【菊花賞】「差し馬の台頭」「上がりを要する馬場」 春のクラシックから巻き返しを狙える穴候補は?

三木俊幸

2021年菊花賞出走馬の馬場適性,ⒸSPAIA

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先週日曜日は雨と強風の影響で差し有利

今年はゴール前に急坂が待ち受けている阪神コースを舞台に争われる菊花賞(GⅠ・芝3000m)。皐月賞を制したエフフォーリアとダービー馬シャフリヤールが不在のため、混戦模様に拍車がかかりそうなメンバー構成。“舞台変わり”を味方につけられる馬はいるのか。馬場適性の観点からレースを分析していこう。

まずは、先週末の阪神芝コースのクッション値と含水率、好走馬の脚質について振り返る。

2021年菊花賞出走馬の馬場適性,ⒸSPAIA,ⒸSPAIA


10月16日(土)はクッション値8.6、ゴール前含水率9.2%の良馬場。5レース全ての勝ち馬が4角4番手以内、7頭立てだった紫菊賞を勝ったリブーストは差し脚質だったとも言えるが、隊列が一団となった中の2列目外のポジションだったことを踏まえると、先行有利とも言える。しかし、2・3着には後方から差してきた馬もいることから、極端な有利不利はない馬場だった。

秋華賞デーの10月17日(日)は、前日夜から当日朝にかけて11.0mmの雨量を計測したことが影響し、クッション値8.1、ゴール前含水率11.6%で稍重発表。それでも天候が回復したため、昼過ぎには良馬場へと回復した。

好走馬の脚質は前日とは違い、6レースで3着内に好走した18頭中10頭が4角6番手以下と差し馬有利。雨だけでなく、山から吹き下ろす強風の影響もあったと推測できる。

また秋華賞は、前半1000mの通過が1:01.2とタイム面でもスローペースだったこともあるが、2:01.2で決着。前日の土曜日に行われた2勝クラスの2000m戦、北國新聞杯(2:00.1)より時計を要しており、上がりも2着ファインルージュの35.5が最速だった。

上がりタイムについては土日とも遅いレースが目立っており、合計11レースで3着内に入った33頭を対象にしても、33秒台の上がりをマークしたのはわずか3頭のみというデータが見られた。

阪神競馬場の天気を見ると、雨が降った火曜日以降はレース当日まで雨予報なし。そのため良馬場で行われそうだが、菊花賞は内回りの長距離戦。上がりのかかるタフなレースになりそうだ。

大穴候補はヴェローチェオロ

これらの点を踏まえて注目馬をピックアップ。特に注目している馬には☆をつけている。

【ステラヴェローチェ】
皐月賞と日本ダービーでは、ともに3着で実績最上位。前走の神戸新聞杯は不良まで悪化した馬場の中、後方から差し切る内容でダービー馬を撃破している。差しが届き、上がりが掛かる馬場というのも問題なく、3000mの距離に対する不安はない。前走のダメージさえ残っていなければ、軸としての信頼度は高いだろう。

【オーソクレース】
春は全休したため、前走のセントライト記念は久々のレースだった。中団追走から勝負どころでやや反応が鈍かったものの、間を割って伸びて3着。自力の高さを見せつけた一戦だった。スローペースよりのレースしか経験していないので、バテ比べになるとどうかという不安はあるが、距離自体は苦にしないと見ているので展開次第では上位に食い込んできそう。

【☆レッドジェネシス】
神戸新聞杯ではステラヴェローチェと半馬身差の2着と好走。馬券圏外となった3戦中2戦は上がり33秒台が求められる展開だったが、上がり36.0かかったゆきやなぎ賞や35.3だった京都新聞杯と同様、タフな展開に強いことを改めて証明した。今回も同様に上がりが掛かることが想定できるだけに、条件は合っている。

【タイトルホルダー】
前走のセントライト記念は直線で包まれ、何もできずに終わってしまった。しかし、持久力勝負となった皐月賞では2着となったように、今回求められる条件には適している馬。3000mはベストとは言えないが、同世代であれば対応できるだろう。能力の高さからの粘り込みに期待する。

【☆ヴィクティファルス】
前走のセントライト記念は5着に終わったものの、スローペースに加えて直線に向いてから進路が開くまでに時間を要した。もともと瞬発力に秀でたタイプではないため、そこから3着馬と0.2秒差という内容なら悪くない。距離が伸びて良さが出そうなタイプなだけに、上がりの掛かる展開。馬場は味方につけられる。

【☆ヴェローチェオロ】
前走の三田特別はペースが落ち着いた向正面で最後方から4番手まで捲っていき、最後は余裕を持っての完勝だった。中1週での出走となるが、同じ阪神の内回りコースで上がり36.2を要する持久力勝負を制した内容から考えると、今回のレースへの適性は高そう。2歳時から強い相手とも戦ってきているため、3着内に好走して大穴をあける可能性も十分あり得る。

ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在はカメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場を飛び回りつつ、ライターとして記事を執筆している。

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