【アンタレスS】王者の底力を示したオメガパフューム 再戦楽しみなグロリアムンディ

勝木淳

2022年アンタレスSのレース結果,ⒸSPAIA

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オメガパフューム、課題多数の復帰戦

昨年末の東京大賞典で引退を表明していたオメガパフューム。勝って有終の美を飾ったものの、その後引退を撤回、現役続行となった。前日の中山グランドジャンプを11歳で勝利、J-GⅠ・9勝目をあげたオジュウチョウサンも含め、競走馬の出処進退に関する賛否は多い。もちろん、競走馬にとって競走は命をかけて挑むものであり、危険はつきもの。もういいじゃないかと思うのは不思議なことではない。

関係者とてそれは同じ。むしろ関係者ほど、その点については敏感だ。現役を続けること、引退後のこと、すべて熟慮の末の決断。尊重したい。オジュウチョウサンもオメガパフュームも色々な外野の意見を知ってか知らずか、見事なパフォーマンスを披露した。

東京大賞典以来3カ月半ぶり、久々のJRA重賞、59キロとオメガパフュームにとって乗り越えるものは多かった。若い4歳バーデンヴァイラー、グロリアムンディという活気ある先行勢、ハナを争ったアナザートゥルース、ライトウォーリアも後ろを意識して飛ばし気味に入る。さすがにオメガパフュームも中央ダートの速い流れに置かれ気味で、1コーナー12番手。横山和生騎手が追っつけながら馬群に食らいつかせた。

底力を試された最後200m1の3.0

スタートから12.6-11.0-13.0-12.2-12.3。コーナーでペースを落としつつも、向正面で再加速。気性的に外から来られたくないアナザートゥルースとライトウォーリアが後ろにペースを乱されないように引っ張る。1000m通過1.01.1は重賞としては平均的なペースだが、気が抜けない流れだった。後半は最後の坂下まで12.3-12.2-11.9。苦しくなった馬から続々脱落していく、そんなハイレベルなダート重賞らしい競馬だった。

この流れのなか4コーナー5頭分ほど外を馬なりで回ってきたグロリアムンディ。重賞制覇は時間の問題だろう。余裕の手応えで勝負所の11.9をこなせるダート馬はそう多くない。グロリアムンディよりさらに後ろ、もっと外を回り、4コーナーで前との差を詰めてきたオメガパフュームもさすがだ。前半は苦労したが、勝負所でスイッチが入るとやはり闘争心が違う。王者は苦しい時にこそ力を出す。オジュウチョウサンの最終障害飛越後の走りが自然と重なる。

ラスト200m。グロリアムンディがケイアイパープルを競り落とした場面。そのラップは13.0。さすがのグロリアムンディも一杯。離れた最後尾から3、4コーナーでインを通り、差を詰め、タイミングよく外に切りかえた末脚勝負のウェスタールンドやカデナですら脚が止まった。そんなどの馬も辛い状況でオメガパフュームはひと伸びしたわけだから、力は一枚上。さすが大井2000mのGⅠを5勝した心肺機能は並ではない。

3、4着馬の狙いどころ

ゴール前で交わされた2着グロリアムンディはブリンカー着用とダート替わりで4連勝。同じく連勝してきたバーデンヴァイラーは、15着と大きく崩れたものの、ダートではこういった連勝馬がしばしばあらわれる。ポイントは3勝クラスまでではなく、オープンまで勝つと通用するということ。

バーデンヴァイラーは仕切り直しになりそうだが、グロリアムンディはこの2着から重賞でやれる手応えをつかんだ。連勝の中に2000mや2400mがあり、スタミナたっぷり。賞金をもっと積む必要はありそうだが、大井の2000mでオメガパフュームとの対決をみてみたい。

3着ニューモニュメント、4着プリティーチャンスは流れに恵まれた面はあるものの、最後の最後まで前に食らいついた。どちらも戦績からハイペース耐性がある。厳しい流れになるレースでも狙ってみたい。

2022年アンタレスSのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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