【菊花賞予想】いつの時代も血統が大切 本命は王道路線の最先着馬

門田光生

2019年菊花賞の本命に推されたヴェロックス

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

秋華賞時の馬場は想像を超える乾き具合

先週末、東日本を中心に台風19号が猛威を振るった。その影響を受けて土、日曜の東京競馬が中止、京都競馬も土曜は不良馬場でスタートし、芝マイルの新馬戦で1分40秒台を記録。その後も12R終了まで雨が降り続き、秋華賞で馬場の回復は困難に思えた。

しかし、日曜はワンランク上がって重馬場からスタート。9Rには稍重になり驚異的な回復を見せた。強風が乾く速度を加速させたのかもしれないが、人工的に手を加えていたとすればもはや神業。

というか、水はけがよすぎる気がする。GIだからといって必ずしも「良馬場」に近づける必要はなく、自然に回復を待つのが道理。必要以上に手を加えると、良馬場を望む馬に恩恵を与えることになり、極端な話「公正競馬」ではなくなる。重馬場で競馬を行うと芝にかなりのダメージを受けるのは分かるが、馬場がよすぎるのもちょっと考えものである。

中心は神戸新聞杯組

今週は菊花賞。菊花賞といえばダンスインザダーク、と答えるファンも少なくない。絶望的と思えた位置取りから差し切ったシーンは、もはや語り草になっている。しかし、その鬼脚の代償として屈腱炎を発症。そのままターフに戻ることはなかった。そのダンスインザダークが使った上がりが33秒8。長距離ではめったにお目にかかれない上がりを使ったものだと見る向きも少なくはなかった。

そして、時は流れて2018年の菊花賞。1000mの通過が62秒台だから超スローというわけではなかったが、勝ち馬を含む5頭が33秒台の足を使った。競走馬のパワーアップ、馬場の高速化、さらにはテレビ馬(勝敗は度外視の大逃げを打って、テレビに長く映っている馬のこと)がいなくなりスローペースが増えたこと。長距離でも速い上がりを使う馬が増えた理由はいろいろ考えられるが、上がり勝負の菊花賞というのはどうも味気なくてよろしくない。

とまあ、過去を懐かしんでも仕方がないので分析へと移る。下記の過去10年表を見れば分かるように、このレースは神戸新聞杯が連対馬を13頭も出して王道となっている。

菊花賞出走馬の前走ⒸSPAIA

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もうひとつのトライアルであるセントライト記念は4頭の連対馬を出しているが率的にはもうひとつ。やはり中心は神戸新聞杯からというのが定石だろう。

信頼できる神戸新聞杯最先着馬

ところで、今年はセントライト記念、神戸新聞杯の勝ち馬がともに出走しない。これはここ10年で一度もなかったケースである。ただ、神戸新聞杯の勝ち馬が菊花賞に出走しないのはこれで3年連続のこと。長距離レースの衰退がよく分かるいい例で、個人的には寂しい限りである。

神戸新聞杯最先着馬の菊花賞成績ⒸSPAIA

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ちなみに神戸新聞杯の勝ち馬が不在でも2着馬は出走している。一昨年のキセキは優勝、昨年のエタリオウは2着と結果を出した。それまでの8年は勝ち馬が全て出走しているが、馬券圏内を外したのは2頭だけ。実績のある神戸新聞杯組だが、そこでの最先着馬はさらに信頼度が増すということになる。

続いて血統。菊花賞といえばひと昔前は「リアルシャダイ」という長距離血統が入っているだけで無条件で狙えた、それぐらい血統が重要視されていたレースだった。

菊花賞好走馬の種牡馬・母の父ⒸSPAIA

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ここ10年の傾向はというと、父系で見ればディープインパクト、ステイゴールド、ダンスインザダーク。この3頭で合計10頭の連対馬を出している。ディープインパクトは母系からステイヤーに出てもおかしくない馬。ステイゴールドは菊花賞馬はもちろん、天皇賞・春を勝った馬もたくさん輩出している。あと、ダンスインザダークだが、自身が菊花賞馬だ。

