【2歳馬ジャッジ】ヤマニンウルスがダートで破格の高指数勝ち 芝に対応できればGⅠ級の逸材

山崎エリカ

8月3週目の2歳馬ジャッジ,ⒸSPAIA

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ヤマニンウルスがダートで圧勝 8月3週目の2歳戦

このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は後に新潟2歳Sを勝ち重賞制覇を達成するキタウイング、ダートで2着馬に4.3秒差をつける圧勝劇を見せたヤマニンウルスなどがでた8月20日、21日の2歳戦について指数と評価を掲載する。

8月21日(日) 新潟1R 優勝馬 キタウイング 指数-4 評価A
福島芝1200mの新馬戦ではやや出遅れ、その後の行きっぷりも悪く、前と後ろの集団に分かれた中で3角では前の集団とかなり離されていた。4角手前ではやや差は詰まったが、届きそうな感じではなく、そこから直線で内を突いて4着だった。

今回はデビュー2戦目で新潟芝1600m。今回も大外10番枠から出遅れて後方からになった。しかし、折り合いを付けながらで新馬戦のように追走に苦しんでいたわけではない。最後の直線では外に出されると早め先頭に立ったバロックダンス(新馬戦でノッキングポイントの3着)を目標に仕掛け、最後にキッチリと差し切った。3着以下は5馬身以上離れており、上位2頭はなかなか強い一戦だったと言える。

キタウイングは次週の新潟2歳Sに出走し、見事勝利。今回の未勝利戦でかなり走った感があり、連闘はどうかな(?)と見ていたが、競走馬の能力を振り絞って走らせる効果は大きいようだ。ただ本馬の能力が高いことは確かだが、2歳のこの時期に連闘で目一杯に走らせたことがどうなるかという懸念は残る。

8月21日(日) 新潟2R 優勝馬 ウインオーディン 指数-3 評価B
新馬戦では6番枠から出遅れ、好位の中目まで位置を上げるロスがありながら5着。見どころのある競馬をしていたウインオーディン。今回は五分のスタートから中団中目で折り合う競馬。最後の直線ではしっかり伸びて快勝した。新馬戦の内容から順当に勝ったと言えるレース内容だった。

ただし指数はまずまず。「今後は勝ったり負けたりしながら上を目指す馬になるのだろう」と綴る予定の馬だった。しかし、前述のキタウイングと同様に連闘で新潟2歳Sに出走し2着。連闘の効果がいかに大きいかということを改めて再認識させられた。ただキタウイングと同様の懸念は残る。

8月21日(日) 新潟5R 優勝馬 ロードプレイヤー 指数-4 評価A
9番枠からまずまずのスタートを切って、道中は中団待機。最後の直線では馬場の良い外に出され、しっかりと伸びて前の馬たちをかわして先頭に立った。外からブレイディヴェーグが迫り叩き合いになったが、最後は競り勝った。

走破タイムは1分50秒2、上がり3Fタイムが32秒5。ウインオーディンが勝利した未勝利戦よりも馬場状態は良かったと推測されるため単純比較はできないが、本馬が勝った新馬戦のほうが数字は上回っている。

ラスト2Fは10秒4-11秒3。新潟の新馬戦でありがちなラップ構成は高く評価できないが、3着以下に5馬身以上の差をつけた点は高く評価できる。なかなか楽しめる馬となりそうだ。

またスタートで出遅れながら2着となったブレイディヴェーグも新馬戦としては好指数を記録。順当ならすぐに未勝利クラスを突破し、上のクラスで戦う馬になりそうだ。

8月20日(土) 小倉6R 優勝馬 ヤマニンウルス 指数-21(ダート) 評価AA
8番枠から好発を決め、逃げ馬の外2番手を追走したヤマニンウルス。しかし、能力が違ったのか3角すぎから一気に先頭に立ち、後続を引き離しはじめる。4角ではすでに後続に大きな差。あとは独走で大差勝ちだった。

走破タイム1分44秒3はレコード。これは同日の古馬1勝クラスよりも1秒以上速い走破タイムだった。ラスト2Fは11秒6-12秒3とさすがに減速しているが、上がり3Fタイムは35秒8。古馬と比較してもかなり優秀なものとなった。指数は古馬2勝クラスレベルを飛び越え、古馬3勝クラスで通用するもの。まさに破格の走りで昨年のダート新馬戦を圧勝したホウオウルーレットの指数を上回った。

ただダート新馬戦を破格の高指数で圧勝した馬は期待ほど伸びず、GⅠ級とまではいかない馬が多い。ホウオウルーレットにしてもやや伸び悩んでいる感じを受ける。新馬戦で走りすぎた疲れも残るのだろう。

ヤマニンウルスの母はヤマニンパピオネ。同馬は芝の新馬戦をかなりの好指数で勝った馬で、新馬戦時の指数は同期のロードカナロアと同等な程優秀だった。しかし、新馬戦で走りすぎたダメージが残って伸び悩み、大成しなかった。ヤマニンウルスにも母同様の懸念は残る。ただ本馬が「実は芝馬でした」という場合は話が違ってくる。

