【中山記念】昨年覇者マテンロウスカイの逆襲に注目 実績最上位ソウルラッシュ、4歳シックスペンスの評価は?
勝木淳

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8番人気以内にチャンスあり
春の中山開幕は伝統のGⅡ中山記念。昨年のマイルチャンピオンシップを制してGⅠ馬になったソウルラッシュ、毎日王冠を勝って以来の出走となるシックスペンス、さらには中山金杯を勝ったアルナシームと注目馬がずらり。春のはじまりにふさわしい一戦となりそうだ。
このレースの特徴は時計にある。2000年以降の勝ち時計をみていくと、最速は2004年サクラプレジデントと2021年ヒシイグアスの1:44.9。良馬場での決着時計は速ければ45~46秒台前半が記録されるが、47秒台後半での決着も目立つ。同じ開幕週であっても、時計に開きがある。
小回りの芝1800m戦らしく展開が勝敗を決する競馬であり、ペース差が全体時計につながる。速いから高評価とはいえない。序盤から激しくやり合う年もあれば、1コーナーで隊列がすんなり決まり、中盤まで静かに流れることもある。やってみなければわからない。そんな言葉がしっくりくるのも中山芝1800mだ。
ちなみに、3月はこの舞台で重賞が4つもある。重要なのは展開や流れを読み切ること。枠順など並びをよく見定め、レースごとに変わる優位な位置につけられる馬を見つけるのも攻略の糸口だ。データは過去10年分を使用する。
1番人気は【3-0-0-7】勝率・複勝率ともに30.0%と極端で、半数以上が敗れた。実績馬にとって年明け初戦であり、仕上げ途上のまま、思うような結果を残せない。目標は先だと割り切って伏兵狙いも面白い。
2番人気が【2-2-2-4】(勝率20.0%、複勝率60.0%)とそれなりに走る一方で、3番人気から7番人気まではほぼ互角に戦い、8番人気も【0-2-0-8】複勝率20.0%ある。馬券圏内に入る確率でいえば、1番人気とは差がない。実績馬登場もどこからでも入れる一戦だ。
4歳【4-4-5-17】(勝率13.3%、複勝率43.3%)に5歳【4-4-1-24】(勝率12.1%、複勝率27.3%)と若い世代が優勢だ。
一方、6歳【1-2-2-22】(勝率3.7%、複勝率18.5%)をはじめベテランは良馬場以外で【0-0-0-10】。時計がかかれば出番が回ってきそうだが、実際は逆。ベテランを買う際は「時計がかかれば」という謳い文句に惑わされないようにしよう。
昨年をなぞる臨戦過程のマテンロウスカイ
実績最上位ソウルラッシュは7歳。年齢データでは評価しづらい。そんなデータをあざ笑うかのように走るのか、それともデータ通り4、5歳に屈するのか。もともと休み明けから全開といったタイプではないので、負ける場面も想定しておこう。
危険な実績馬なんて書きながらも、前走GⅠは【5-3-4-24】勝率13.9%、複勝率33.3%なので悪いどころかむしろ好相性。なかでも前走GⅠ連対馬が【3-0-2-2】と結果を残す。一方で、5着以下も【2-3-2-17】複勝率29.2%で前走GⅠは敗退組の巻き返しもある。
さらに、このデータは国内GⅠに限定したもの。前走海外は【1-1-1-8】で、ソウルラッシュの香港マイルは【1-0-1-3】と悪くない。該当する5頭はすべて香港マイルでは5着以下に敗れたという共通点があり、となると2着惜敗のソウルラッシュも当然出番だ。
残るは7歳であることぐらい。6歳秋にGⅠを制しただけに、ガタンと落ちたりはしないだろう。こうなると、軽く扱えない。
次に好成績なのが前走GⅢ【4-5-2-23】(勝率11.8%、複勝率32.4%)で、特に中山金杯が【3-1-1-6】(勝率27.3%、複勝率45.5%)と優秀。やはり同舞台中距離のつながりは強い。3着以内【3-1-1-3】だから素直に好走馬を評価しよう。前走で2000mをこなしたアルナシームはここでも有力だ。
また、前走東京新聞杯5着以内も【1-1-0-0】。昨年覇者マテンロウスカイは今年も東京新聞杯5着から参戦。評価は落とせない。さらに、3着メイショウチタンは逃げて低評価を覆した。ここも内枠から楽に先手をとればおもしろい。
中山金杯とつながりが強い一方で、AJCC組は【0-0-0-10】とさっぱり。間隔が詰まるのも要因だが、それ以上に外回り芝2200mと内回り芝1800mの適性の違いが大きい。
あまり気にしない人も多いが、中山の内外回りは勝負所のレイアウトがまるで違う。コーナーが緩い外回りは3、4コーナー中間地点が直線に近く、スパートしやすい。そこから一転、距離が短く、さらにコーナーも角度がきつい。流れに乗り損ねることで好走できないのではないか。
シックスペンスの毎日王冠は【0-0-0-1】。さすがに秋はじめのGⅡからここというローテはほぼない。使わなかったというより使えなかったといったところだろう。爪に不安を抱える馬で状態面がカギになる。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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