【ヴィクトリアマイル】近10年は4~8人気7勝で伏兵台頭 前哨戦から逆転あるウンブライル、モリアーナ

勝木淳

2024年ヴィクトリアマイルに関するデータ,ⒸSPAIA

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マイル女王ナミュール登場

春の女王決定戦として創設され、今年で第19回。初代ダンスインザムードから桜花賞馬は6勝。マイルの大一番らしく、桜の女王は強い。

一方で、桜花賞で敗れた馬もコイウタ、ウオッカ、ホエールキャプチャ、連覇ヴィルシーナらが7勝をあげている。若かりし頃、叶わなかった桜のタイトル。新緑の府中はその雪辱の場でもある。幼かった心身を鍛え、逞しく成長した姿こそ真の力。

今年の1番人気候補ナミュールは昨年のこのレースで2番人気7着に敗れ、2年前桜花賞は1番人気10着だった。昨秋は藤岡康太騎手に導かれマイル女王に就いた。ドバイターフではファクトゥールシュヴァルと最後まで競り合い、短アタマ差2着。見違えるほど逞しくなった今、もうひとつ忘れ物をとりにいく。データは過去10年分を使用する。

ヴィクトリアマイルの人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%、2番人気【0-0-1-9】複勝率10.0%、3番人気【0-3-0-7】複勝率30.0%。上位人気そろい踏みといったケースが少なく、すんなりとは決まらない。4~8番人気7勝で伏兵台頭の機運も高い。10番人気以下も【1-3-2-79】勝率1.2%、複勝率7.1%で、絞って買うのはキケンなレースだ。

ヴィクトリアマイルの年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢別では4歳【3-6-3-61】勝率4.1%、複勝率16.4%に対し、5歳は【5-3-6-56】勝率7.1%、複勝率20.0%で、4歳より5歳が勝ち切る。東京マイルは総合力が問われるだけに、経験は武器になる。6歳以上の2勝は連覇を達成したストレイトガールによるもの。5歳から4歳へという組み立てがよさそうだ。

スローの前哨戦は本番で逆転がある

5歳ナミュールに挑む4歳は前哨戦を勝ったマスクトディーヴァ、コンクシェル、この舞台でGⅠ・2着ウンブライル、オークス2着ハーパーらが並ぶ。またナミュールと同厩舎、同期のスタニングローズもいる。登録は15頭にとどまったが、春の女王決定戦にふさわしい顔ぶれだ。

ヴィクトリアマイルの前走クラス別成績,ⒸSPAIA


ナミュールと同じ前走海外は【1-0-0-4】。この10年では昨年ソングラインの1勝にとどまるが、09年ウオッカ、10年ブエナビスタなど通算で【3-2-0-5】勝率30.0%、複勝率50.0%。ドバイ遠征に限ると【2-2-0-2】で悪くない。昨年は不利を受け7着に敗れた。逞しくなった今なら、はね返してくれるだろう。

国内に目を転じると、前走GⅠは【4-1-4-20】勝率13.8%、複勝率31.0%。大阪杯【1-0-1-2】はその4着以内が【1-0-1-1】。8着スタニングローズ、13着ハーパーは数字上、厳しそうだ。ハーパーは3歳時にこの舞台でクイーンCこそ勝ったが、暮れは有馬記念に出走したように中距離志向であり、スタニングローズとともにマイル戦への対応力を求められる。

ヴィクトリアマイルの阪神牝馬S着順別成績,ⒸSPAIA


前走GⅡ【4-4-5-67】勝率5.0%、複勝率16.3%は阪神牝馬Sが【4-3-4-57】勝率5.9%、複勝率16.2%。1600m施行の阪神牝馬Sに限ると【3-3-4-47】勝率5.3%、複勝率17.5%。着順の内訳は、1着馬が【0-1-0-7】複勝率12.5%と振るわない点に注意だ。マスクトディーヴァはこのデータを覆せるか。以下、2、3着【1-2-3-7】、5着【1-0-1-3】など負けても掲示板以内なら巻き返す。6着以下は【1-0-0-26】。16年ストレイトガール以来、好走はない。

これは阪神牝馬Sがスローになりやすいのと無関係ではなかろう。勝ち馬で唯一2着に来た20年サウンドキアラの阪神牝馬Sは前後半800m46.5-46.4のほぼイーブンペース。これ以外の7回は前半が遅く、後半が速い後傾ラップばかり。位置取りをいかし、瞬発力勝負を制したことが、本番の締まった流れではマイナスに働いてしまうようだ。裏を返せば、瞬発力勝負であと一歩足りなかった馬が本番のタイトなラップ構成で息を吹き返す。

今年の阪神牝馬Sは前後半800m47.4-45.6のスロー。鮮やかに抜け出したマスクトディーヴァより差して届かなかったウンブライル、モリアーナ、脚を余してしまった5着ドゥアイズがいい。特にウンブライルはマスクトディーヴァとは半馬身差しかなく、東京の直線ならかわせるのではないか。

前哨戦の着順が本番で入れ替わるのはよくあることだ。多くは前哨戦スロー、本番底力勝負とレースの質の差が影響している。ほかのGⅠでも役立てたいところだ。

ヴィクトリアマイルの前走GⅢ着順別成績,ⒸSPAIA


前走GⅢは【1-5-1-44】勝率2.0%、複勝率13.7%で見劣ってしまうものの、2着を5頭も出しており、妙味を考えれば捨て置けない。その着順別内訳は5着以内【0-5-1-30】、6着以下【1-0-0-14】。大敗からの反撃は19年1着ノームコア(前走中山牝馬S7着)のみ。連下で拾うなら5着以内だ。今年は中山牝馬Sを制したコンクシェルと福島牝馬S2着フィールシンパシーの2頭。フィールシンパシーはGⅠだと実績的に厳しいが、東京は【1-1-0-1】でイメージほど悪くない。馬券にしれっと1点加えてもいい。

2024年ヴィクトリアマイルに関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。


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