母の父を見ると、伝説の長距離砲メジロマックイーン、万能サンデーサイレンス、そして馬力とスタミナの長けたブライアンズタイムがランクイン。父も母もサンプルの数にバラつきがあるとはいえ、やはりスタミナ型の血統が活躍。近代の菊花賞でも血統を調べるのは無駄ではないということが分かっただけでも収穫だ。

ヴェロックスの相手探し

今回の絞り込みは以下の通り。

①神戸新聞杯組から軸を見つける
②神戸新聞杯最先着馬には敬意を払う
③血統も大事
となる。

まずは神戸新聞杯の最先着馬ヴェロックス。サートゥルナーリアをマークしていたが、直線での手応えが違い過ぎた。文字通り完敗で仕上がり云々の問題ではない気もするが、3着以下には抜かれる感じはなかった。ただ、今年の神戸新聞杯は二強以外は?というレースレベル。

ヴェロックスの血統だが、父ジャスタウェイは典型的な中距離馬で中距離血統。母は独オークストライアル(芝2000m)を勝った馬だが、クラシックディスタンスの血脈が重ねられていて、近代菊花賞なら十分距離は持つスタミナを有している。軸として文句なしだ。

セントライト記念の方はどうか。こちらもレベル的に高いとはいえず、しかも勝ち馬が出走しない。1枠が2、3着に入ったようにイン有利な競馬だったと思うので、外を回って足を伸ばして来た馬が狙いになる。5着のニシノデイジーと6着のタガノディアマンテがまさにそれ。

ニシノデイジーは祖母の父が二冠馬セイウンスカイ、曾祖母馬がニシノフラワーという西山牧場の結晶といえる母系。タガノディアマンテは母系がキングカメハメハ×トニービンという底力のある血がかけられており、スタミナに不足はない。

といっても両レースのレベル、特にセントライト記念は物足りない気がするので、伏兵台頭の余地も十分ある。菊花賞は2勝クラスを勝って挑戦する馬が多くいるので確率的には高いとはいえないが、馬券に絡んでいる馬が過去10年で6頭いるとなれば検討して損はない。

2勝クラスを勝って菊花賞で馬券に絡んだ馬ⒸSPAIA

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今年も2勝クラスを勝った中で魅力的な馬が何頭かいる。まずはカリボール。内が残る展開を大外ぶん回しで差した前走が強かった。母の父は短距離タイプのサクラバクシンオーだが、これは2015年の菊花賞馬キタサンブラックと同じ。キタサンブラックが例外なのか、それとも近代菊花賞ではサクラバクシンオーのようなスピード血統が入っている方がいいのか。今回で答えが分かるかもしれない。

続いてヒシゲッコウ。これも大外を回って届かないような位置からの差し切り。ここ2走が小回りで勝ったが長く足を使えそうなタイプ。ただ、こちらも血統的に長距離向きとはいえないので頭まではどうか。

最後にホウオウサーベル。阿賀野川特別の勝ち馬は菊花賞で2年連続3着。父がハーツクライ、母系は重厚な欧州血脈が重ねられていて、3頭の中では最も菊花賞向きの血統といえる。

ちなみに、最もスタミナがある血統はといわれれば、今のところ除外対象だが、文句なしにメロディーレーン。350キロに満たない小さな体だが、母系はこれでもかというぐらいにスタミナ血脈がかけられている。現代のスピード競馬において勝利を挙げられただけでも奇跡に近い。この馬格で競走馬になれたのも、そしてもし2勝の身で出走できれば運の強さを物語る。大雨でも降って、一昨年のように3分20秒近く時計がかかるようなら面白いかも。

◎ヴェロックス
○ニシノデイジー
▲タガノディアマンテ
△カリボール
×ホウオウサーベル
×ヒシゲッコウ


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《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想や「最終逆転」コーナーを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。

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