【2歳馬ジャッジ】2021年の2歳戦総復習(4) ダート路線トップは2歳ダート王者ドライスタウト

山崎エリカ

2021年2歳馬ジャッジPP指数ランキング「ダート路線」,ⒸSPAIA

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2021年2歳戦振り返り第四弾 ダート路線

昨年6月から2歳戦の指数と評価を掲載してきた「2歳馬ジャッジ」。2021年の2歳戦を、路線ごとにPP指数ランキングで振り返っていく。今週は振り返りの第4弾「ダート路線」をお送りする。

2歳牡馬ダート路線 PP指数ランキング (2022年1月30日まで)

1位 ドライスタウト 指数-30 全日本2歳優駿・1着
2位 コンバスチョン 指数-25 全日本2歳優駿・2着
3位 ホウオウルーレット 指数-22 黒竹賞・1着
3位 クラウンプライド 指数-22 もちの木賞・1着
5位 バトルクライ 指数-20 未勝利戦・1着
6位 デシエルト 指数-19 1勝クラス ・1着
7位 リッキーマジック 指数-18 1勝クラス・1着
7位 アイスジャイアント 指数-18 JBC2歳優駿・1着
9位 デリカダ 指数-17 1勝クラス・1着
9位 ウェルカムニュース 指数-17 もちの木賞・2着
9位 アローワン 指数-17 新馬戦・1着
9位 ジュタロウ 指数-17 1勝クラス・2着

指数1位は3戦全て圧勝のドライスタウト

1位 ドライスタウト
新馬戦はすっと3番手で流れに乗り、揉まれるシーンもない理想的な競馬。超高速馬場でペースに恵まれた面もあったが、ラスト2F12秒1-12秒2。上がり3Fタイムは芝並みの35秒4を記録した走りは、秘めた素質の高さを感じさせるものだった。それがいきなり開化したのがデビュー2戦目のオキザリス賞、古馬3勝クラス級の指数を記録して5馬身差の圧勝。この世代の最高指数をここで記録した。

さらに進化を見せたのが暮れの全日本2歳優駿。もしもドライスタウトの能力天井が低かった場合はオキザリス賞で高指数をマークした疲れが残って凡退というストーリーも考えられた。当時この馬を個人的に本命視したが不安もあった。

レースは2番手から逃げ馬をぴったりとマークして乗り、4角手前で早々と先頭に立つ競馬。ただでさえ初距離なのにそんな競馬で大丈夫かと思ったが、結果は力が違い、そのまま押し切って優勝した。記録した指数は古馬オープン級のもの。強い2歳ダートチャンピオンが誕生した。

全日本2歳優駿のレースぶりから距離は延びても問題なさそうだ。新馬戦のラスト2F、上がり3Fタイムから芝もこなしそうな下地は感じる。現3歳芝路線はトップと下に大きな差はなく、例年よりも指数は低めで大混戦ムードだが、ドライスタウトは例年と比較しても指数が優秀。王者としてここからの戦いがとても楽しみだ。

2位 コンバスチョン
6月東京の新馬戦を勝利した馬。好位の直後の外を追走して、ラスト2F12秒5-12秒3。上がり3Fタイムも36秒3と優秀でこの連載ではダートとしては高評価をした。次走ヤマボウシ賞は当時としてはなかなかのメンバーを相手に勝利したが、指数が期待したほどではなく、「こんなものかな、この世代のダートはあまり強くないのかな」と当時思わせる一因となった。

続く兵庫ジュニアグランプリは2着、正直期待はずれの走り。しかし新馬戦で見せた素質の高さは本物だったようで、全日本2歳優駿で2着、指数も古馬3勝クラス勝ち負けレベルと優秀だった。やっと新馬戦で見せた素質が目覚めてきたようだ。この世代のダートはレベルが高く、まだ安泰とはいかないが、全日本2歳優駿で記録した指数は古馬混合になっても十分に通用するもの。長く活躍してくれそうだ。

3位 ホウオウルーレット
新馬戦は逃げて7馬身差の独走V。走破タイムも優秀、指数は古馬2勝クラス級を上回るものだった。負かした相手トモジャワールドもかなり強く、まさに怪物級、衝撃の圧勝劇だった。次走の黒竹賞も6馬身差の圧勝。ただ指数は期待したほどのものは出ず、古馬3勝クラス通用級レベルのものだったが、2番手から4角先頭の余裕を感じさせる走りで、まだ上積みはあるだろう。

ダート新馬戦で高指数圧勝をした場合、その疲れが残ってしまい次走で凡退し、その後に故障がち。スランプ状態になって伸び悩むという馬も過去にはいたが、ホウオウルーレットはどうやらそんなことはなさそうだ。兄オメガパフュームに負けない活躍を期待したい。

