【安田記念】強力4歳世代の牝馬ソングライン&ファインルージュ 展開不利の前走に着順以上の評価

坂上明大

2022年ヴィクトリアマイルトラックバイアス,ⒸSPAIA

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現4歳世代が躍進

芝マイル王決定戦・安田記念。近年は以前ほどハイペースの消耗戦になることが少なくなったが、多路線からの参戦で毎年ハイレベルなレースが繰り広げられることに変わりはない。速い走破時計が求められるため、マイル戦での総合力が問われる一戦だ。参考レースの内容から各馬の近走を振り返っていきたい。

【マイルCS】
サウンドカナロアもグレナディアガーズも控えたことで、ホウオウアマゾンがスンナリ先手を取る形。前後半3F35.6-33.3の後傾2.3秒で超スローペース。内が荒れ気味だった分も差し引けば、ポジション取りによる極端なバイアスはなしと評価できる。

2着シュネルマイスターは中団のインで脚をタメたが、直線は進路取りに苦労。それでも進路を確保してからの脚は素晴らしく、着順通り優勝馬グランアレグリアに次ぐパフォーマンスを披露した。3歳馬には厳しい斤量設定のレースだけに、2022年のさらなる活躍が期待できる走りだったといえるだろう。

3着ダノンザキッドも現4歳世代の一頭。ラスト1Fでシュネルマイスターに伸び負けはしたが、成長スピードを考慮すると勝負付けが済んだと評価するのは早計だろう。

5着ホウオウアマゾンも現4歳世代。マイペースの逃げを打てた上での5着とあって、上位馬には力差を見せつけられた形だ。

6着サリオスはブリンカー着用で折り合い△。行きっぷりが悪い馬ではないだけに、マイル戦ではブリンカーを外した方がベターか。

ハイレベルな上位争い

【東京新聞杯】
降雨のない日が続き、非常に乾燥した馬場状態での開催。極端なトラックバイアスは感じないが、末脚のよく伸びる馬場ではあった。レースはトーラスジェミニが軽快に飛ばして前後半3F34.7-34.3。過去10年の平均が35.4-34.2の東京新聞杯としては速めの流れで、先行勢が総崩れしたことからも後有利と評価する。

1着イルーシヴパンサーは後方待機策からの直線一気。展開が向いた感は否めないが、上がり3Fは33.1(2位カラテは33.9)と、メンバー中では抜けた数字を計測した。この快勝には高い評価を与えたい。目下4連勝中と底も見せていないだけに、GⅠでも軽視できない一頭だ。

2着ファインルージュは馬体重16キロ増で余裕残しの仕上げ。また、直線ではなかなか進路を確保できず、自身の上がり3Fは11.5-11.3-11.2程度と脚を余す形でもあった。本馬も流れは向いたが、数字以上の評価が必要な素質馬だろう。

3着カラテは叩き2戦目でパドックから気配上々。レースでも前半は中団待機でうまく流れに乗ったが、直線では進路取りに苦労してやや脚を余す形に。それでも、4着以下にはしっかりと着差をつけており、上位3頭はいずれも数字以上に強いレース内容だったといえるだろう。

牝馬路線も現4歳世代が席巻

2022年安田記念の参考レース、展開/馬場バイアス


【ヴィクトリアマイル】
Bコース替わり初週でも内目の馬の好走は多くなく、内外のトラックバイアスはフラットと評価。レースはローザノワールが押してハナを主張したが、前後半3F34.7-34.2、ヴィクトリアマイルらしく緩い流れに。ただ、このペースで縦長の隊列になっており、後方勢にはノーチャンスの展開だったといえるだろう。

2着ファインルージュは直線で躓く場面もあったが、それでもゴール板まで息の長い末脚で伸びて接戦の2着争いを制す。4着馬ローザノワール、3着馬レシステンシアが1、2番手という展開だっただけに、着差以上の力を証明した2着であった。

5着ソングラインは上位5頭のうち、最も後ろからの競馬で、3角では躓く場面も。早めの仕掛けになった分ラスト1Fではファインルージュに伸び負けたが、展開を考慮すれば十分に逆転可能な力差だろう。

強力4歳世代が中心

予想オッズからも4歳世代が中心であることは間違いないが、ローテーションも考慮するとヴィクトリアマイル組のソングラインとファインルージュに注目。2頭とも牡馬相手に力が通用することは既に証明済みであり、1週前の様子からは引き続き好調をキープできていそうだ。

また、前走が展開不利のダノンザキッドも巻き返し濃厚。人気を落とすなら配当妙味は大きい。

注目馬:ソングライン、ファインルージュ、ダノンザキッド

※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。

ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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