かつてシルクプリマドンナは2000年のダ1800m新馬戦で2着馬に2.7秒差をつけて大差勝ちしたが、次走の500万下はそこまで差を付けられず勝利。その後、芝路線に転向しオークス馬となった。キョウエイマーチもダ1200m新馬戦で1.7秒差をつけて大差勝ち。次走初芝の500万下では能力を出し切れず3着と敗れたが、その次走でダートを勝利したあと、芝路線に転向して桜花賞馬になった。

ヤマニンウルスが今回破格の指数を記録したことは確か。ダートでも将来は重賞クラスで活躍する可能性は高いが、実は芝適性のほうが高かったとなると、一気にGⅠ級の期待ができる。いずれチャレンジするであろう芝で、どんな結果を残すのかとても楽しみだ。

8月21日(日) 小倉2R 優勝馬 ネアセリーニ 指数-3 評価B
ネアセリーニは新馬戦ではやや出遅れて追走に苦しみ、最後になんとか2着に浮上したというレースだった。今回も道中の進みが良かったとは言えないが、前走よりは前から離されずに追走できた、大きな進歩を感じ、最後まで長く脚を使っての1着だった。

結果としてデビューから2戦とも上がり3F最速タイムを記録していることは評価できる。ネアセリーニの半兄ディアスティマは昨年、芝2600mの札幌日経オープンを勝利した芝長距離の活躍馬。兄同様にスタミナを活かせる芝の舞台で活躍していきそうだ。

8月21日(日) 小倉5R 優勝馬 メイショウヒュウガ 指数-5 評価B
7番枠からやや出遅れたが、好位の後ろを追走したメイショウヒュウガ。3~4角で前の馬との差を詰め、4角は2列目の3番手を進み、直線では前2頭が外に出したことで開いた内に潜り込んだ。そこからジワジワ伸びて勝利した。

走破タイムは1分08秒3。この日の小倉は馬場が悪く、古馬と比較すると指数自体はなかなか優秀。また4着以下には大きな差を付けており、ラスト2Fは11秒6-11秒7と大きく減速しなかった点も評価できる。

ただし、この新馬戦は馬場がタフだったので、余力を残せる内容だったかは何とも言えない。多少疲れが残るかもしれないが、今回の指数は高いものだけに、今後の期待が膨らむ。

8月20日(土) 札幌2R 優勝馬 ドゥラエレーデ 指数-12(ダート) 評価A
新馬戦ではカルロヴェローチェの5着、次走未勝利戦は逃げてドゥーラの2着に粘り、好指数を記録したドゥラエレーデ。今回はデビュー3戦目、初めてダートに出走してきた。

今回は7番枠から五分のスタートと前走時よりスタートは速くなかったが、二の脚速く、逃げ馬の外2番手に出して行く形。余裕たっぷりの追走で3~4角で自然と先頭に立ち、抑えたまま直線を向く。直線では外からシゲルカミカゼが迫って来たが、最後まで抜かせずにゴールイン。3着以下には大差をつけた。

ラスト2F12秒5-12秒6とほぼ減速しなかったことも高評価でき、指数は古馬1勝クラス勝ちレベルのもの。この指数を初ダートで2歳のこの時期に記録したことは価値が高い。今回の上位2頭ともに好指数。今後のダートでの活躍が楽しみな2頭だ。

8月20日(土) 札幌5R 優勝馬 ドルチェモア 指数-4 評価B
6番枠から好スタート、好ダッシュを決めて逃げる競馬となったドルチェモア。マイペースで折り合いながら逃げ、4角手前からゴーサインが出されると、そこから少しずつ後続を引き離し、結果は2着に3馬身差をつけてゴール。新馬戦としてはなかなかの好指数勝ちとなった。

ラスト2Fは11秒5-11秒7。減速度合いは少なく悪くない。ただ今の札幌は時計がかかり、一戦ごとのダメージが大きくなりやすいレースが続いている。このあとすんなり上昇するかは、本馬の潜在能力次第といったところだ。

8月21日(日) 札幌9R 優勝馬 ジョリダム 指数-8 評価A
ジョリダムは門別のデビュー戦で1着、その後2着、3着という成績で今回デビュー4戦目で初めて芝に挑戦してきた。今回は好発を切り押して逃げる競馬。3角でJRAの馬たちに並ばれ、4角では捲られてしまうかと思えるシーンもあったが、そこから頑張りを見せ、4角で同じ位置にいた馬たちを直線で振り落とし、最後に迫ってきた実力馬イコサンの追撃を抑えて勝利した。

今回の指数はオープンとしてはやや低め。ただ初芝で勝利したことは価値が高く、3~4角で競りかけてきた馬たちを失速させて勝利した内容は評価できる。この後もおそらく人気にはならないタイプと推測されるが、今後の芝での活躍が楽しみだ。

2022年8月3週目の2歳馬PP指数,ⒸSPAIA


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ヤマニンウルスの指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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