【2歳馬ジャッジ】怪物級の指数をマークしたポメランチェ 今後に向けての懸念点とは?

山崎エリカ

2021年6月3週目の2歳馬ジャッジⒸSPAIA

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目指せ「2歳戦で大儲け」

このコラムでは「2歳戦で大儲け」を目指して、古馬のレースと比較しながら新馬戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回はポメランチェが好時計勝ちを決め、アライバルが話題を集めた6月3週目の新馬戦について、各レースの指数と注目馬の評価を掲載する。

※指数算出に時間がかかるため、評価対象は1週前のレースまで

2021年6月3週目の2歳戦指数と評価インフォグラフィックⒸSPAIA



6月19日(土) 札幌5R 優勝馬 ポメランチェ 指数-8 評価AA

スタートを決めてそのまま緩みないペースで逃げる。直線を向いてもそのスピードはあまり衰えず、そのまま2着に4馬身差をつけて圧勝した。走破タイム1分7秒9は文句なしに超優秀。同日12レースの1勝クラスの芝1200m戦が1分7秒6の決着、同日1レースの3歳未勝利戦が1分8秒4の決着。 この日の札幌芝は前週同様、後半に向けて時計が掛かっていく状態。それを考慮しても今回のポメランチェのタイム、指数は抜群に優秀だ。指数上の計算では今回の走りが再現出来れば、函館2歳Sでも上位争いだろう。

今回のポメランチェの走りを見て思い出したのはかつてのモズスーパーフレア。2歳夏の小倉新馬戦を今回のポメランチェと同レベルのかなり優秀な指数で快勝した馬だ。モズスーパーフレアは今でこそ芝のトップスプリンターとして君臨しているが、デビュー2戦目の小倉2歳Sでは1番人気を裏切り、それ以降もかなり低迷した時期があった。

モズスーパーフレアの新馬戦の走りは、優秀すぎて強烈に疲労が残ってしまったのだ。そしてその疲れが抜けるまでかなりの時間が掛かった。低迷期を抜け出し、能力を出せるようになってきたのは3歳春から夏まで約3カ月休ませたあと。その期間に疲労が抜けて、本来の高い素質を発揮できるようになり、その後の快進撃に繋がった。

またモズスーパーフレアの新馬戦では差のない2着だったジャスパープリンスも実はかなりの好指数マークだったが、同馬も次走未勝利戦では人気を裏切り大敗、その後も新馬戦の疲れが抜けず長い低迷期があった。そしてその疲れが抜けたのは明け4歳になった頃。今はダートのオープン馬として活躍している。

新馬戦であまりに強い走りは強烈な疲労を残しがち。ポメランチェが高い能力、素質を持っていることは疑う余地がない。ただ今回の圧倒的な走りにはどうしても疲労の懸念がでてくる。函館2歳Sに出走ならば半信半疑。しかし、そのスピード能力は高く、能力が出せる状態になればトップ級での活躍は必至の馬だ。



6月19日(土) 札幌6R 優勝馬 アーリーレッグ 指数+2(ダート) 評価C

ダート1000mの新馬戦。タイムが平凡で、上がりも目立つものではなく、結果、指数も平凡。ここまで3週行われた現2歳世代の新馬戦では最も低い指数での決着となった。秋になるとダート新馬戦はいきなり古馬2勝クラス級の指数をマークするような怪物も出てくるが、例年JRAの夏のダートの新馬戦は平凡な決着指数のレースが多い。

ただ平凡なダート戦とは言え、中には隠れた芝馬がいることがある。そのような馬たちにとっては、平凡なダート新馬戦は疲れを残すことなく実戦を経験できる場になり、後の飛躍に繋がりやすい。平凡な指数決着のダート新馬戦は着順を無視し、フットワークを見て隠れた芝馬を探すことが面白い。



