【ファルコンS】突き抜けた“紫の閃光”プルパレイ 垣間見た種牡馬イスラボニータの可能性

SPAIA編集部 鈴木佑也

2022年ファルコンSのレース結果,ⒸSPAIA

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“紫の閃光”プルパレイ

プルパレイ。馬名の意味はドイツ語で「紫の閃光」。2022年ファルコンステークスは正にその名の通り、紫の勝負服、プルパレイが最内を閃光のように抜け出し、重賞初制覇を飾った。

心配された雨も極端に馬場を傷めるには至らず、開催2週目らしく内の良好なコンディション。朝日杯FSでもレースを引っ張ったカジュフェイスがハナを切って前半600mは33.1秒。これだけならまだよかったが、後半も11.3-11.6-12.4-12.5と息が入らないまま、純粋に減速していくラップ構成。激しい主導権争いもなく、それほどプレッシャーをかけられたわけでもないにしては、ちょっと速すぎ、そして淡泊な逃げになってしまった。

勝ったプルパレイは最内枠から五分にスタートを出て、インの中団でじっと脚を溜める。突き抜ける脚はありそうで、あとはどこを捌くかという形で直線へ。

目の前にいたヴィアドロローサが、カジュフェイスをかわすため内ラチから1頭分離れると、M.デムーロ騎手はすかさずそこに入っていく。そのヴィアドロローサも余力がなく、カジュフェイスとの間にスペースが空き、ここで右に持ち出してあとは追うだけの形。コース形態上もともと内が有利な中京芝1400mのハイペースでこの立ち回りをされては、他馬はひとたまりもなかった。

2歳時には先行する形で重賞善戦級だったプルパレイだが、前走から序盤は脚を温存するスタイルに転向して結果がついてきた。ただ、今回は上手く行きすぎた印象もあり、NHKマイルCで勝負するには再び展開の助けが欲しいところか。

種牡馬イスラボニータの可能性

この勝利でイスラボニータ産駒はJRA重賞初勝利。現3歳世代がファーストクロップとなる新種牡馬だが、いきなり重賞馬を輩出した。

イスラボニータは父フジキセキ、母父Cozzeneという血統構成。フジキセキは伝説的種牡馬・サンデーサイレンスの初年度産駒で、デビュー3連勝で朝日杯3歳Sを制覇。翌年の弥生賞を勝ったあとに屈腱炎が判明し、4戦4勝と底を見せないまま現役を引退した。

暴騰するサンデーサイレンス人気の中、その血を引くフジキセキの需要は高く、種牡馬入り後も大活躍。短~中距離やダートを中心に重賞馬、GⅠ馬を数多く輩出した。

フジキセキの代表産駒には、競走馬として息長く活躍した馬が多い。度重なる故障を乗り越えて8歳まで重賞を勝った“雷帝”カネヒキリ、7、8歳で高松宮記念を連覇したキンシャサノキセキ、6、7歳でヴィクトリアマイルを連覇したストレイトガール。そして、2歳で東スポ杯を勝ったイスラボニータも、ラストラン6歳12月の阪神カップでレコード勝ちを記録している。

一方のCozzeneは、代表産駒がアドマイヤコジーン。(現表記の)2歳と6歳でGⅠを勝った馬で、さらにその代表産駒スノードラゴンは6歳秋にスプリンターズSを制し、11歳まで現役を続けた。

このようにイスラボニータは父、母父ともに早期からの活躍と6歳秋以降までの競走寿命を兼ね備えた血統構成。産駒にも早熟性と成長力を両方受け継ぐ可能性が高い。種付け料も150万円(2021年時点)と比較的安価で、馬主にとってはかなり魅力的な種牡馬なのではないだろうか。プルパレイを筆頭とする産駒の活躍により、これから着実に地位を築いていくよう期待したい。

不完全燃焼の馬多く

話題が逸れたが、ファルコンSの回顧に戻ろう。暴走気味のペースになってしまった上に、直線は内の方で進路を失う馬もおり、不完全燃焼の馬が多いレースだった。次走以降に向けて覚えておきたい点を見ていこう。

2着タイセイディバインは距離短縮と内枠が奏功。今回に関しては展開に恵まれたものであまり高い評価はできないが、適条件を見つけたことは大きな収穫。

3着オタルエバーは外枠から差しに回る形。折り合いもついて、回ったところの差を考えるとプルパレイとの力差はなし。距離も1400mがちょうどいい。

直線で詰まってしまった5着トウシンマカオだが、前が空いてからもジワジワとしか伸びず。不慣れなハイペースの追走で末脚を削がれたか。マイルの方がよさそう。

6着ショウナンハクラクは出遅れ、腹をくくって内を狙ったが直線で詰まり、こちらは最後まで捌けず。モタれる面があって現状は左回り限定のタイプだが、次走以降で見直し。

レースデータを見ると2012~2021年で距離延長組は【0-0-1-40】。今年は展開的にもスタミナ不安のある馬に厳しいレースとなった。カジュフェイス、ニシノレバンテ、ヴィアドロローサら先行した距離延長組は、1200mに戻って挽回できる。見限ってはいけない。


2022年ファルコンステークスのレース展開,ⒸSPAIA




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