【2歳馬ジャッジ】ニタモノドウシが現2歳世代の芝部門最高指数を更新 サラコスティは好内容で勝利
山崎エリカ
ⒸSPAIA
8月3週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は札幌のクローバー賞で現2歳世代の芝部門最高指数を更新して勝利したニタモノドウシ、中京で9馬身差の楽勝をしてみせたサラコスティなどが出た、8月17日、18日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
8月17日(土) 新潟5R 優勝馬 エコロジーク 指数-6 評価A
4番枠からまずまずのスタートだったが、二の脚が速くあっさり先頭に立った。コントロールしながらマイペースの逃げ。3角でのリードは1馬身、4角で外から2列目外のオカゲサンが並びかけてきたが、持ったまま。直線序盤で軽く仕掛けると後続を引き離して2馬身半差。残り100mで鞍上のC.ルメール騎手が後ろを振り返る余裕があり、結果5馬身差の圧勝だった。
このレースは新馬戦としては指数も優秀。ラスト2Fが11秒1-11秒5で見た目ほど余裕があったというわけではないだろうが、強かった。本馬も今夏の新潟新馬戦をジャックし続けている森秀行厩舎でOBSマーチセールの出身馬だ。
かつて夏の新潟を森厩舎の馬が荒らしまくったのは30年も前のことになる。当時は競馬新聞のトラックマンたちが関東馬に重い印を打ち、結果は関西馬が高確率で勝利する。東西格差が1クラス以上あった時代。一つの必勝パターンを見つけると徹底してくるのが森厩舎だ。おそらく森調教師はOBSマーチセールの有効な活用法を独自視点で見つけたのだろう。来年の2歳世代もかなり期待できるはずだ。
8月17日(土) 新潟6R 優勝馬 ジャナドリア 指数-7(ダート) 評価B
13番枠から五分のスタートを切って先行策。道中は好位直後の外目を追走した。3~4角で2~3頭分外から進出して直線へ。そのまま先頭に並びかけ直線序盤でクビ差ほど前に出た。しかし、内のピカピカサンダーが差し返そうとしてなかなか差を広げられず、半馬身差の勝利となった。
本馬は15頭立ての今回で単勝オッズ1.3倍と圧倒的な人気。きょうだいにダートの活躍馬がいる良血馬で鞍上がC.ルメール騎手ということもあり、ここまでの支持を集めたのだろう。確かにフットワークも他の馬よりも良く見えた。
結果的に2着馬に半馬身差、3着馬に2馬身差だったが、4着以下はバラバラになっての入線。上がり3Fタイム38秒2もなかなか速い。着差がつかなかったのは本馬が弱かったわけではなく、2着ピカピカサンダーと3着ルヴァレドクールがなかなか良い指数を記録したからだ。上位3頭はなかなかの活躍を見せてくれそうだ。
8月18日(日) 新潟2R 優勝馬 シルバーレイン 指数-9 評価AA
大外10番枠から好スタートを決めたが、内の馬を行かせて後方に下げた。道中は後方2番手からリズム重視で折り合いに専念する形。最後の直線を迎えてもまだ後方2番手だったが、残り500m辺りで大外に誘導されると馬なりで徐々に前との差を詰めた。残り300mで母ノームコア譲りの目立つ芦毛の馬体が弾み、ラスト1F地点でもう先頭。そこから一気に突き抜け5馬身差で圧勝した。
この馬はヴィクトリアマイル、香港Cを優勝したノームコアの仔ということもあり、前走の東京新馬戦では1番人気に支持された。しかし、結果は3着。そのときは2列目の中目を追走していたが、頭を持ち上げるほど折り合いを欠いた影響もあり、最後に伸び切れなかった。今回で脚を溜めたのは前走を踏まえてだろう。
今回の指数は1クラス上で勝ち負けとなるもの。母ノームコアも一瞬のトップスピードの速さではなく、長く良い脚を使えることが長所の馬だった。距離が延びてさらに良さが出そうな本馬。新馬戦を不向きな芝1600mでデビューさせたことも今後の上昇を加速させそうだ。重賞戦線で大きな活躍が期待できる。
8月17日(土) 中京6R クァンタムウェーブ 指数-12(ダート) 評価A
