【マーメイドS】格上挑戦がもっとも決まる波乱の古馬重賞 今年はヴェルトハイムの出番だ!
勝木淳
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とにかくハンデに注意
5月ヴィクトリアマイルでひと区切りついた牝馬路線は、早くも秋のエリザベス女王杯に向け、中距離路線へシフトする。その入り口にあるマーメイドSはハンデ戦であり、微妙な時期にあるためか、とにかく波乱が多い。
過去10年、3連単が10万円を下回ったのは12、17年のたった2回。8回は10万を超えるという穴党の夏のお楽しみだったりする。ただし、20万円を超えたのは3回だけ、超がつく特大ホームランばかりでもない。5番人気以内全滅はなく、人気馬を上手に馬券に組み込みたい。ここでは過去10年間のデータを使用する。
まずは気になる人気別成績。1番人気【2-1-1-6】勝率20.0%、複勝率40.0%。ほかの重賞と比べると頼りない数字ではあるものの、イメージほど悪くない。問題は2番人気以下がほぼ横一線である点。もっとも数字がいいのは7番人気【3-2-0-5】勝率30.0%、複勝率50.0%だから、やはり難しい。また10番人気以下【2-3-2-50】勝率3.5%、複勝率12.3%。ここもしっかり検討したい。
年齢別では4歳【5-3-3-34】勝率11.1%、複勝率24.4%が勝ち切る傾向。5歳は【4-6-6-57】勝率5.5%、複勝率21.9%とわずかに連下傾向にある。繁殖入りのため、新陳代謝が早い牝馬らしく6歳は【1-1-0-19】勝率4.8%、複勝率9.5%と一気に下降する。
このレースのカギを握るハンデについて。斤量別成績を調べると、55キロ【1-2-2-11】勝率6.3%、複勝率31.3%、56キロ【1-0-1-7】勝率11.1%、複勝率22.2%など背負わされた組は複勝率こそ高いものの、勝率が低い。複勝率の高さを重視し、斤量を課せられた実績馬から軸馬を選んでもいい。単勝狙いなら53キロ【4-2-3-16】勝率16.0%、複勝率36.0%ないし51キロ【2-3-0-14】勝率10.5%、複勝率26.3%あたりか。これらの斤量を課せられる馬はオープン実績が少ないオープン馬、もしくは3勝クラスからの格上挑戦が多い。
前走3勝クラスが7勝
7番人気が好成績、4歳中心、重ハンデは連下候補、単勝なら51、53キロといった傾向を頭に入れつつ、前走成績について探っていこう。
この10年、前走重賞組の勝利はゼロ。前走3勝クラス7勝、2勝クラス1勝と、大半が前走条件戦組という古馬重賞は他にはない。つまり、マーメイドSではそれまでの実績を軽視する、という普段とはかなり異なるアプローチが求められる。
では前走3勝クラスの着順別成績から。1着【1-1-1-7】勝率10.0%、複勝率30.0%と悪くはないが、必ずしも勝ってオープン入りしている必要はなく、格上挑戦が有効。3着【3-0-0-4】勝率、複勝率42.9%、4着【1-2-0-7】勝率10.0%、複勝率30.0%と3勝クラス敗退組が強い。
前走シドニーT(中京芝2000m)4着ヴェルトハイム、5着ステイブルアスクあたりも十分勝負になる。なお、前走3勝クラスかつ芝2000mは【2-1-0-8】勝率18.2%、複勝率27.3%。20年7番人気1着サマーセント、21年10番人気1着シャムロックヒル、5番人気2着クラヴェルが該当。2年連続勝ち馬を出す好ローテだけに、上記2頭は見逃せない。特にヴェルトハイムにとって阪神芝2000mは2走前に2勝クラスを突破した舞台。有力視したい。
次に前走オープン【2-2-1-14】勝率10.5%、複勝率26.3%について。勝利2頭は13年マルセリーナ(前走メイS6着)、17年マキシマムドパリ(前走大阪城S13着)。ソフトフルートが該当する前走都大路S【0-1-0-5】(21、22年中京施行)、ウインマイティーのメトロポリタンS【0-0-0-1】。前走オープンの目安は距離。前走距離が2000mより短いと【2-2-1-11】勝率12.5%、複勝率31.3%。特に1800m出走が狙いどころだ。
前走重賞組は敗退馬に注意
そして前走重賞組【0-2-6-38】複勝率17.4%。春の重賞からここに矛先を向けてくる馬はこの10年未勝利。好走も3着が目立つ。今年も出走予定馬の大半がここに該当、人気を裏切りそうな気配が漂う。
このうち牝馬限定重賞だった馬が【0-2-6-35】複勝率18.6%で主流。その内訳は福島牝馬S【0-2-1-19】複勝率13.6%、阪神牝馬S【0-0-2-2】複勝率50.0%、中山牝馬S【0-0-1-1】複勝率50.0%。
前走牝馬限定重賞全体の着順別成績では、3着【0-1-0-1】など好走した馬もいいが、5着【0-0-2-1】複勝率66.7%、6~9着【0-1-2-11】複勝率21.4%、10着以下【0-0-2-14】複勝率12.5%と敗退組がここで巻き返す。今年はほぼこのゾーン。阪神芝適性ではルビーカサブランカ(3勝クラス突破は阪神芝2200m)、ホウオウエミーズ(昨年格上挑戦で5着)あたりが有力だ。
またこの10年で【0-0-0-3】と出走数が少ない前走牡馬混合重賞出走が今年は京都記念8着マリアエレーナ、新潟大賞典9着アイコンテーラーなど複数いる。前者は愛知杯2着と重賞実績があり、このレースのパターンからすると疑いたいところだが、アイコンテーラーは新潟巧者のイメージが強いものの、2走前に大阪城Sでハンデ52キロ3着。53キロなら面白いのではないか。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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