【秋華賞】指数トップのボンドガールが本命候補 穴はオークスで展開苦を粘ったランスオブクイーン

山崎エリカ

2024年秋華賞のPP指数,ⒸSPAIA

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緩みなく流れやすいGⅠ

秋華賞の舞台となる京都・芝2000mの内回りは最初のコーナーまでの距離が約309mと短く、上級条件になると2コーナー過ぎまでハナ争いが続くこともある。一方、最後の直線も約328mと短いため、差し追込馬は3コーナーの下り坂から仕掛けていくことが多い。

2コーナー過ぎまでペースを上げていく先行勢と、最後の短い直線を意識して3コーナーから仕掛ける後方勢。この関係からレースは緩みなく流れやすい。秋華賞も例外ではなく、京都開催の過去10回で極端なスローペースになったのは2012年と2023年の2回だけ。ジェンティルドンナとリバティアイランド、末脚型の二冠馬が出走していた年だ。

ヴィブロスが優勝した2016年もややスローペースではあったが、それ以外の年は平均ペースよりも速く、逃げ馬は2着こそ2回あるものの優勝はゼロである。今年も中団以降の馬が有利と見て予想したい。


能力値1~5位の紹介

2024年秋華賞のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 ボンドガール】
古馬と初対戦のクイーンSで2着。同レースでは1番枠から好スタートを決めたが、そこから位置を下げて控える形を選択。道中は後方最内で脚を溜めた。

3~4角では中目に誘導、スペースを見つけて中団まで進出して直線へ。序盤で好位列まで上がり、ラスト1Fで馬群を捌いてコガネノソラとの差を詰めたが、アタマ差届かなかった。この時は斤量51kgの恩恵はあったものの、コガネノソラと並ぶトップタイの指数を記録している。

前走の紫苑Sは、クイーンSで自己最高指数を記録した後の一戦。疲れもあったようで、レコード決着となる速い馬場で痛恨の出遅れ。後方2列目から最内を距離ロスなく立ち回ったが、4角で前が壁になり、外への誘導も難しく、中目で仕掛けを待たされるロスも受けた。それでも、ラスト1Fで外に出し切ってからはしっかり伸びて3着と善戦した。

昨年6月の新馬戦では、のちのオークス馬チェルヴィニアなどの強豪を破った素質馬。その後はやや順調さを欠き、ようやくたどり着いた大舞台・NHKマイルCでも、最後の直線で最内から先頭を狙ったところをアスコリピチェーノに寄せられて窮屈になり、安全確保のために位置を下げて流して終わるという出来事もあった。

しかし、近走の内容から、ここに来てようやく軌道に乗ったとみる。今回の本命候補だ。

【能力値2位 ステレンボッシュ】
桜花賞1着、オークス2着の実績馬。オークスは12番枠からまずまずのスタートを切り、中団馬群の中目を追走。道中は中団中目で包まれ、我慢を強いられながら3角へ向かう。

3~4角では前が失速して下がり、進路もスペースもない状態となって4角では位置が下がったが、直線序盤で追われて内の進路を確保するとすっと反応。ラスト2F目で2列目から先頭列に上がり、ラスト1Fで抜け出したが、外のチェルヴィニアに捉えられて半馬身差敗れた。

オークスは前の2頭が飛ばし、前後半5F57秒7-61秒4というかなりのハイペースで差し馬有利の展開。また、内が伸びない馬場でもあり、外から差したチェルヴィニアよりも伸びない内から早めに先頭に立ったステレンボッシュのほうが強い内容だった。

デビュー3戦目の赤松賞まではコントロールの難しさを見せながら、それでも連対を外すことがなかった素質の高い馬。阪神JFで壁を作るレースを経験して以降は折り合うことを覚え、レースぶりにも安定感がでてきた。出遅れた桜花賞でも中団中目まで挽回して勝利しているように、幅広い距離をこなせるタイプ。ここもマークを外すことはできず、重い印を打ちたい。

【能力値3位 クイーンズウォーク】
秋華賞トライアルのローズSを優勝した馬。同レースでは2番枠からまずまずのスタート。やや掛かり気味だったが、コントロールして中団内目に控える形をとる。

