【2歳馬ジャッジ】2021年の2歳戦総復習(3) 牡馬クラシック路線の指数トップはイクイノックス
山崎エリカ
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2021年2歳戦振り返り第三弾 牡馬クラシック路線
昨年6月から2歳戦の指数と評価を掲載してきた「2歳馬ジャッジ」。2021年の2歳戦を、路線ごとにPP指数ランキングで振り返っていく。今週は振り返りの第3弾「牡馬クラシック路線」をお送りする。
2歳牡馬クラシック路線 PP指数ランキング (2021年12月31日まで)
1位 イクイノックス 指数-15 東京スポーツ杯2歳S・1着
1位 キラーアビリティ 指数-15 ホープフルS・1着
1位 ジオグリフ 指数-15 札幌2歳S・1着
4位 ジャスティンパレス 指数-13 ホープフルS・2着
5位 リブースト 指数-11 紫菊賞・1着
5位 アサヒ 指数-11 東京スポーツ杯2歳S・2着
5位 ジャスティンロック 指数-11 京都2歳S・1着
5位 ラーグルフ 指数-11 ホープフルS・3着
5位 サトノヘリオス 指数-11 エリカ賞・1着
5位 ヴェールランス 指数-11 エリカ賞 2着
参考 2022年 1月23日までの高指数馬 (-12以上)
オニャンコポン 指数-14 京成杯・1着
ロジハービン 指数-12 京成杯・2着
リューベック 指数-12 若駒S・1着
グランディア 指数-12 1勝クラス・1着
マテンロウスカイ 指数-12 1勝クラス・2着
指数1位は3頭も注目はイクイノックス
1位 イクイノックス
8月新潟の新馬戦では2列目の内でレースを進め、ラスト2F目で先頭に立つと、そこから後続を引き離しあとは独走。6馬身差で圧勝し、新馬戦としてはかなりの好指数を記録した。ただし、ラスト2Fは11秒3-11秒8。そこまで余裕があったのか、微妙な数字ではあった。同馬はなかなかの好馬体で潜在能力の高さを感じさせたが、新馬戦であまりにも強い走りをした馬は、その後に疲れが残って下降してしまう馬もいる。
後から振り返れば、この新馬戦の3着馬は阪神JF勝ちのサークルオブライフ、4着馬がエリカ賞勝ちのサトノヘリオスだから、レベルが高かったと言われて終わりにされてしまいがちだ。しかし、この新馬戦で2着だったメンアットワークは、その後未勝利クラスでも負けが続いているように、2歳馬の成長曲線を読むことはそんなに簡単ではない。
イクイノックスは次走を11月の東京スポーツ杯2歳Sまで待った。これが良かったと見ている。新馬戦の疲れが取れて順調に上昇し、軌道に乗ることができた。東京スポーツ杯2歳Sでの強さは圧巻。上がり3Fタイム32秒9は、2着のアサヒと比較して0.6秒上回るもの。もっと驚かされたのは、ラスト2Fが11秒9-11秒4と加速していることだ。
重賞ともなればレースの流れも厳しくなる。大半のレースで上がり3Fタイムの速さから「素晴らしい瞬発力」と表現されたとしても、最後の1Fは減速してフィニッシュとなるのが常だ。しかし、イクイノックスは最後まで加速して、まだ余裕があったことを見せつけた。
マイナス点は東京スポーツ杯2歳Sで、後方内々で脚をタメての差し競馬だったこと。上がり3Fの数字、上がり1Fの数字が優秀だったとしても、先行して記録したものと差し、追い込みで記録したものとでは価値が全然違う。もし先行策から最後まで加速できていたならば怪物認定だったが、そこまでではなかった。
ただし、昨年の2歳芝中長距離路線でトップタイの指数を記録。それもまだ余裕があった可能性を感じさせたことを考えれば、今春のクラシック路線で主役に最も近いのはこの馬と言えそうだ。現状で感じる不安点は、復帰初戦がタフな馬場になった場合、そこで勝ちにいく競馬をした場合には意外な脆さを見せる可能性がある。
