【マイルCS】有力血統「ハービンジャー」を内包するナミュール 海外馬チャリンも血統面から解説
坂上明大
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傾向解説
昨年に舞台を阪神から京都に戻したマイルCS。内回りと外回りが変わるエリザベス女王杯ほどではありませんが、阪神開催時からの適性変化は把握しておきたいところです。本記事では血統面を中心に、マイルCSのレース傾向を整理していきます。
京都外回りコースは直線入り口で馬群がバラけやすいです。よって、全馬が力を出し切りやすく、それは層が厚い芝中距離路線組の好成績にも繋がっています。距離短縮組に限らず、レベルの高い芝1800m以上で実績を残している馬には注意が必要です。
<前走距離別成績>
距離延長【1-2-1-9】
勝率7.7%/連対率23.1%/複勝率30.8%/単回収率45%/複回収率77%
同距離【4-4-0-17】
勝率16.0%/連対率32.0%/複勝率32.0%/単回収率199%/複回収率89%
距離短縮【2-1-6-16】
勝率8.0%/連対率12.0%/複勝率36.0%/単回収率60%/複回収率116%
※過去10年、京都開催のみ。単勝オッズ29.9倍以下
今年は登録馬唯一の3歳馬シックスペンスが回避を表明しており、該当馬はいませんが、3歳馬にも傾向あり。2000年以前は3歳馬を買うだけでプラス収支を計上できるほどでしたが、2001年以降は一転して好走率が下がり、単複回収率も100%未満に。2000年以前は3歳馬のエイジアローワンスが2kgあったのに対し、2001年以降は1kgに減量したことが関係しています(古馬混合GⅠではマイルCSとチャンピオンズCのみ)。
近年は競走馬の早熟化や育成技術の発達から、以前よりも3歳馬の好走は増えていますが、ほかのGⅠよりも好走が難しいことは変わりないです。その分、一昨年1着のセリフォス、昨年4着のエルトンバローズなど、3歳時に結果を残した実力馬は4歳以降も注目です。
<マイルCS 3歳馬成績>
~2000年【3-5-5-39】
勝率5.8%/連対率15.4%/複勝率25.0%/単回収率118%/複回収率113%
2001年~【3-2-5-73】
勝率3.6%/連対率6.0%/複勝率12.0%/単回収率32%/複回収率40%
※1986年以降
血統面での注目はハービンジャー。産駒は繋ぎ(馬の蹄から球節の間の部分)が緩くギアチェンジが得意ではないため、京都外回りのような馬群がバラけやすいコースが得意な傾向にあります。マイルCSでの4度の好走はペルシアンナイトとナミュールの2頭によるものですが、コース全体でも単複回収率は100%超の好成績を収めています。
その他ではSeattle SlewやCaerleonも注目血統に挙げられます。この3頭はいずれもRound Tableの血を内包。Round Tableは小柄で柔らかいフットワークで走った馬でしたが、この柔軟性が京都外回りのマイル戦では大きな強みとなっています。
<血統別成績>
ハービンジャー内包【2-1-1-0】
勝率50.0%/連対率75.0%/複勝率100%/単回収率652%/複回収率330%
Seattle Slew内包【1-0-2-4】
勝率14.3%/連対率14.3%/複勝率42.9%/単回収率124%/複回収率162%
Caerleon内包【1-0-0-2】
勝率33.3%/連対率33.3%/複勝率33.3%/単回収率603%/複回収率130%
※過去10年、京都開催のみ。単勝オッズ29.9倍以下
有力馬の血統を解説
・ブレイディヴェーグ
母インナーアージは二冠牝馬ミッキークイーンの全姉で、母自身も芝1600~2500mで4勝を挙げた中距離馬です。スレンダーな体つきは母譲りで、ロードカナロア×ディープインパクトという主流配合にNureyevの5×5など欧州血脈の仕掛けを併せ持つ点も◎。ただ、トモが薄い中距離馬体型から、マイル戦では展開の助けがほしいところです。
・ナミュール
近年、勢いに乗るヴィートマルシェ牝系に属し、半兄ヴェスターヴァルトは2020年ファルコンS3着馬、半妹ラヴェルは今年のエリザベス女王杯2着馬、半妹アルセナールも同年クイーンC2着馬という良血牝馬です。ノヴェリスト、キタサンブラック、エピファネイアとすべて異なる父の産駒ながら、このきょうだいが見せる爆発的な末脚がヴィートマルシェ牝系の良さといえるでしょう。ハービンジャー産駒の本馬も同様です。
本馬は1600~2000mが主戦場の差し馬で、舞台適性はメンバー随一。ゲートに課題は残りますが、連覇の可能性も決して低くありません。
・チャリン
ヨーロッパのスピード豊かな牝系に属し、Ahonooraのインブリードやデインヒルを併せ持つDark Angel産駒という点は今年の高松宮記念の覇者マッドクールと共通します。トレーナーが違えばスプリンターになっていた可能性も高く、潜在的なスピード能力はメンバー中屈指の一頭です。
とはいえ、ヨーロッパのマイルGⅠでは上がり3F33秒台前半の末脚を披露しており、京都芝1600mでの末脚勝負でも十分に通用するでしょう。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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