1角で内がごちゃついたので中目に誘導し、向正面で外に出しながら3角へ。3~4角では中団外目から徐々に進出し、直線でさらに外へ持ち出す。序盤で3列目に上がると、ラスト1Fで前を一気に捉え、1馬身半差で完勝した。

ローズS当日は馬場の内が悪化しており、外が伸びる馬場を上手く外に誘導できた。しかし、逃げた11番人気セキトバイーストが3着に粘る前有利の展開を3~4角の外から早めに仕掛け、末脚の違いを見せつける形で勝利したことは高評価できる。

とはいえ、今回は休養明けで自己最高指数を記録した後の一戦。余力の面で不安があり、評価を下げたい。

【能力値4位 コガネノソラ】
勝ち上がるまでに4戦を要したが、そこから3連勝でスイートピーSを勝利。前走は古馬相手のクイーンSを優勝した。

その前走は12番枠からやや出遅れたが、そこから促して中団の外まで挽回。道中も中団外目で仕掛けを待って3角へ。3~4角で前のキタウイングが仕掛けると、それを追いかけるように4角で同馬の外に誘導し、4番手で直線に向く。

序盤で食らいつき、ラスト1Fではしぶとく伸びて先頭に立つと、外から迫るボンドガールを振り切りアタマ差で勝利した。上述したボンドガールと同様に斤量51kgに恵まれた面はあるが、好指数を記録している。

前走で自己最高指数を記録しているだけに、スイートピーS好走後のオークス時のように疲れが出る危険性もないわけではない。しかし、オークス時と違って今回はローテーションに余裕を持たせており、ある程度疲れが取れている可能性もある。警戒が必要だ。

【能力値5位 クリスマスパレード】
秋華賞トライアル・紫苑Sの勝ち馬。その前走は6番枠からまずまずのスタートを切り、二の脚の速さで先行して逃げたイゾラフェリーチェの外2番手を確保した。

1~2角でややペースが落ち、コントロールしながら3角へ。3~4角では軽く仕掛けて4角出口で先頭に立つと、直線序盤ですっと伸びて3/4差ほど前に出る。ラスト1Fで外からミアネーロにクビ差まで詰め寄られたが、1分56秒6のレコードタイムで勝利した。

3走前のフローラSでは2列目の外を追走し、ラスト1Fで甘くなって4着に敗れている。しかし、前々走で芝よりも負荷が掛かるダートの関東オークスを使ったことでスタミナが強化され、前走では2列目の外から粘り通すことができた。

また、前走のレコードタイムは秋の中山開幕日の高速馬場によるところが大きかったが、決してペースに恵まれたわけでもない。侮れない馬ではあるが、今回は前走で自己最高指数を記録した後の一戦。前走時ほど走れない可能性が高いと見ている。


オークスが好内容だったランスオブクイーン

能力値上位以外では、オークス5着のランスオブクイーンを取り上げたい。

オークスでは大外18番枠からやや出遅れたが、楽に挽回して好位の外を追走。道中は離れた2列目の外で進めて3角へ。3~4角で前が苦しくなって下がってくる状況で、ひとつ外からかわして4角先頭で直線を迎える。

序盤で馬場の中目に誘導して追われたが、そこで外からクイーンズウォークが並びかける。ラスト2Fでも2列目付近を維持していたが、ラスト1Fで甘くなり、クビ+ハナ差の3着争いに敗れた。

しかし、オークスは前へ行った馬には厳しい流れになった。実際、好位から早めに仕掛けて4着に敗れたクイーンズウォークは次走でローズSを優勝。それを考えるとランスオブクイーンの競馬も強い内容だった。

その後は1勝クラスを勝ち、前走・夕月特別は3着。前走は単騎で逃げたタケトンボが8番人気2着と好走したように、ややスローペースのなかでランスオブクイーンは逃げ馬から離れた好位の外を追走。ラスト1Fでは3頭の叩き合いとなるも、内の2頭にハナ+アタマで敗れた。

ただし、その前走が行われた神戸新聞杯当日の中京芝は中>内>外の順で伸びる馬場。そのなかを終始外々から進め、最後の直線も外を選択したことも敗因のひとつだ。前走では全能力を出し切ったような内容ではなかったことから、今回は前進が期待できる。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ボンドガールの前走指数「-20」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.0秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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