6番枠からモタついて進みが悪かったが、すぐに最内に切れ込んで位置を上げていった。1角手前で外から被されると、キックバックを嫌がり大きく頭を持ち上げる場面もあった。そこで好位直後の中目につけたが、そこからもやや頭を持ち上げながら追走していた。
しかし、向正面序盤で外に出るとそこからはスムーズ。3~4角で一気に逃げ馬の外2番手まで上がって直線へ。序盤でしぶとく伸びて残り250mで先頭に立ち、そこで内へ少し斜行したがすぐに修正。ラスト1Fでは外に斜行していたが、あっさり後続を引き離して3馬身半差で完勝した。
レースぶりに幼さはあったが、ここでは2着馬に3馬身半差、3、4着馬にはさらに7馬身をつけており、1クラス上の指数を記録。ダートでなかなかの活躍が期待できそうだ。
8月18日(日) 中京3R 優勝馬 サラコスティ 指数-12 評価AA
1番枠から好スタートを決め枠なりに楽に先手を取った。そこからコントロールしてマイペースの逃げ。3角でのリードは1馬身、4角手前の残り3F地点でやや気合いを入れられると徐々に後続を突き放していった。直線序盤で2馬身半差、ラスト1Fでさらに差を広げ、9馬身差で圧勝した。
本馬は前走の6月京都芝1800mの新馬戦では2着。勝利したエリキングとともに出遅れたが、重い芝の京都としてはかなり優秀な上がり3Fタイムでの2着。ラスト2Fの数字も馬場状態を考えれば良いと推測され、かなり優秀な内容だった。今回は勝利するのは当然として、どのくらいの指数で勝利するかに注目していた。
今回は鞍上が馬の首を横にして構えていたこともあるが、スタートが改善されていた。やはりフットワークが美しく良い馬だ。そしてここで記録した指数は、8月新潟の未勝利戦を圧勝したアルレッキーノと並び、この時点では現2歳世代芝部門トップタイの数字を記録した。
このレースにはエリキングが勝った新馬戦で3着だったシークも出走していたが、4着。このことからも前走の新馬戦は出遅れた不利が大きく、タフな馬場のスローペースで最後に鋭い瞬発力を使ったことに価値があったことがわかる。
こうなると勝利したエリキングも相当強いことが推測される。同馬とサラコスティは今後の重賞戦線で大活躍する馬になるのだろう。
8月17日(土) 札幌1R 優勝馬 ショウナンサムデイ 指数-6 評価A
今回は6番枠からまずまずのスタートだったが、前走でかなり積極的に出していったこともあり、行きっぷり良く先行。外から前を主張する馬を行かせて2列目の外を追走した。3~4角の半ばで動いて前2頭に並びかけ、直線序盤で先頭。そこからしっかり伸びて2馬身半差で完勝した。
本馬の母は2015年のジャパンCを優勝したショウナンパンドラ。その子供たちには大きな期待が寄せられたが、ここまで走る産駒は出ていない。本馬が前走の新馬戦で1番人気に支持されなかったのは、そんな理由もあったのかもしれない。
前走の新馬戦は五分のスタートから気合いをつけてハナ奪取したが、3角手前で外の馬に少し寄られたところでズルっと後退。そんな不利がありながらも最後まであきらめずに3着に再浮上した。新馬戦の内容からこれまでのショウナンパンドラの子供たちより強いかもと思わせた。
今回の上がり3Fタイム34秒5はこの週の札幌芝中距離戦としては優秀。ラスト2F11秒3-11秒2の数字が示す通り、最後までしっかり伸び続けていた。母ショウナンパンドラは使われて強くなっていった馬だけに、娘の本馬にも同じような成長曲線を期待したくなる。
6月17日(土) 札幌5R 優勝馬 メリディアンスター 指数-5 評価A
2番枠からトップスタートを決めて自然と逃げる形。アーバンガールが掛かり気味に絡んできたが、自ら緩みないペースを刻んで2番手以下を離していった。3角でのリードは1馬身半ほど。4角では最内からマクッて2番手に上がったワールドキッスに対して2馬身くらいの差。直線序盤で3馬身まで差を広げ、ラスト1Fでは独走。4馬身差で完勝した。
