【アルテミスS】前走圧勝カムニャックの課題は距離短縮 好データに合致したのはショウナンザナドゥ

勝木淳

過去10年のデータから見るアルテミスS,ⒸSPAIA

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牝馬の出世レース

東京開幕週のサウジアラビアRCと同じく、マイルを舞台に行われる2歳重賞は出世レースとして知られる。今年の二冠牝馬チェルヴィニアを筆頭にリスグラシュー、ラッキーライラック、ソダシと古馬でもGⅠを勝つ名牝の名が並ぶ。2着馬には三冠牝馬リバティアイランドもいて、将来を見据え、がぜん注目すべきレースになった。

スピードと持続力、確固たる末脚と試される要素はいずれも本格派に必要なもの。2歳牝馬にとって東京マイルは厳しく、乗りきるだけでも価値はある。データは過去10年分を使用する。

人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【4-3-0-3】勝率40.0%、複勝率70.0%、2番人気【1-5-1-3】勝率10.0%、複勝率70.0%は信頼できるものの、3番人気以下はほぼ横並びに近い。序列がつききれない2歳戦らしく、人気の盲点も存在する。

東京マイルにかわって本領を発揮するタイプなど、見定めたいポイントは多い。

所属別成績,ⒸSPAIA


出世レースとなれば、関西馬は長距離輸送もいとわない。関東馬【4-4-3-66】勝率5.2%、複勝率14.3%に対し、関西馬は【6-6-7-38】勝率10.5%、複勝率33.3%。この時期に東京を経験することは将来を考えると意義は大きい。

さらに10月に重賞を勝って賞金を積み上げるのは翌春に向け理想的な形であり、関西馬の出走意欲は高い。単複回収値も179、116と高く、穴は関西馬から出現する。人気馬だけでなく、人気薄の関西馬にも目を配りたい。

前走新馬は距離変化に注意

中京芝2000mの新馬を勝った友道康夫厩舎のカムニャックは母がJRA5勝のダンスアミーガ。1400、1600mで活躍し、ターコイズS16番人気2着と驚かせた。オークス馬ダンスパートナーの一族で、近親には重賞2勝フェデラリストなどがいて中距離寄りの血統でもある。東京マイルに対応できる持続力も期待できる。

自身の新馬はスローペースで、ラスト3F12.2-10.9-10.9を抜け出し、2着馬に3馬身半差をつける圧勝。瞬発力を証明した。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走新馬は【3-3-2-40】勝率6.3%、複勝率16.7%で、未勝利【6-4-2-18】勝率20.0%、複勝率40.0%より見劣る。1戦1勝で迎える2戦目が重賞というシチュエーションは案外難しい。

1度レースを経験したことでイレ込んだり、初戦ではみせない仕草や走りをすることも多い。何事も最初は難しいが、二度目も簡単ではない。

前走新馬・距離別成績,ⒸSPAIA


前走新馬の距離内訳は同じ1600mが【2-3-2-21】勝率7.1%、複勝率25.0%で、距離延長【0-0-0-11】、短縮【1-0-0-8】勝率、複勝率11.1%。キャリア2戦目で距離変化に対応するのは容易ではない。カムニャックにとって越えなければいけない壁だ。

前走1600m新馬といえば、エピファネイア産駒マイエレメントがいる。新潟の新馬戦は前後半800m48.6-46.3のスローペース。レース上がり33.9を自身は33.3で差し切った。

エピファネイア産駒は通算で前走新馬戦1着が【13-11-6-45】勝率17.3%、複勝率40.0%。うち、重賞は【1-3-2-27】勝率3.0%、複勝率18.2%。今年のきさらぎ賞をビザンチンドリームが制した。

2歳重賞に限ると、【0-1-1-23】。馬券に絡んだ2頭はソネットフレーズ(2021年デイリー杯2歳S2着)、プロクレイア(今年の新潟2歳S3着)といずれも牝馬だが、新馬、重賞連勝という出世コースに乗れる馬が少ないのは気がかりだ。

アルテミスS全体でみても、前走1600mの新馬戦、中4~8週は【0-1-2-11】複勝率21.4%。レース間隔も少し微妙なラインだ。

前走未勝利・距離別成績,ⒸSPAIA


対して、前走未勝利戦の距離内訳は同距離【2-2-1-10】勝率13.3%、複勝率33.3%、延長【0-1-0-4】複勝率20.0%、短縮【4-1-1-4】勝率40.0%。こちらは短縮がいきる。

同距離の未勝利戦で0秒8差の快勝を決めたショウナンザナドゥはセレクトセール1億8500万円(税抜)の高額馬。レースは前後半800m46.6-46.9。後半800m11.7-11.9-11.4-11.9の持続力勝負で、4コーナー先頭から5馬身差をつけた。3、6着馬はすでに未勝利を脱出しており、スケールを感じさせる一頭だ。

最後に前走重賞は札幌2歳S【1-1-1-3】、それ以外は【0-0-0-9】。2歳重賞のなかでも持続力勝負になりやすい札幌2歳Sだけがつながる。やはり東京マイルを乗り切るには持続力が必要になる。瞬発力特化はインパクトが大きいだけに人気になるが、考えどころだろう。

過去10年のデータから見るアルテミスS,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。

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