1位 キラーアビリティ
デビュー2戦目の小倉未勝利戦は圧巻だった。後方から4角で外に出されると、グングン伸びて7馬身差の圧勝。ラスト2Fは11秒8-10秒8と最後に異様な加速を見せてゴール。この連載では最上級の評価をした。次走の萩Sでは勝ちにいく競馬をして、結果、4角からキラーアビリティをマークに徹したダノンスコーピオンに差されてしまったが、負けて強しの2着。
ホープフルSは折り合いを欠いて暴走さえしなければ、勝利当確だと見ていたが、しっかり折り合って快勝。レース内容も良かった。ただ戦前に期待していたほど着差をつけて勝つことができなかったのは少々不満。ホープフルSはピークの走りだったはずで、対イクイノックスを考えると能力NO.1とは言えなくなってしまった。
ただキラーアビリティは、すでにここまで2敗している強みがある。勝ち続けている馬は負けられないという思いから必要以上に大事に使われたり、勝ちにいく競馬をしなければならないが、すでに負けている馬ならば開き直ることもできる。イクイノックスに勝つためには、同馬と同じことをしないことがカギだと見る。
1位 ジオグリフ
6月東京の新馬戦では2列目の内でレースを進め、ラスト2Fが11秒0-11秒3。同日の古馬のレースとの数字上の対比から、この連載ではかなり優秀な新馬戦と評価。それも3着まで強い可能性があると示唆したが、そのとおりにジオグリフ、アサヒ、アスクビクターモアともに出世してくれた。
次走の札幌2歳Sは、勝って当然のメンバーを相手に圧勝。当時のタフな馬場状態を考えると、出遅れて最後方から追い上げる競馬になったことで逆にペース、展開が向いての勝利となってしまい、指数、着差ほどは価値のない勝利だった。朝日杯FSは夏からの直行、距離の長いところで後方からレースをした直後だけに、レースの流れに乗れないのは当然で、ある意味、負けて当然のレースだった。5着に負けても評価を落とす必要はない。
ただ朝日杯FSでは鞍上が中途半端に折り合わせすぎた感がある。これがどうなるか。次走は共同通信杯が予定されているようだが、楽観視はできない。むしろ順調にレースを使われ続けて、馬場が悪化する皐月賞あたりで穴を開ける馬になるような気がする。
4位 ジャスティンパレス
9月中京の5頭立ての新馬戦をマズマズの内容で勝利した馬。少頭数の新馬戦は消耗度が少なくなりやすいので、その後は順調に上昇することが多い。この馬は次走1勝クラスの黄菊賞を並レベルの指数で勝利、ペースは超絶スローでそこまで負荷の高いレースではなかった。
そしてホープフルSではこれまでの2戦で疲れを残さず、かつ順調の強みを生かして2着に入線。ここまで大切に育てられており、今後も着実な成長が期待できる。ただ、対キラーアビリティとして考えるとホープフルSのレース内容は劣る。ここから指数上位馬たちを逆転するためにはローテーション、戦法などに工夫が必要だろう。
5位 リブースト
新馬戦は出脚が悪く最後方からの競馬で、直線も進路を探しながら狭いスペースをこじ開けるようなレースぶり。不利なレースではあったが、指数的にはそこまで見どころもなく、相手に恵まれた勝利と言えた。
驚かされたのは2戦目の紫菊賞。このレースでも出負けして新馬戦同様に後方からのレースとなったが、3~4角の大外から手綱を抑えたまま進出、ラスト1Fで手綱を引っ張ったまま先頭に立ち、最後も手綱を持ったまま余裕たっぷりに後続を突き放して完勝。2着のブルーグロットは新馬戦で強い内容で勝利した馬だったが、同馬を相手に調教のような走りで勝利した。
紫菊賞で見せた異様な強さから「クラシックの主役候補出現か」と高い評価をしたが、リブーストは残念ながらその後に屈腱炎を発症し、戦線離脱となってしまった。古馬になってからの活躍を期待したい。
5位 アサヒ