走破タイムは2歳レコード。本馬は今回の走りで能力の高い馬であることは十分に証明した。ただし、ラスト2Fは11秒4-12秒1と急失速。余裕があったとは考えにくい。
今回の鞍上は大井の笹川翼騎手。短期免許の外国人騎手も同様だが、やはりチャンスが一回きりとなると、その一戦で完全燃焼の走りをさせてしまいがちだ。今後は疲れをとりながら大事に育ててほしい。
6月18日(日) 札幌5R 優勝馬 ショウナンバルドル 指数-2 評価A
ゲート内の体勢が悪く8番枠から出遅れ。そこから好位直後の外目まで上がっていく形。フワフワと走っていたが、向正面で気合いをつけられて一気に押し上げていった。前のナンヨーエンペラーもそれに抵抗して押し上げて先頭。本馬は2番手につけ、そこでまた抑えて折り合いをつけた。
しかし、3~4角で外から、序盤は先頭だったグランカッサとそれについて行く形で外から上がったカミノレアルがまた並びかけてきた。すると本馬はそれに抵抗して先頭で直線へ。直線では外から差す同馬が明らかに態勢有利だったが、本馬はしぶとく踏ん張って最後まで差を詰めさせず、1馬身差で勝利した。
新馬戦とは思えないほど出入りの激しい競馬。上がりタイムも指数も特に優秀というわけではないが、出遅れて途中で何度もムダ脚を使いながら、最後までへこたれなかった内容は高評価できる。次走で大きく変わる可能性がある内容だっただけに、今後の警戒が必要だ。
8月18日(日) 札幌8R 優勝馬 ニタモノドウシ 指数-13 評価AA
7番枠から五分のスタート。すぐに2角があり内の先行馬の出方を窺いながら好位の外を確保。向正面ではコントロールされながらミリオンローズをマークしながら5番手で3角へ。3~4角では我慢させ、4角で同馬の後ろを走って出口で外へ誘導、2列目で直線に向いた。直線序盤ですっと先に追われたミリオンローズのクビ差ほど前に出て先頭に立つと、ラスト1Fで抜け出して2馬身差で完勝した。
2着ミリオンローズは4番枠から五分のスタートを切り、二の脚ですっと先行。しかし、内2頭の先行争いが激しく2列目の外へ控えた。そこで掛かりコントロールにやや苦労する場面はあったが、向正面半ばでは折り合いもついていた。4角で仕掛けながら2番手に上がり、早めに仕掛けていく形で本馬の標的にされる競馬だった。
ミリオンローズは前走6月東京の新馬戦で好位の最内から早めに抜け出す好内容で勝利した馬。倒した相手が今年の2歳牝馬クラシック戦線で主役を狙う強豪揃いだった。対して勝利したニタモノドウシは前走6月福島新馬戦では、芝1200m戦ながら大きく出遅れたが、最後の直線では鋭く伸びて、素晴らしい瞬発力を感じさせる勝利だった。
今回の1、2着馬は他馬とは力差があり、普通なら一騎打ち。それでも最後はミリオンローズが勝利する可能性が高いと見ていたが、勝ったのはニタモノドウシ。この時点で現2歳世代芝部門指数最高値を記録した。
クローバー賞で同世代指数最高値を記録した馬と言えば、ラブリイユアアイズを思い出す。優秀な持ち指数がありながら世間の評価が上がらず、阪神JFでは8番人気で2着となった馬だ。
ニタモノドウシも走りは派手だが血統面でどこか地味な印象を受ける馬で、ラブリイユアアイズとどこか似た感じがする。おそらくこのタイプは1回負ければ人気が急落するはず。しかし実力は確かで大舞台で人気薄の激走を期待したくなる馬だ。
またミリオンローズも負けはしたがしっかりとした指数で走っている。馬体重の大幅増で道中折り合いを欠く場面もあったことから、能力を出し切っての敗戦ではないだろう。近い内に牝馬重賞で穴を開けてくれそうだ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ニタモノドウシの指数「-13」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.3秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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