3位 クラウンプライド
10月中京の新馬戦では頭を上げて後手を踏み、中団で折り合う競馬になるかと思われたが、鞍上の意思に反して行きたがり、2角では前の馬に乗りかかりそうになるなど、かなり折り合いを欠く競馬ながら、6馬身差の独走V。まともに走ったらどのくらい強いのかというレースぶりだった。

その答えは次走もちの木賞ですぐに出た。大外13番枠からダッシュ良く3番手まで上がり、やや行きたがる場面もありながら、最後の直線では余裕たっぷりに早々と先頭に立ち、3馬身差の快勝。3着馬には11馬身差をつけての高指数勝ち。これで2戦2勝、まだ余裕がありそうなレースぶり。ハイレベルな現3歳ダート路線の主役の一頭として、今後も活躍してくれるだろう。

5位 バトルクライ
芝の新馬戦でデビューしてオタルエバーの4着。その後も芝で5着、4着、8着と今一つの成績となっていたが、1月29日(土)中京の未勝利戦で初めてダートレースに出走してきた。同レースでは8番枠から好スタートを決めて2列目の外を追走。最後の直線では早々と先頭に並びかけ、そこから突き放して10馬身差の独走。タイムも同日古馬3勝クラスと大きな差はなく、とにかく強かった。

バトルクライはよほどダートの短距離適性が高かったのだろう。芝では好位から伸びきれず、折り合いを欠く競馬も多かった馬だが、初ダートでこれだけの指数が記録できたわけだから、今後のダートでの活躍はかなり期待できる。ただ芝でのレースぶりから安定感はなさそう。ダートでオープン、重賞まで行く素材ではあるが、狙うタイミングには気をつけたい馬だ。

6位 デシエルト
新馬戦では折り合いを欠き、気性面に課題を感じる走りながらも楽勝して、素質の高さを感じさせた馬。デビュー2戦目となった1月8日(土)の中京の1勝クラスでは、4番枠からスタートを決めたものの、内から来られて2番手に控える形。しかし、序盤で内の馬と競り合ったことで、行きたがって折り合いを欠きながらの追走。スピードが違うのか4角では早々に先頭に立ってしまい、そこから粘りこむ形。かなりロスがありながらも強敵ジュタロウの追い上げを封じた競馬は強かった。指数もなかなか優秀で今後が楽しみだ。

この馬は新馬戦の直後から芝挑戦を示唆していた。そしてどうやら次走は芝に向かうようだ。これは楽しみな挑戦。現3歳ダート路線はレベルが高い。こういった偏りが起きた時にはそのグループの中から別路線にいって活躍馬が出現するもの。かつてのウオッカ、ダイワスカーレットも3歳の早い時点で明らかに同世代の牡馬たちよりも高い指数を記録しており、それがウオッカのダービー制覇に繋がった。

かつての皐月賞馬ヤエノムテキはデビューからダートで2連勝、初芝となった毎日杯では能力を出し切れずに4着に敗退したが、芝2戦目となった次走の皐月賞を見事に勝利した。デシエルトにはこのパターンを期待してしまう。

同馬の姉は芝の新馬戦でかなりの好指数勝ちを決めたスカイグルーヴ。この馬はデビュー2戦目の京成杯であまりに厳しい競馬をしたため疲労が残り、その後おかしくなってしまったが、新馬戦の走りは世代屈指だった素質馬だ。その弟であるデシエルトも相当な素質、芝適性を秘めている可能性がある。ヤエノムテキの世代もオグリキャップが筆頭だったように別路線が強かった世代。今年は3歳ダート路線組に芝での活躍馬が潜んでいる気がする。

7位 アイスジャイアント
新馬戦では出入りの激しい競馬を好位から伸びて勝利し、競馬センスの良さを感じさせた馬。次走のJBC2歳優駿はテンからかなり激しい競馬になったが、その流れを利用しての見事な追い込み勝ちを決めた。ただ、こういう余裕を残さない激しい競馬は、疲れが残りがち。アイスジャイアントは全日本2歳優駿では全く見どころがなく、9着と大敗してしまった。

しかし、流れが向いたとは言え、デビュー2戦目でなかなかの好指数勝ちを決めたことからかなりの素質を持っていることは確か。立て直して、疲れが取れてからの再度の活躍を期待したい。

8位 リッキーマジック
11月東京ダートの新馬戦では3番手外から、最後の直線では外に行こうとして追われてすぐには反応しなかったが、ラスト100mで先頭に立って勝利。走破タイムはそこまで目立つものではなかったが、ラスト2Fを12秒3-12秒4とほぼ減速することなく勝利した走りに、高い潜在能力を感じた。

