【金鯱賞】タップダンスシチーやヤマカツエースが連覇! グラスワンダーの血に注目の一戦

緒方きしん

金鯱賞過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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サイレンススズカやイクノディクタスらが制した一戦

弥生賞ディープインパクト記念は、出走馬唯一のディープインパクト産駒のアスクビクターモアが勝利。ディープインパクト産駒にとってこれが弥生賞7勝目であり、産駒が出走しなかった昨年を除けば6連覇となった。

さて、今週は金鯱賞。90年代にはイクノディクタスやフジヤマケンザン、サイレンススズカらが勝利した重要な一戦。00年代にはタップダンスシチーが三連覇した他、メイショウドトウやコンゴウリキシオーらが勝利している。近年もスワーヴリチャードやサートゥルナーリアなど名だたる実力馬たちが勝ち馬に名を連ねる。

今年は大阪杯勝ち馬レイパパレ、エリザベス女王杯勝ち馬アカイイトと、2頭の実力牝馬が激突。さらにジャックドールやステラリア、グラティアスと勢いのある4歳勢が参戦を予定し、サンレイポケット、シャドウディーヴァ、ギベオンら実績あるベテラン勢と対決する。今回はそんな金鯱賞の歴史を振り返る。

1番人気は好調も、逃げ馬が波乱を巻き起こす

金鯱賞過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年で1番人気馬は3勝。サートゥルナーリア、スワーヴリチャード、ヤマカツエースが人気に応えている。敗れた1番人気馬も、2021年デアリングタクト(2着)、2019年エアウィンザー(3着)と馬券圏内には入っていて、3月開催になったここ5年は1番人気の信頼度が高いレースと言える。

ただし、平穏決着ばかりかと言えば決してそうではなく、昨年は前年に牝馬三冠を制したデアリングタクトが単勝1.4倍の圧倒的人気を集める中、10頭立て10番人気の伏兵ギベオンが逃げ切り勝ちを収めた。単勝は227.3倍で、2着デアリングタクトとの馬連も135.7倍という波乱決着となった。

逃げ馬の活躍はそれだけでなく、2020年には6番人気ダイワキャグニーが3着、2018年には8番人気サトノノブレスが2着、2017年には7番人気ロードヴァンドールが2着に粘っている。特にサトノノブレスは9頭立ての8番人気ながら、スワーヴリチャード、サトノダイヤモンドという実力馬の間に食い込む大健闘だった。

また、牝馬の勝利は1995年サマニベッピンが最後で、それ以降は牡馬もしくはセン馬の勝利が続いている。上述の通りデアリングタクトが2着に敗れているほか、リスグラシュー2着、モズカッチャン9着、デニムアンドルビー7着、ルージュバック8着、ヌーヴォレコルト10着など、ここ5年だけでも名だたる牝馬たちが敗れてきたことは心に留めておきたい。

金鯱賞で強さを見せたヤマカツエース

金鯱賞と言えば、開催時期が変わったレースとして記憶しているファンも少なくないだろう。古くは7月に開催されていたが、1987年以降は6月開催に。1997年からは東海テレビ杯という冠がなくなり、5月開催に移行。しかし2012年からは12月(もしくは11月)開催となり、2017年以降は現在の3月開催に変更された。その変革のなかで、異なる月に開催された金鯱賞で2勝をあげたのが、ヤマカツエースだ。

ヤマカツエースは3歳でニュージーランドTや福島記念を制覇、4歳でも中山金杯を制した実力馬だったが、GⅠとなるとNHKマイルCと宝塚記念は13着、天皇賞(秋)は15着と大苦戦。4歳シーズンは1月に勝利して以降、GⅡで2度掲示板に食い込むも、勝ちには手が届かないまま12月を迎えていた。そんな悔しい1年を過ごしながら挑んだのが、最後の12月開催となる2016年の金鯱賞だった。

出走馬には前走アルゼンチン共和国杯3着のヴォルシェーブや菊花賞馬トーホウジャッカル、重賞勝ち馬のリアファルやシュンドルボンなど骨のあるメンバーが揃っていたが、天皇賞(秋)から約1ヶ月でプラス20キロの大増量となったヤマカツエースが力強く差し切った。ヤマカツエースは勢いそのままに有馬記念にも出走し4着と好走、年明け初戦に選んだ3月金鯱賞でも勝利し、続く大阪杯でも3着。ついにGⅠで馬券圏内に食い込んだ。

こうして12月、3月の金鯱賞を連覇するという珍しい記録を打ち立てたヤマカツエースは翌年にも金鯱賞から大阪杯に出走し、どちらも4着と好走して引退した。ヤマカツエースはGⅠ未勝利ながら重賞5勝という戦績で獲得賞金は4億4465万円と、母父グラスワンダーの競走馬としてはメイショウマンボやダイアナヘイローらを抑えて稼ぎ頭となっている。

また、主戦の池添謙一騎手と管理する池添兼雄調教師は親子でもある。この親子での重賞制覇は他にもメイショウテンゲンやメイショウベルーガ、タガノバスティーユやタガノゲルニカなどがあるが、その皮切りは同じく“ヤマカツ"の冠名を持つヤマカツスズランによるクイーンS制覇であった。

さらにヤマカツスズランの娘ヤマカツオーキッドもまた、池添兼雄厩舎に所属し、池添謙一騎手でオープン競走・コスモス賞を勝利。さらにそのヤマカツオーキッドの息子であるヤマカツライデンも同親子のコンビで函館記念3着に食い込むなど活躍を収めている。

そして今年2歳を迎えるのが、ヤマカツオーキッド7頭目の仔・ヤマカツリン。父はなんと、今年の新種牡馬であるヤマカツエースである。父、母、父母、母母にヤマカツの冠名が見られるヤマカツ血統馬であり、池添騎手たちとも縁の深い1頭が、どのような走りを見せるのか楽しみだ。

グラスワンダーの血が騒ぐか

また、12月開催と3月開催の金鯱賞のどちらでも馬券に絡んだ馬もいる。それがサトノノブレスで、12月開催の金鯱賞では2014年2着、2015年3着、2016年3着と好走。3月開催の2017年は11着に敗れるも、2018年は2着と好走した。

過去にはタップダンスシチーが3連覇をしているほか、ローゼンクロイツやアーネストリーらが複数回馬券に絡んでいる。アーネストリーは父グラスワンダー、ヤマカツエースは母父グラスワンダーであり、グラスワンダー産駒では2009年にサクラメガワンダーも勝利している。

今年はモーリス産駒のジャックドールが4連勝で金鯱賞に参戦、重賞初挑戦・初制覇を狙う。さらには昨年の覇者ギベオンや3着馬ポタジェも参戦を予定。グラスワンダーの血が騒ぐか、それともリピーターが活躍するか、それとも牝馬が1995年以来となる勝利をあげるのか──ご注目いただきたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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