「地元騎手が狙い目」は実際どうなのか 今年は新人・永野猛蔵、小沢大仁騎手が地元でアツい?

佐藤永記

ローカルで狙いたい「地元騎手」,ⒸSPAIA

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思ったよりも地元騎手って活躍するのね

「地元騎手は狙いだ」とはよく聞かれるが、実際どうなのか、個人的には疑っていた。買う側がその意識をもってしまえば結局オッズが美味しくなくなってしまうからである。編集部から「地元騎手の成績は本当に良くなるのか」という記事案を頂いたときには正直、断ろうかと思っていた。

だが、返答するまで数時間かけてデータを見てみると、想像以上に面白い結果が出てきた。これは紹介しないわけにはいかないだろう。というわけで今回はローカル開催場を地元とする騎手のうち、特徴的なデータが出てきた騎手を競馬場別に紹介していこうと思う。

残り2週の函館開催、純地元丹内の巻き返しなるか

丹内祐次騎手・地元函館成績,ⒸSPAIA


まずは残り2週、4日開催となった函館を地元とする丹内祐次騎手(リーディング32位、7月25日時点。以下同様)を見てみよう。丹内騎手は出身が函館市とバリバリの純地元。昨年の成績では勝率(全場平均4.0%⇒函館8.5%)、連対率(9.7%⇒17.9%)、複勝率(17.2%⇒27.4%)と、全て全場平均を上回っているのだが、今年は今のところ函館では3着が10回と多く、複勝率(21.3%⇒24.6%)は平均より上、勝率(5.0%⇒2.9%)、連対率(13.2%⇒10.2%)は下回っている。

複勝率は悪くないこと、そして今年は昨年よりも全体の成績が良いことを考えると、残り2週となった地元函館で奮起する可能性は大いにありそうだ。

大ベテラン江田照男、現在の福島好走条件は

夏の福島開催は18日に終わってしまったが、まだ秋に開催が残っている。福島を地元とする騎手を2名取り上げたい。

田辺裕信騎手・地元福島成績,ⒸSPAIA


まずは田辺裕信騎手(13位)だ。昨年福島では【8-7-0-26】、勝率19.5%、連対率、複勝率ともに36.6%と全場平均よりも高い結果を残していたが、今年は【3-5-4-20】と連対率25.0%、複勝率37.5%は優秀ながら、勝率9.4%だけがイマイチな状態である。

だが、夏の福島開催ラストだった7月18日の最終12Rを5番人気トライハードで7番手から差し切り勝ちし、単勝は1180円。リーディング上位騎手のため秋開催で登場する見込みは薄いが、もし1日でも福島にやってきたときは勝負なのでお忘れなきよう。

江田照男騎手・地元福島成績,ⒸSPAIA


福島地元で取り上げる二人目は大ベテランの江田照男騎手(47位)だ。49歳となり、全盛期よりは成績が下降したものの、まだリーディング全体の真ん中よりは上で奮戦している。肝心の地元福島だが昨年が【1-0-2-57】、今年【1-0-2-33】と残念ながら全場平均より落ちている。

だが江田照男騎手といえば「穴」。昨年の1勝は8番人気カガフラッシュを道中10番手から4角先頭でマクリ勝ちの波乱を巻き起こした。単勝1650円、3連単は1060番人気の64万940円だった。今年の1勝は今のところ1番人気でのものだが、残る秋の開催でもう一撃の夢が残っているかもしれない。また、オカルトになるが、昨年と今年の福島での好走条件を探してみたところ、出走頭数できれいな結果が出た。

江田照男騎手 2020年+2021年福島
13頭以下【0-0-0-12】
14頭立て【2-0-2-4】
15頭以上【0-0-2-59】

福島で14頭立てのレースに江田騎手が乗っていたら勝率25%、複勝率50%である。オカルトなのは承知だが、コレを見てしまったら頭の片隅に残ってしまうだろう。ごめんなさい。

地元新潟の新人騎手はすでに凱旋勝利を記録

永野猛蔵騎手・地元新潟成績,ⒸSPAIA


24日から始まった新潟開催は9月5日まで続く夏競馬後半のロングラン。その新潟を出身地とするのが永野猛蔵騎手(43位)。今年3月にデビューした新人騎手である。すでに今年の成績は【16-10-16-225】と新人として申し分ない実績であり、新潟では【1-0-0-18】で4月18日の7Rで不良馬場をものともせず、ダート1800mを6番手から5番人気馬アヴァニイで差し切り勝ちし、単勝は1220円であった。

まだまだ新潟での騎乗数が少ないので得意となるかはわからないが、永野騎手といえばダートでの好成績【15-5-9-142】が光る。通算16勝中15勝がダートでのもので、いかにも「追える」騎手感が半端ない、といったところだ。新潟の直線で砂塵を巻き上げ追う永野騎手は減量騎手でもあり、先週紹介した「夏の中距離ダートでは減量騎手が圧倒的優位」という話とも合致する。