6月東京のジオグリフが勝利した新馬戦で2着だった馬。同レースでは好位の外でレースを進め、向正面で位置を上げ、3角では2列目。最後の直線では序盤で先頭に並びかけ、一旦は先頭に立つ好内容の競馬。相手がジオグリフでなければ勝っていたようなレース内容だった。
その次走の未勝利戦では、最後方からあまりに強引な捲りで、新馬戦で3着に下したアスクビクターモアに先着を許しての2着だったが、3戦目は相手にも恵まれ順当に勝利。レースを順調に使われて上昇し、秋の東京スポーツ杯2歳Sでは2着と好走した。
今後は勝ったり負けたりとなるだろうが、順調に使えるという時点でそれが強さでもある。その強みを生かして、クラシック本番で指数上位馬を逆転することを狙ってほしい。
5位 ジャスティンロック
9月中京のトゥデイイズザデイが勝利した新馬戦の2着馬。このレースはなかなか良い指数で、中団から3~4角の大外を回って上がり3F最速タイムを記録したジャスティンロックはレース内容も良く、強かった。
そこから順調に使われ、デビュー3戦目の京都2歳Sを差し切り勝ち。個人的に本命視した期待に応えてくれた。ただ昨年の同レースは重賞としては指数が平凡。ここからクラシックで活躍するためには大きな成長が必要だ。
5位 ラーグルフ
新馬戦では出遅れて後方からレースを進め、最後の直線でも伸びず9着と大敗。しかし、次走の未勝利戦を勝利すると、続く芙蓉Sでは展開が向いたとは言え、新馬戦で強い走りを見せていたミッキーブンブン、ドグマを差し切り勝利。この時点ではまだフロック感が強かった。
しかし、ホープフルSは好位の内から3~4角で位置を上げていく好内容の走りで3着。デビュー戦で走っていない馬ほど軌道に乗れば強くなるものだが、この馬はまさにそのタイプ。一戦ごとに着実に成長している。今後も人気は出ないだろうが、要警戒の馬だ。
5位 サトノヘリオス
デビュー3戦目のエリカ賞では好指数勝ちを決めた馬。ただエリカ賞は3連続開催で行われた阪神のタフな馬場で、前がペースを引き上げる展開。中団でレースを進めて向正面で内に潜り込んだ同馬はレース展開に恵まれた。またこのレースは1戦1勝馬が多く、それらがキャリアの浅さを見せて凡退した中で、キャリアを積んだ強みを見せつけた勝利だった。
今後に向けては過剰人気の危険タイプになるだろうと見ていたが、続くホープフルSでは想定どおり13着と惨敗。ただホープフルSはレースが淡々と流れた中、終始外々を回るロスのある競馬ながらも、勝ち馬キラーアビリティとは1.2秒差。この馬は今後も人気になりそうな馬で、馬券妙味はあまりないかもしれないが、展開が向いた場合は、今後の重賞でもチャンスがあるはずだ。
5位 ヴェールランス
新馬戦はテンダンスとのマッチレースとなったが、それを下して勝利。ラスト2Fは11秒8-11秒9とほぼ減速せず、なかなかの好内容だったことから、この連載では2着のテンダンスとともに好評価をした。テンダンスはその後、東京スポーツ杯2歳Sで3着となかなかの活躍を見せている。
次走エリカ賞ではキャリア1戦馬が若さを見せて凡退するなか、しっかりと2着した走りは評価できるものだった。しかし、次走の京成杯は大敗。エリカ賞がレコード決着でなかなか良い指数となったことで、疲れが出てしまったのだろう。エリカ賞をキャリア2戦目で好走したことは評価できるだけに、立て直されての巻き返しに期待したい。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)イクイノックスの指数「-15」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.5秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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