【桜花賞】武豊騎手が最多の5勝、スウィープフィートと20年ぶりVを狙う 牝馬三冠初戦の「記録」を振り返る
緒方きしん
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最後方から異次元の末脚を見せたハープスター
いよいよ、3歳クラシックが開幕する。まずは牝馬三冠の初戦、桜花賞。若き牝馬たちの激突はこれまで数々の名勝負を生んできた。昨年覇者のリバティアイランドは牝馬三冠を達成。今年も偉大な先輩に続く馬が現れるだろうか。今回は桜花賞の記録を振り返る。なお、データは1986年以降のものとする。
リバティアイランドが制した昨年の桜花賞は、2番手で進めたコナコーストが2着に粘ったレース。さらに3着はペリファーニア(4番手)、4着はハーパー(6番手)と先行勢の好走が目立った。ところが、勝ち馬のリバティアイランドは4コーナー16番手からの追い込み勝利。まさに力の違いを見せた。
4コーナー16番手から差し切った例はリバティアイランドを含めて4例(アーモンドアイ、マルセリーナ、ブエナビスタ)しかなく、これは1986年以降でも3位タイの記録である。17番手から差し切った馬はジュエラー。こちらはのちのオークス馬シンハライトらを一気に抜き去り、見るものを驚かせる末脚だった。
そして唯一、4コーナー18番手から一気に差し切って勝利したのがハープスターだ。デビューから桜花賞制覇までの5戦全てで上がり最速を記録。2戦目の新潟2歳Sでは2着イスラボニータに3馬身差をつけて勝利をあげた。イスラボニータは上がり3位の33.7だったが、ハープスターは32.5の末脚を繰り出した。
ハープスターは阪神JFこそレッドリヴェールをとらえきれなかったものの、それ以外は全勝というほぼ完璧な戦績で桜花賞を制した。その後、オークスではヌーヴォレコルトの2着に敗れたが、札幌記念ではゴールドシップを撃破。さらに凱旋門賞でも難しいポジションから6着まで追い込む強さ見せた。一体どれほどのポテンシャルを秘めているのか計りかねるほどの名牝だった。
18番手からの桜花賞差し切り勝ちは単独トップであり、その際に記録した上がり32.9も優勝馬では歴代トップタイ。昨年までは単独トップだったが、リバティアイランドが同じ上がりタイムを計測して勝利を収めており、2頭並んでトップとなっている。
また、逆に4コーナー先頭で桜花賞を制したのはグランアレグリア、レッツゴードンキ、シスタートウショウの3頭。最も勝ち馬が多い4コーナー通過ポジションは2番手で6頭(ダンスインザムード、テイエムオーシャン、チアズグレイス、キョウエイマーチ、ベガ、ニシノフラワー)だった。
2着に1.3秒差をつけたマックスビューティ
4コーナー先頭で勝利した馬は、圧勝しているケースが多い。グレード制導入前だと75年のテスコガビーが後続に1.9秒という歴史的大差をつけてゴールを駆け抜けた。1986年以降だとシスタートウショウは0.3秒差で7位タイ、グランアレグリアは0.4秒差で6位、レッツゴードンキは0.7秒差で2位タイである。そもそも、桜花賞の着差上位6頭のうち5頭が4コーナーで先頭もしくは2番手につけていた。
そんななか、最も着差をつけて勝利したのが1987年の勝ち馬マックスビューティだ。道中は4、5番手で進めてそのまま4コーナーを通過するとそこから猛加速。2着のコーセイに8馬身差をつけて圧勝した。そのタイム差はなんと1.3秒。対象期間のなかでは1秒差以上をつけて勝利した唯一の馬である。
そのマックスビューティの鞍上は田原成貴騎手。田原騎手は95、96年にも桜花賞を制して計3勝をあげている。福永祐一騎手やC.ルメール騎手でも2勝ということを踏まえると、桜花賞3勝がいかに優れた記録かわかる。その記録を上回るのは3名。まず4勝をあげているのが安藤勝己騎手と河内洋騎手である。
河内騎手は1986年に名牝メジロラモーヌとともに桜花賞初制覇を達成すると、その2年後には5番人気アラホウトクで2勝目をあげた。さらに2年後にはアグネスフローラ、そのまた2年後にはニシノフラワーで勝利し、なんと『3度にわたり2年おきに桜花賞制覇』という珍しい記録を樹立した。
一方の安藤騎手は2006年のキストゥヘヴンが初勝利。その翌年にダイワスカーレットで連覇を達成すると、さらに2年後にブエナビスタ、その2年後にマルセリーナで勝利し、やはりこちらも『2年おき』がキーワードだった。
その2名をおさえ、桜花賞における最多勝記録を保持しているのが5勝の武豊騎手だ。1989年にシャダイカグラで初勝利をあげると、1993年ベガ、1994年オグリローマン、1998年ファレノプシス、2004年ダンスインザムードで勝利をあげた。
2004年を最後に桜花賞制覇から遠ざかっているものの、2020年にはレシステンシアで2着、2022年にもウォーターナビレラで2着と上位にはきている。今年は有力馬の一角スウィープフィートとコンビを組む武豊騎手。久々の桜花賞制覇となるだろうか。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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