の2~3勝クラスで芝2200mを勝った馬」で、その成績は【1-2-3-5】複勝率54.5%、複回収率276%である。17年13番人気3着ポポカテペトル、18年10番人気3着ユーキャンスマイル、22年7番人気2着ボルドグフーシュ、そして昨年4番人気1着ドゥレッツァらがこのパターンに該当していた。
一概に古馬の2~3勝クラスといっても、2600mだとメンバーがやや手薄になりやすい。推論になるが、2200mは長距離戦に近いペースを経験しつつ、比較的レベルの高い相手と戦って力を測れる絶妙な距離なのではないだろうか。
今年はアドマイヤテラ、ピースワンデュック、ヘデントールの3頭が該当する。ここではヘデントールに注目した。
日本海Sは出遅れ気味のスタートから外枠を利して3番手に取りつき、3勝クラスの古馬相手に3馬身半差をつけて完勝。レースの後半1000mが57.5秒と優秀で、おまけにラスト3F11.7-11.3-11.1の加速ラップまで記録した。
2200m以上のレースで後半1000m57.5秒以下となると1986年以降で19例しかなく、そのうちラスト1F11.1秒は最速。ディープインパクトの天皇賞(春)、サートゥルナーリアの神戸新聞杯(ともにラスト11.3秒)を超える数字だった。春の既成勢力相手にどんな走りを見せるか楽しみだ。
長距離の友道康夫厩舎×武豊騎手の強力タッグ アドマイヤテラ
2頭目はアドマイヤテラ。2勝クラスの芝2200m戦を勝っての参戦で、前章のデータにも合致する存在だ。
管理するのは「芝長距離に強い厩舎」として定評のある友道康夫厩舎。過去10年、芝3000m以上での成績は【5-6-3-29】複勝率32.6%、複回収率96%だ。21年の天皇賞(春)でワールドプレミアが勝利してからは【0-0-0-13】と好走が止まっているのは気になるが、トータルとして高水準であることには違いない。
そのうち菊花賞は【1-1-2-9】で複回収率157%。また、3000m以上で武豊騎手を起用した際は【1-1-1-0】で3戦いずれも馬券に絡んでいる。三度あることは四度あって然るべきだろう。
アドマイヤテラは母がオークス3着馬アドマイヤミヤビで、4代母にウインドインハーヘアがいる由緒正しき良血馬。2走前の阿寒湖特別は勝負所で動けないポジションにハマってしまい、脚を余し気味に追い込んで2着。取りこぼしの感が強かった。前走は直線内目から鋭く伸びて2馬身差の快勝。こちらが本来の力量といえる。距離が延びてさらにパフォーマンスを上げてくれば上位進出も可能だ。
大幅距離延長に強いエピファネイア産駒 ビザンチンドリーム
ラストはビザンチンドリームを選んだ。新馬戦ときさらぎ賞を豪快な追い込みで連勝したが、春二冠は13、17着と結果を出せず。神戸新聞杯6着からここへ臨む。ダノンデサイルと同じエピファネイア産駒である。
エピファネイアの仔には「一気に距離が延びても苦にしない」という傾向が表れている。芝の「500m以上の距離延長」で通算【10-8-10-99】複勝率22.0%、単回収率152%、複回収率100%。3歳時に限ると【7-5-5-57】複勝率23.0%、単回収率224%、複回収率117%と黒字域だ。菊花賞もこれまで産駒が6頭出走し【0-2-1-3】の複回収率173%と、未勝利ながら存在感を示している。
エピファネイアは現役時代、とにかく前進気勢が強すぎてレースで引っかかる馬だったが、それでいて距離延長時【3-1-0-1】という不思議な戦績だった。また3歳以降は2000m戦【0-1-1-4】とパンチを欠いたように、メンタルとは裏腹にフィジカル的には長丁場のスタミナ勝負の方が得意だった。産駒にもそういう面が引き継がれるようで、引っかかる馬が多い割に短距離での成績はイマイチで、むしろ距離延長時が馬券の狙い目となっている。
ビザンチンドリーム自身の話に戻すと、神戸新聞杯は1~3着馬がいずれも4角で内ラチ沿いを通っていたのに対し、こちらはおよそ8車線目を回っていた。いくらなんでもコースロスが大きすぎた。春の上位勢と比べて差を感じないといえばウソになるが、近走着順の見た目よりは地力の高い馬である。
<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。
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