【天皇賞秋】「二強対決は両雄並び立たず」 データ上では一強ムード
門田光生
ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
最近のトレンドは前走宝塚記念
まずは先週の菊花賞の振り返りから。下記の表は昨年と今年の菊花賞のラップと上がりを比較したもの。1000mまではほぼ同じラップで推移しているが、上がり4ハロンと3ハロンは今年の方が2秒かかっている。昨年は途中で13秒台に緩むラップがあったのだが、今年はなし。その分で上がりのかかる、菊花賞らしいスタミナ勝負となったといえるだろう。
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1着のワールドプレミアはビーマイゲスト、2着のサトノルークスはサドラーズウェルズと、ともに母系に欧州のスタミナ血統を内包していた。3着のヴェロックスも勝ち馬と同じドイツ血統で、決してスタミナ不足の配合ではない。
ヴェロックスの敗因はラップが緩まないタイトなレースの中、勝負どころでタガノディアマンテが早めに動いたことによって、自身も早めに仕掛けざるを得なかったことだろう。
勝ったワールドプレミアはインで、3着のサトノルークスも4角手前で一瞬だがひと呼吸入れている。この差が最後の伸びの違いに出たように思う。予想はさっぱりだったが、久しぶりにいい菊花賞を見た。
ちなみに、3年連続で金子真人ホールディングスの馬が3着(2017年ポポカテペトル、2018年ユーキャンスマイル、2019年ヴェロックス)。地味ながら、これもすごい記録である。
今週は天皇賞(秋)。以前は前哨戦を使って天皇賞(秋)に挑み、ジャパンカップ→有馬記念と使うのが中・長距離の王道路線。当然ながら秋に4走すると消耗も激しく、有馬記念の時点ではスタミナゲージが空っぽ、というケースも少なくなかった。
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最近は有馬記念まで余力を残そうと、前哨戦を使わず天皇賞(秋)からスタートするケースが増えてきた。過去10年を調べてみると、王道ローテーションは4勝している毎日王冠組だが、宝塚記念からの直行組も6頭の連対馬を出して存在感を示し始めている。
ちなみに、1989年から2008年までの20年間で宝塚記念組が連対したのは4回だけ。放牧先の設備が格段にパワーアップし、休み明けからいきなり全力を出せる仕上げができるようになったのが大きいか。なお、データ上で数字がよくないのはオールカマーと京都大賞典組。ともにサンプル数がそこそこそろっている割にともに1勝ずつ、2着0回は寂しい数字だ。
ディープ産駒の人気馬は危険
年齢を調べてみると、6歳以上の数字が極端に悪くなっている。最近は実績馬が早めに引退して種牡馬入りする傾向にあるが、それも関係しているのだろうか。
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血統はというと、このGIもディープインパクト産駒が他馬を圧倒する出走頭数を誇っている。ただし、勝率3%を切っているのは正直、物足りない。直線が長く上がりが速くなるコース形態は得意のはずなのだが。下記の表を見ても分かるように、近年、ディープ産駒で最も人気に推された馬は、人気以上に走ったためしがない。
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ディープ産駒をもう少し掘り下げてみると、ノーザンダンサー系を母の父に持つ馬は連対率が25%越えと割と悪くない数字。ディープ産駒で唯一の勝利を挙げたスピルバーグは母の父がミスプロ系だが、それ以外の11頭は全て着外だった。
アーモンドアイに一日の長
データ的な推奨は以下の通り
①5歳以下
②ディープ産駒は母の父がノーザンダンサー系
③京都大賞典、オールカマー組は割引
となる。それを踏まえて前哨戦を振り返ってみたい。まずは王道の毎日王冠。1着馬の成績があまりよくなく、10年前にカンパニーが勝って以来優勝馬が出ていない。今年は1着のダノンキングリーがマイルCSに回るということで不参加だが、毎日王冠で一番強い競馬をしたのは間違いなくこの馬。今年の毎日王冠組はちょっと厳しそうだが、アエロリットには前へ行けるという大きな武器がある。同型不在なら上位に推しても面白いだろう。
メジャーになってきた宝塚記念組はどうか。ここからはスワーヴリチャードとアルアイン、マカヒキが出走。宝塚記念は4角での前4頭がそのまま上位を占めたレース。評価が難しいが、ここからはスワーヴリチャードとアルアインを推したい。スワーヴリチャードは右回りのGIを勝ったので忘れかけているが、デビュー当初から陣営が「左回りの方が絶対いい」と話していた馬。昨年の天皇賞(秋)はスタートで横の馬にぶつけられて、レースにならなかっただけ。舞台設定は合っているはずだ。
アルアインはGI2勝がともに2000mと距離はぴったり。このレースに実績のないディープ×ナスルーラ系の配合だが、ナスルーラ系を父、または母の父に持つ馬自体はこのレースで結構活躍している。これも押さえておきたい。なお、今年の出走馬ではウインブライトもナスルーラ系を母の父に持つが、この馬は左回りの長い直線だと信用度がガクンと落ちるのでちょっと買いづらい。
とまあ、2つの前哨戦を振り返ってみたが、注目は何といってもアーモンドアイとサートゥルナーリアの対決。ともにケタ違いの素質馬であることは間違いなく、父がロードカナロア、母がGI馬というのも同じ。違うのは年齢、性別、そしてローテーション。年齢は前述の表で出したように5歳馬の成績がいい。逆に3歳馬は過去にバブルガムフェローやシンボリクリスエスが勝っているとはいえ、ここ10年では勝利がない。
性別では牝馬の連対率が25%で牡馬を上回っている。ローテーションだが、安田記念組は2016年にリアルスティールが2着しているが、神戸新聞杯から挑戦した馬は1頭もいない。全てアーモンドアイが有利で、データ上では「一強」となる。
せっかく調べたのでディープインパクト産駒にも触れてみる。今年も特別登録時点で6頭と一大派閥を形成。その中で相性のいい母の父ノーザンダンサー系はカデナとマカヒキ。ただカデナは長い直線向きでなく、マカヒキは最近前に進まないぐらい行きっぷりが悪い。もともとディープ産駒の勝率自体もよくないことから、上記に挙げたアルアイン以外は軽視する。
まとめると、◎アーモンドアイ、○サートゥルナーリアの順。あとは左回り巧者を信じてスワーヴリチャード、主導権を握れそうなアエロリット、ナスルーラの血を持つアルアインを押さえる。競馬の格言に「二強対決の場合、両雄並び立たず」というのがあるが、果たして格言通りになるのか、それとも歴史的な一騎打ちを見せてくれるのか。要注目である。
◎アーモンドアイ
○サートゥルナーリア
▲スワーヴリチャード
△アエロリット
×アルアイン
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《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想や「最終逆転」コーナーを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
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