【チューリップ賞】過去10年で7勝の強力阪神JF組が上位独占か? それとも……

勝木淳

チューリップ賞インフォグラフィックⒸSPAIA

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スローからの決め脚比べ

チューリップ賞インフォグラフィック

牡馬クラシック路線ほど多様化していない牝馬路線は基本的には2歳暮れの勢力図が桜花賞まで崩れることが少ない。なぜなら、阪神JF~チューリップ賞~桜花賞の主要路線はすべて阪神芝1600m。総合力が問われるマイル戦、それも同じ競馬場とあってはトップグループは動かない。

チューリップ賞過去10年ⒸSPAIA

トライアルのチューリップ賞は基本的に前後半の800mを比較すると、前半が遅く後半が速い後傾ラップ。勝ち馬は上がり3ハロン33秒台の脚を使える、もしくはその順位が出走中1、2位の馬が強い。決め脚比べに強い馬が優勢なレースである。ただ、開幕2週目の阪神らしく後方一気は厳しく、中団あたりにつける、マイル戦への適応力も必要となる。

阪神JF組が圧倒も……

前走レース別成績(過去10年)ⒸSPAIA

先に述べたように桜花賞路線は2歳既成勢力が強力。前走が阪神JFだった馬は過去10年で【7-3-5-10】、勝ち馬は7/10がこの組であり、まずここを無視して馬券は組み立てられない。レシステンシアが勝った昨年の阪神JFを振り返ると、

12.2-10.5-11.0-11.8-12.0-11.2-11.5-12.5
前半800m45.5-後半800m47.2 勝ち時計1.32.7(レコード)

このラップで逃げ切り勝ちのレシステンシアは桜花賞当確級。想定通りにレシステンシアが出走するとなると、緩流が定番のチューリップ賞とは正反対のレースになり、決め脚だけでは勝てないレースとなる。ただ、このラップはあくまでGⅠでのこと。目標は桜花賞であるなら、消耗が激しい厳しい競馬をしない可能性もある。自ら先手を奪いに行かないなど、思わぬ流れになる可能性は頭に入れておきたい。決めつけこそ競馬では仇。ここを事前にどう判断するか、センスが問われるところだ。

ちなみにレシステンシアは阪神JFでは上がり3ハロンは1位。スピードに決め手、能力的に抜けているのは事実である。思わぬ流れという意味では阪神JFでのレシステンシアは4番人気、単勝1.8倍の断然人気リアアメリアが後方に構え、ライバルたちの意識が後方があったのは事実であり、チューリップ賞ではむしろ意識される立場に変わる。そういった状況の変化に勝てるかどうか。

阪神JF独占は?

勝ち馬レシステンシアの課題をいくつか挙げたが、ここ10年7勝の阪神JF組優位はそうは崩せない。ここで阪神JF組を掘り下げていく。阪神JFでの着順別成績をみてみる。

阪神JF組の前走着順別成績ⒸSPAIA

データでみると、阪神JF組は上位1~3着がやはり強力。今年は、阪神JF1~3着馬が揃って出走予定。レシステンシア、マルターズディオサ、クラヴァシュドールはここでも有力。ではこの3頭であっさり決まるのだろうか。

そこには近年気になるデータがある。過去10年阪神JF組の3着以内独占はないということだ。17、18年は阪神JF組2頭出走でともに1、3着だが、19年はダノンファンタジー、シェーングランツ、メイショウショウブが1~3番人気で1、5、9着。17~18年は2着は別路線組、16年は5頭出走で5、7、10、14、16着、15年は2頭出走、1、3着でやはり2着は別路線組。イメージとしては阪神JF組2頭に別路線組1頭というところか。3連系の馬券はこの別路線組の取捨選択にかかっている。

改めて前走レース別成績を振り返る。複勝率でいうと、シンザン記念やフェアリーS、クイーンCといったマイル重賞組に触手が動く。想定ではスマイルカナ、チェーンオブラブ、シャンドフルールが出走予定。いずれも4番人気以下の伏兵たちなので、ちょっとした穴馬券も期待できる。それとも阪神JF組が4着ウーマンズハートを加えた4頭のなかで上位独占をするのか。じっくり考えていきたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。