【神戸新聞杯】やっぱり実績上位のプラダリア! ボルドグフーシュ、パラレルヴィジョンは「上がり馬」になれるか

勝木淳

神戸新聞杯インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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1番人気7勝

菊花賞は昔から“逆転の一冠”とも呼ばれ、春に結果を残せなかった馬が最後に逆襲を果たす舞台だ。さらにいえば、春二冠に出走できなかった馬が夏を境に成長、一気に頂点まで駆け上がる、上がり馬の象徴的なレースでもある。春とは様相一変という年は珍しくはないが、今年のような春二冠連対馬不在という年はグレード制導入以降、例がない。日本ダービー3着アスクビクターモアの去就次第では、3着以内までいなくなる。

さあ逆転の一冠をつかみとるのはどの馬か。この10年で7勝、菊花賞への最短距離にある神戸新聞杯について、過去10年間のデータをみていこう。

過去10年人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気は【7-1-0-2】勝率70.0%、複勝率80.0%と絶対的。中京だったこの2年はコントレイル1着、シャフリヤール4着。昨年は思わぬ道悪競馬(不良)になったことが要因。天候次第では崩れる場面もある。

過去10年の1番人気はすべて前走日本ダービー5着以内。2着以内【5-0-0-2】、4、5着【2-1-0-0】。1番人気候補プラダリアと同じダービー5着は12年の勝ち馬ゴールドシップだ。皐月賞馬と単純に比較するのは危険だが、プラダリアも神戸新聞杯ならデータ的に十分やれる。

勝ち馬は3番人気【1-2-2-5】勝率10.0%、複勝率50.0%まで。4番人気以下は権利獲得圏内の3着までなら可能性はあるものの、まずは1~3番人気が神戸新聞杯のセオリー。もっとも今年はこれが通用するかどうか微妙ではある。


ダービー組は好走、上位人気が条件

プラダリアも合格ラインとはいったものの、例年であれば1番人気候補に値する実績があるわけではない。異例づくしの菊花賞戦線、そのトライアルであることは忘れないでおきたい。

過去10年前走クラス別成績,ⒸSPAIA


次は前走成績について。前走クラス別成績は当然前走GⅠ【9-6-3-32】勝率18.0%、複勝率36.0%。ここは日本ダービー【9-6-2-30】勝率19.1%、複勝率36.2%が大半。今年も5着プラダリア、9着ジャスティンパレス、12着アスクワイルドモアなど、候補はいる。

過去10年前走ダービー組着順別成績,ⒸSPAIA


プラダリアの5着は【1-0-0-1】(前出12年ゴールドシップが勝利)、ジャスティンパレスの6~9着【0-0-1-8】複勝率11.1%、アスクワイルドモアの10着以下【0-2-1-16】複勝率15.8%。負けた組の巻き返しもあるにはあるが、いつもなら強調される成績ではない。その日本ダービーは前半1000m58.9、最後の1000m59.0、2.21.9の超ハイレベル。1、2着は4コーナー14番手の追い込み競馬だった。粘って3着アスクビクターモアと比較すると見劣るが、プラダリアも4コーナー5番手から5着に食い下がった。

ほかには同舞台の京都新聞杯Vのアスクワイルドモアの巻き返しぐらいか。軽くて時計が出る馬場ならその可能性はさらに高まる。

過去10年前走ダービー組人気別成績,ⒸSPAIA


日本ダービー組について別角度から。前走人気別成績を出すと、前走10番人気以下【0-4-0-19】複勝率17.4%で、9番人気以内【9-2-2-10】複勝率56.5%とは差がある印象。ここもプラダリアの5番人気【1-0-1-2】勝率25.0%、複勝率50.0%が優勢だ。


パラレルヴィジョンはここを突破できるか

次に前走GⅢ【0-1-1-7】複勝率22.2%に注目。このうち、前走ラジオNIKKEI賞が【0-1-1-5】複勝率28.6%。今年も3着サトノヘリオスがいる。ラジオNIKKEI賞から馬券圏内にきた2頭は12年ロードアクレイムがラジオNIKKEI賞8着から神戸新聞杯2着、18年メイショウテッコン同1着から3着だった。サトノヘリオスは勝ったフェーングロッテンと同じように内枠からインを巧みに立ち回って3着。恵まれた面もあるが、平坦、開幕週の福島で差し遅れの印象もある。急坂がある中京ならば、坂を上がってから迫ってくる。

前走白百合Sは【0-0-1-4】。15年トーセンバジルが白百合S7着から神戸新聞杯3着だった。前走・白百合S2着のヴェローナシチーは京都新聞杯でも2着。京都新聞杯Vのアスクワイルドモアとの差はたった0.1。相手なりの面も否めないが、春の悔しさをここで晴らせるか。期するものはある。

過去10年前走ダービー組人気別成績,ⒸSPAIA


神戸新聞杯で前走1、2勝クラスは【0-3-4-51】。勝ち馬こそ出ていないが、ここ10年の菊花賞馬のうち、春二冠未出走は4頭いる。フィエールマンを除く3頭トーホウジャッカル、キセキ、ワールドプレミアは神戸新聞杯3着以内。このうちキセキとトーホウジャッカルが前走で夏の2勝クラスに出走していた。条件戦から神戸新聞杯3着以内は上がり馬のひとつの条件。

そこで前走1、2勝クラス出走馬のデータを比べる。条件戦の距離は2000m【0-2-2-21】複勝率16.0%、2200m【0-0-0-4】、2400m【0-0-0-3】、2600m【0-0-1-12】複勝率7.7%。3000mの本番を考えると、スタミナの裏づけは欲しいところだが、神戸新聞杯で好走するためにはスタミナより軽さが必要になる。トーホウジャッカルもキセキも前走は2000mだった。今年これに該当するのは、1勝クラスだが東京芝2000mを勝ったパラレルヴィジョン。キャリア2戦、遅れてきた好素材はここで権利をとりたい。

2勝クラスを突破したボルドグフーシュの前走は2200m。同舞台での勝利だけに評価したくなるところだが、データからは好走がない。困った。3勝クラスの同馬は今年の菊花賞なら出走できそうだが、やはり菊花賞を勝つには、神戸新聞杯3着以内に入れる力がほしい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。



過去10年前走ダービー組人気別成績,ⒸSPAIA



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