子供の頃に第7回のジョッキーベイビーズにも決勝に出場している永野騎手。地元云々を抜きにしても注目の新人騎手だ。

今年開催増の中京で荒稼ぎの新人・小沢大仁

小沢大仁騎手・地元中京成績,ⒸSPAIA


今年は京都改修などの影響で中京開催が多くなっており、9月と12月に2開催残っている。この中京でも地元の新人騎手が結果を残しているのだ。小沢大仁騎手(42位)は愛知県出身で純地元の新人。今年3月にデビューしてからの通算成績【16-14-13-229】はもちろん立派なのだが、中京【8-1-3-63】にはあっぱれの一言、勝ち星の半分が中京なのである。

先に述べたように今年は中京開催が多く、騎乗回数も充分あった中での8勝は信頼に足る実績だといっても過言ではないだろう。ただ、2着3着が少なく、連対率や複勝率は全場平均とほぼ同じ。つまり、狙うは「中京小沢の単勝」だ。配当的にはすでに中京で信頼されているのか、人気馬騎乗率が高い傾向にある。中京・1番人気での実績が【3-1-0-0】で単勝回収率は240%。先ほどの狙いをもっと絞り込むなら「中京小沢の1番人気には逆らうな」である。

小倉は残り1開催 有力騎手が強い中で輝く泉谷楓真

泉谷楓真騎手・地元小倉成績・新潟成績,ⒸSPAIA


小倉開催は残りが8月14日から9月5日までの1開催8日間を残すのみ。九州出身の地元有力騎手は数が多く、今年の小倉成績上位の中にも福岡出身の浜中俊騎手【17-15-10-65】(小倉2位)、佐賀出身の鮫島克駿騎手【16-15-15-109】(同3位)が上位を占めており、騎乗数が少ない中では佐賀出身の川田将雅騎手【7-4-2-12】(同13位)が勝率28.0%、複勝率52.0%のハイアベレージを叩き出している。

だが、中央競馬は10場しかない。小倉だからといって九州の騎手ばかりに注目していないだろうか。小倉は関門海峡を挟めば山口県と隣合わせで、下手すれば福岡出身者よりも距離が近い地元だったりするだろう。それが山口出身の泉谷楓真騎手(19位)である。小学生時代に小倉競馬場を訪れ騎手を志し、小学校6年生から小倉競馬場で乗馬を始めたという、出身県だけでは語れない、彼こそがホンモノの小倉地元騎手である。

泉谷楓真騎手は2年目で、今年【36-28-31-303】は昨年の【19-20-21-434】(昨年52位)から大きく成長している。そして肝心の地元小倉は、昨年【2-3-2-32】から今年【9-6-8-66】と大きく成績を伸ばし、今年小倉勝率は10.1%、連対率16.9%、複勝率25.8%。昨年全体、今年全体、昨年小倉のどれと比較しても高い数値だ。もちろん今年は昨年より成績全体が成長している影響もある。また、勝利数は中京(11勝)が小倉より多いのだが、これは中京での騎乗数が多かったため。勝率は中京8.7%を上回る。やはり小倉の方が全てにおいて強い。

ただし、水を差すようだが今年の泉谷騎手がより結果を出しているのは、実は新潟である。【7-5-5-44】は勝率10.9%、連対率18.8%、複勝率26.6%は小倉を超えてトップ。関西の騎手だし、新潟の裏で札幌や小倉があるので今年新潟にはもう現れないかもしれないが、騎乗機会があればより注目したい。

札幌も残り1開催 苦戦続く北海道出身騎手

北海道を地元とする騎手が現役で6名いる。だが、函館を純地元とする丹内祐次騎手を別とすると、残り5人は残念ながら活躍しているとは言い難い成績。知名度筆頭ならば田中勝春騎手だが、今年は【5-7-8-120】(79位)、7月11日を最後に2週間騎乗しておらず、次のステージへの動きが噂されている状況だ。だが、もし札幌で騎乗する機会があれば見逃さないほうがいいかもしれない。

江田勇亮騎手と蓑島靖典騎手は障害戦で戦っており、障害戦のない札幌で騎乗することはほぼないだろう。岩部純二騎手も7月は福島と新潟で騎乗しており、昨年も札幌での騎乗機会はなく、この後騎乗機会があるかどうかの問題である。丸田恭介騎手も昨年今年と札幌での騎乗はない。函館でも騎乗がなく、この先騎乗するとなれば2年のブランクがある状態となる。逆に彼らは札幌に登場すれば「レアケース」なので、良くも悪くも注目してみることにはなろう。

<ライタープロフィール>
佐藤永記
20代を公営ギャンブラーとして過ごし、30歳から公営競技の解説配信活動を開始。競馬を始め多くの公営競技ファンに各競技の面白さや予想の楽しみを伝えている。現在はYoutubeで配信活動を続けながらライターとして公営競技の垣根を超えて各所で執筆中。

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