次走の1月29日(土)の東京ダートの1勝クラスは、2着に3馬身半差をつけて快勝。同レースは2番枠で外枠から前を主張してくる馬がいたため、中団の内に控える競馬。レースの流れが差し馬向きになって展開に恵まれた面はあったが、走破タイムは同日古馬3勝クラスとの対比でも大きく劣るものではなく、なかなか優秀な指数での走りとなった

リッキーマジックはこれで2戦2勝。現3歳世代での活躍馬は牡馬が多いが、この馬は牝馬。ここからダート路線で牡馬たちとぶつかっていけば、勝ったり負けたりの存在になるだろう。しかし、デビュー2戦目で好指数を記録した能力は、いずれ大きく花開く時が来るだろう。

9位 デリカダ
10月阪神の新馬戦では好位の外からの競馬になったデリカダ。このレースは超スローペースになったため、向正面でカフジオクタゴンが捲って先頭に立ったが、デリカダはそれをやり過ごして自分の競馬。3角過ぎから進出開始し、3着以下には大差をつけ圧巻の走り。ラスト2Fはダートとしては驚きの12秒4-11秒9。上がり3Fタイムも36秒7と優秀。2着になったカフジオクタゴンとともにこの連載では高い評価をした。

次走12月阪神の1勝クラスでは新馬戦で負かしたカフジオクタゴンと再度の対決。ここもデリカダは好位の外から、上がり3Fタイム最速で勝利、指数は古馬2勝クラスレベルのものを記録した。これでデビューから2戦連続で上がり3Fタイム最速を記録と底を見せていない。新馬戦のラスト1Fで見せたスピードは相当な素質を感じるものだっただけに、まだまだ上積みがあるだろう。これからも大注目の馬だ。

9位 ウェルカムニュース
芝の新馬戦では大敗したが、次走の初ダート未勝利戦では好位の内から外に出してレースを進め、3角では先頭に並びかけ、4角先頭から8馬身差の圧勝。未勝利クラスとしては優秀な指数を記録した。それもラスト2Fは12秒5-12秒5と減速せず、かなり高い素質を秘めているのではないかと思わせた。

続くもちの木賞では強敵クラウンプライドと激突し、同馬にマークされる形で2着敗退も、指数は古馬2勝クラス級のものを記録。負けて強しの内容だった。12月中山の1勝クラスではスタートが悪く、勝利したものの、指数は前走比でダウン。しかし、悪いながらも勝利したあたり、まだまだ奥を感じさせた。ここからもダート路線で大活躍が期待できる馬だ。

9位 アローワン
12月25日中山の新馬戦では2着馬に大差をつけて逃げ切り勝ち。指数は古馬2勝クラス級のものを記録、かなりの能力を感じさせる勝利だった。ただラスト2Fは11秒9-13秒1と減速。大差勝ちではあったが、そこまで余裕はないと感じた。

その状況からレース間隔を詰めて次走1月8日(土)の黒竹賞に出走。やはり疲れもあったか、好位の外から伸びず10着大敗。しかし、怪物ホウオウルーレットを負かしにいく走りは見せ場十分。状態を考えれば、負けて強し。やはりかなり高い能力を感じることがでした。立て直され、疲れが抜けてからの快進撃に期待したい。

9位 ジュタロウ
11月阪神の新馬戦を出遅れから、すぐに逃げ馬に並びかけるスピードを見せ、先頭列の外3番手。1~2角ではやや行きたがる感じで折り合いを欠いて外に張られ気味だったが、向正面で動いて先頭に立つと、そこからは気持ちよく走り始め、直線は完全に独走。指数も古馬2勝クラス級のものを記録と圧巻だった。ただラスト2Fは12秒5-13秒2と減速しており、そこまで余裕はないように感じた。

続く1月中京の1勝クラスでは中団外からの競馬で強敵デシエルトの2着と好走。ここも優秀な指数を記録し、課題の折り合い面は前進を感じさせた。しかし、続く1月東京ダート1600mの1勝クラスでは1番人気に支持されながら9着大敗。揉まれてレースにならなかったし、距離も忙しく、追っつけていく競馬。この馬の持ち味のスタミナを生かすことができなかった。

新馬戦で見せた内容から、気性に問題があるもののスタミナは相当あると感じた馬。得意の距離、持ち味を生かせる展開ならば、いきなりの巻き返しが十分ある馬だ。また、前走で揉まれ弱さを見せていたことから、差す競馬なら外枠のほうが良さそうだ。


2021年2歳馬ジャッジPP指数ランキング「ダート路線」,ⒸSPAIA


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ドライスタウトの指数「-30」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも3.0秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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