6月20日(日) 札幌5R 優勝馬 グランアプロウソ 指数-2 評価B

大外枠から好位で流れに乗り、4角では手応え抜群で先頭に並びかけ、早め先頭から押し切って勝利した。レース運びとしては完璧、優等生的な勝利だった。指数も同日1レース、7レースとのタイム比較から、マズマズ良いと判断できる。

このレースは稍重で行われた。前日の土曜日は良馬場で、急に悪化した状況。このような馬場変化は騎手がスピード感の違いに急に対応できないことが多いため、実質ハイペースの競馬を生み出しやすい。

よってグランアプロウソは実質ハイペースを早め先頭から押し切った内容の濃い競馬だったと判断できる。(ただ、この日の札幌はそのあと晴れて馬場が乾き、後半のレースは前が残るようになる。) このような競馬ぶりは次走に繋がりやすいが、ただ、ラップを見るとラスト1Fでは急失速した形になっている。その点がそこまでの大物感を感じさせない。



6月19日(土) 阪神5R 優勝馬 フェズカズマ 指数-1(ダート) 評価C

フェズカズマはセレクトセールでは6480万円で取引されたなかなかの期待馬。1番人気に支持され、結果も勝利した。指数は特に目立ったものではないが、同日の札幌ダート新馬戦よりは良かった。次走は函館2歳Sが予定されているようだが、初芝である程度の好走ができるようなら、その後の芝での大きな上昇が期待できる。無理をさせずに、ダートでデビューさせた意味が出てくる。



6月20日(日) 阪神5R  優勝馬 ダノンスコーピオン 指数-2 評価B

最後の直線で早めに先頭に立ったルージュラテールをジワジワと追い詰め、ダノンスコーピオンが差し切って勝利した。4着以下には大きな差がついており、このような着差決着のレースの上位馬はそれなりに強いことが多い。

上がり3Fタイム34秒0、ラスト2Fが11秒2-11秒6というのもマズマズ。超優秀というわけではないが、悪くもない。走破タイムが1分38秒7と平凡なのも後に疲れを残しにくく、順当に後の上昇を計算しやすいので、悪いことではない。全ての面が悪くないのだが、超秀逸な点もない。今後の成長次第という評価が妥当だろう。



6月19日(土) 東京5R 優勝馬 アライバル 指数-3 評価A

アライバルはスタートはあまり良くなかったが、徐々にポジションを上げて4角では好位の中目に位置。直線では一瞬、内から寄られてバランスを崩したが、すぐに立て直して、ルメール騎手の好判断で馬場の良いところを通り、最後までしっかりと伸びて勝利した。

ラスト2Fは11秒3-11秒4と最後までほぼ減速しなかった。これは降雨の稍重馬場だったことを考えれば、かなり優秀。ただ、最後の1F過ぎのレース映像を見ると、他の馬がバテた中でアライバルだけが失速せず、最後までスピードを維持して、グンと伸びたように見える。キレるというよりも最後までバテない点が強みの馬のようだ。

ここまで3週間行われた東京の新馬戦の中では一番強い勝ちっぷりだった。上のクラスで戦う馬になるだろう。ただ、トップ級に入ると少し瞬発力不足の傾向が出るかもしれない。



6月20日(日) 東京5R 優勝馬 キミワクイーン 指数-1 評価A

キミワクイーンは外枠からダッシュが良く先頭を奪い、そこから折り合って競馬を進めるセンスの良さを見せた。そのまま直線に入って早めに先頭。直線半ばでは内からも外からも後続の追い上げが激しく、負けてしまうかと思わせたが、最後にもうひと伸びして勝利した。

ラスト2Fは10秒8-11秒0と速い。このレースは超絶スローペースだったので、最後の1F11秒0という数字自体にはそこまで価値はないが、最後に大きく減速しなかった点は評価できるし、自ら動いてのものだけに、数字以上の価値はある。

今回の走破タイムが平凡なだけに高い評価はされにくい馬だと思うが、今後の上積みが見込め、オープン級の穴馬として活躍してくれそうだ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ポメランチェの指数「-8」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.8秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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