【2歳馬ジャッジ】エンブロイダリーがGⅠ好走を期待させる好指数V ファイアンクランツは古馬重賞級の上がりを記録
山崎エリカ
ⒸSPAIA
7月4週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は高指数を記録したエンブロイダリーやクイーンSの上がり最速馬ボンドガールに匹敵する上がりを出したファイアンクランツなどが出た、7月27日、28日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
7月27日(土)新潟1R 優勝馬 エンブロイダリー 指数-10 評価AAA
6頭立ての未勝利戦。3番枠からアオリ気味のスタートだったが、軽く促すとスピードの違いでハナに立った。道中はコントロールしながらマイペースの逃げ。3~4角で後続が上がってくるのを待って直線へ向いた。序盤で他馬が懸命に追うなかで、まだ持ったまま。ラスト2Fで軽く仕掛けると悠々と抜け出して後続に3馬身差。ラスト1Fでさらに差を広げて7馬身差で圧勝した。
今回の出走馬の前走時における指数を比較するとエンブロイダリーが飛び抜けていた。前走の6月東京新馬戦では、最後の直線で1着馬ミリオンローズが独走体勢だったところに2着エンブロイダリーと3着クライスレリアーナが猛然と差を詰めてゴール。上位3頭がかなり強いと感じる一戦だった。走破タイムが平凡だったので疲れが残りにくく、上位3頭は今後かなり期待できると見ていた。
今回のエンブロイダリーの単勝オッズは1.1倍、どのように勝つかが注目されたレースだったが、今回も全能力を出し切るような内容ではなく、まだまだ奥を感じさせるものだった。
例年、この時期の芝中距離・未勝利戦で1クラス上の好指数勝ちする馬が出現するが、それらのほとんどは後の重賞好走馬、GⅠ好走馬となる。エンブロイダリーも今後重賞を獲る、あるいはGⅠで好走する馬になる可能性が高い。それと同時に前走の東京新馬戦での上位3頭への期待はかなり高いものとなった。
7月27日(土)新潟2R 優勝馬 ジャスパーディビネ 指数-1 評価B
1番枠から好スタートを決め、押して二の脚でハナを主張。外の2頭が速く、先頭を取り切るのに時間が掛かったが、前半3F付近で逃げる形に持ち込めた。3~4角ではやや外に張り気味だったが、直線を向くと後続を引き離しにかかった。ラスト2F目で追われて2番手のカロローザに2馬身差。ラスト1Fでも同馬に食い下がられ、1馬身差まで詰められたが、逃げ切ることができた。
このレースは4着馬に7馬身以上の差を付けており、なかなかインパクトがある勝ちっぷりではあった。森秀行厩舎の馬だけに今後は勝ったり負けたりしながら、後々にはかなり上のクラスまで行くのだろう。また、同馬はOBSマーチセール(米国)で購入された馬という点でも面白い。日本競馬をさらに活気づかせてほしい。
7月27日(土)新潟3R 優勝馬 エコロアゼル 指数-4(ダート) 評価B
3番枠から五分のスタート。芝の部分ではダッシュがつかなかったが、ダートコースに入ると加速して先頭に立った。そこからも緩みないペースで走り、半馬身ほどの差で直線へ。直線序盤は軽く追われて1馬身差。ラスト1Fで追われると一気に後続を引き離して2馬身半差で完勝した。
エコロアゼルもジャスパーディビネと同じく森秀行厩舎の管理馬でOBSマーチセールの出身という変わった毛色の馬である。
7月28日(日)新潟1R 優勝馬 アーリントンロウ 指数-5 評価B
8番枠からトップスタートを決めて、そのまま逃げた。道中、先行各馬が抑えていたが、3F通過33秒9、5F通過57秒4と数字を見るとかなりのペース。3~4角で外からダノンブランニューが並びかけてきたが、それでも仕掛けを我慢して直線へ。直線序盤で追われると後続に1馬身半差。ラスト1Fでもその差を守り切って1馬身3/4差で勝利した。
前走の新馬戦では1番枠からやや出遅れ、促されてもなかなか加速せず、中団最内からの追走となった。4角で外に出されると直線で長く良い脚を使って2着に食い込むという、見どころのある競馬。しかし、デビュー2戦目の今回は前走から一転。トップスタートからの逃げ切りだった。
今回の走破タイム1分20秒6は2歳レコードタイムだが、超高速馬場によるところが大きく、指数は飛び抜けて優秀だったわけではない。むしろ新馬戦時の差し脚の方が印象に残る。差す競馬でもう一段階上の伸びに期待したい。
7月28日(日)新潟2R 優勝馬 スカイブルー 指数-8(ダート) 評価B
大外9番枠からトップスタートを決め、軽く促してハナを主張。楽に先頭に立ったが、息を入れようとしたところでジャスパーソレイユが内からプレッシャーをかけてきた。これにより道中は緩みない流れになった。3~4角で今度は外からジャスパーソレイユが絡み、スカイブルーは半馬身差のリードで直線へ向いた。
逃げるスカイブルーの鞍上はかつて南関東で名を馳せ、中央に移籍してきた戸崎圭太騎手。それを追うジャスパーソレイユの鞍上は大井の笹川翼騎手。この二人による一騎打ちになった。ラスト2Fでスカイブルーは3/4差ほど前に出ていたが、ジャスパーソレイユも食い下がる展開に。最後はスカイブルーが1馬身差で勝利した。
本馬はここまでの2戦が芝で5、5着。今回はデビュー3戦目で初ダート。前走、タフな馬場の小倉で逃げて厳しいペースを経験していたことが最後の粘りに繋がったのだろう。今後も勝ったり負けたりしながら活躍してくれそうだ。
2着のジャスパーソレイユは今回がデビュー戦。こういう変わった使い方をするのは、「やはり」というべきか、森秀行厩舎。こちらも、前日の新馬戦を勝利した2頭と同じくOBSマーチセールの出身だ。前日の2頭よりも好指数の走りだったが、結果は2着。順調にいけば、そう遠くないうちに未勝利を突破し、使われながら上を目指す馬となるだろう。
7月28日(日)新潟3R 優勝馬 ディアナザール 指数-3 評価B
6番枠からトップスタートを切ったが、前を主張する外の馬たちに行かせて好位の内目に控えた。道中で外からオンザムーブが2番手に上がって、道中は3列目の内。3~4角で少しずつ押し上げて2列目の中目から直線に入った。直線序盤で前2頭の外に誘導するとラスト2Fで先頭。ラスト1Fではヨレる場面もあったが、外から迫る2頭を振り切って3/4差で勝利した。
母はデビュー当初から評判が高く、後に京都牝馬S、関屋記念を勝利した名牝ドナウブルー。子供たちの活躍馬が多く、ディアナザールも1番人気と高い評価をされていた。
指数はまずまずといったところ。上がり3Fタイム33秒9。ラスト2Fは11秒2-11秒5。超高速馬場の新潟だったことを考えると、そこまで高くは評価できない。それでも血統馬だけに今後の成長力に期待したい。
7月28日(日)新潟4R 優勝馬 プロクレイア 指数-2 評価B
11番枠からやや出遅れたが、そこから無理をさせずに後方4番手辺りを追走。3角過ぎで外から進出して4角では中団。直線で進路がある外に出て、ラスト2F標手前で軽く仕掛けると1番人気のダンケルドの後ろまで上がった。ダンケルドが追われて先頭に立つと、それを目標に追い出され、最後にしっかりと差し切って3/4差で勝利した。
上がり3Fタイムは33秒8、ラスト2Fは11秒1-11秒7で、ともにまずまず。3着以下には差を付けた着差構成となっているので、その点は高評価できる。使われながら上を目指す馬となりそうだ。
7月27日(土)札幌5R 優勝馬 アルテヴェローチェ 指数-5 評価A
12番枠から五分のスタート。そこから促されて4番手を追走した。押して行ったがスムーズに折り合いはついていた。3、4角で3頭分外を回って先頭列で直線へ。直線序盤で追われるとラスト1Fで先頭に。抜け出したところを、同馬をマークしていたヒシアマンに迫られたが、踏ん張ってクビ差で勝利した。
このレースでは上位2頭が3着以下に5馬身差を付けており、どちらもなかなかの好指数を記録した。当然、今後が楽しみである。
1番人気の本馬はセレクトセールにて9,900万円(税込)で取り引きされた。2番人気は1億780万円のヒシアマン。3番人気が5,280万円のホウオウライダイ。他にもセレクトセール出身馬が多数いる新馬戦だったが、多くは購買価格どおりの人気順となっていた。セリの購買価格が能力に比例することが多くなったと感じさせた新馬戦だった。
7月28日(日)札幌5R 優勝馬 ファイアンクランツ 指数-6 評価AA
5番枠からポンと好スタートを決めたが、そこから無理をさせずに3番手を追走。向正面ではやや掛かり気味だったが、我慢は利いていた。3角過ぎから進出して4角ではもう先頭に立つ強気な競馬。直線序盤では同馬をマークしていたロパシックが迫ってきたが、最後までしっかりと伸びて先頭を守り、1馬身差で勝利した。
ここでは3着馬に5馬身差を付けており強かった。上がり3Fタイムは上位2頭ともに34秒8。この日の札幌は雨の影響で芝は前半が重発表で、後半に向けて馬場が回復していく状況だった。重馬場で上がり3Fタイム34秒8は、メインのクイーンSで鬼脚を見せたボンドガールが34秒4だったことを考えるとかなり評価できる。
ラスト2Fは11秒8-11秒1。以前の計測法であったなら、重の札幌芝中距離でこの数字が出れば、将来のダービー馬当確と言えるものだった。現在は大幅割引とはなってしまうが、それでも重賞級と評価して良いだろう。今回の上位2頭は今後の活躍が楽しみだ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)エンブロイダリーの指数「-10」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.0秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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