【東京新聞杯】ウインカーネリアンの再度の逃げ切りに期待 穴は内枠サクラトゥジュール

山崎エリカ

2024年東京新聞杯のPP指数,ⒸSPAIA

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中団より前、外よりも内で運べる馬が有利

東京新聞杯の舞台となる東京芝1600mは最初のコーナー(3角)まで約550mあるため、逃げ馬の出方ひとつで展開がガラリと変わることが多い。

過去10年を見ても、2016年は差し馬のスマートレイアー、2017年は先行馬のブラックスピネルが逃げてかなりのスローペースとなり、それらが逃げ切り勝ちを決めた。それ以外は逃げ馬がレースメイクして平均ペース前後で決着しているのがポイントだ。

ただし、東京芝はこの時期でも高速馬場なので、平均ペースで行っても前が崩れにくく、過去10年では中団より前で運んだ馬が8勝している。一昨年はイルーシヴパンサーが追い込んで勝っているが、この時は3~4角で上手く内目を立ち回っており、外からの差しや追い込みで勝ち切るのはなかなか難しいものがある。

今回も昨年同様にウインカーネリアンの逃げが予想されるメンバー構成。前へ行ける馬と内から差せる馬が有利と見て予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

2024年東京新聞杯のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 マスクトディーヴァ】
昨秋のローズSを優勝し、秋華賞でも2着と勢いのある4歳馬。秋華賞は7番枠からまずまずのスタートを切ったが、二の脚はひと息で中団中目から追走した。そこから徐々に位置を下げ、向正面では中団やや後方。ペースが上がらず、3~4角で外の各馬が動くのに対して本馬は中目で包まれ、4角でかなり遅れて外に誘導。直線序盤では中団列だったが、ラスト1Fでグンと伸び、早めに抜け出した勝ち馬リバティアイランドに1馬身差まで迫った。

秋華賞は前半、中盤もペースが上がらず、かなりのスローペースとなった。リバティアイランドは好位の中目から3角で外に出し、4角で仕掛ける完璧な立ち回りだったのに対して、本馬は仕掛けが遅れての敗戦。リバティアイランドが休み明け初戦だったとはいえ、3角で上手く誘導できていれば、もっと際どい決着になっていたはず。現4歳世代はレベルを疑問視されているが、本馬はここで能力値1位、最高値も1位タイと十分に足りる。

ただし、今回は芝2000mで後方からレースをした後の一戦となる。芝1800mの前々走ローズSでも出遅れて押しながら中団という競馬だっただけに、マイル戦のここではテンに置かれてポジションが悪くなる可能性が高い。また、内目の枠で前走同様に包まれる可能性もあるだけに割り引きたい。

【能力値2位 ジャスティンカフェ】
昨秋のマイルCSで3着に入った実績馬。そのマイルCSは5番枠から出遅れたが、軽く促して中団馬群の後ろを追走した。そこからじわっと上がって3角では中団中目。3~4角で前のスペースを詰めて直線序盤で外に誘導しながら追われたが、捌き切れずに中目を突いて2列目まで上がった。ラスト1Fでジリジリ伸びてはいたが、外からナミュールに差され、ソウルラッシュを捉えきれず、クビ+半馬身差だった。

前走は連続開催15日目のタフな馬場。前半3Fが34秒3と速く、4F目で一気に減速する展開のなか、上手く4F目でポジションを挽回している。また馬場の内側が悪化して中~外差し有利の馬場だったが、出遅れたことで上手く中目を通ることができたのも好走要因だ。

本馬は昨年の東京新聞杯で4着。同レースではやや出遅れて、そこから押して行っても置かれて後方からの追走となった。3~4角で最短距離を通ってロスを抑えたが、前を捉えきれずにアタマ+クビ+クビ差に敗れている。ベストは一昨年の毎日王冠2着や昨年のエプソムCで勝ち鞍がある芝1800mで、超高速馬場の芝1600mはやや忙しい。

今回も昨年のこのレースと同様に、超高速馬場でウインカーネリアンの逃げが想定される。キレる脚が使えるタイプでもないので、後方からの競馬となった場合には、勝ち負けまで持ち込むのは難しい。しかし、バテない末脚で堅実に伸びてくるのが長所で、ここも上位争いに加わってくる可能性は高い。掲示板を外す可能性は低いが、馬券圏内に入るかどうかは逃げ馬のレースメイク次第だろう。

【能力値2位 トゥードジボン】
京都芝1600mで2連勝してオープン入りを果たし、前走の京都金杯でも3着と好走した上がり馬。前走は逃げ、先行型が多数の組み合わせで、4番枠から五分のスタート。外のドルチェモア、セッションが早々と内に切れ込んできたので、コントロールして2列目のセッションの外へと出した。前2頭が引き離していくので、やや離れた3番手からの追走となった。

3~4角では最内を通って、スペースを詰め切らずに直線へ。序盤で外に誘導しながら追われると、ラスト2Fで2番手に上がった。ラスト1Fでセッションに並びかけたがアタマ差及ばず、最内からコレペティトールに差されて3着となった。ドルチェモアがぶっ飛ばして、前後半4F45秒3-48秒5というかなりのハイペース。また京都の開幕日らしく、最内を選択した馬が1~3着を占める結果となった。

本馬は3走前の2勝クラス、前々走の3勝クラスともに逃げ切っているが、これはスローペースの上がり勝負に持ち込んでのもの。鞍上は序盤の段階から控える選択をしたが、それは賢明な判断だったと見ている。3番手に控えたことで、3~4角で最短距離を通ることができた。つまり、前走はややハマって自己最高指数を記録したということ。本馬は本質的に後半型で末脚を生かしてこそのタイプと見ており、今回のメンバーを相手に条件戦勝利時のような勝ちにいく競馬だとリスクがある。

【能力値4位 マテンロウスカイ】
昨年5月のオープン競走のメイSで、重賞でも勝ち負けになる指数を記録した馬。同レースでは8番枠からまずまずのスタート。二の脚でドーブネなど内外の各馬を楽に制してハナを主張した。そこからも淡々と緩みないペースで逃げて、3角では2番手以下に4馬身差。3~4角でやや息を入れ、後続の仕掛けを待って2馬身差のリードで直線へ向いた。序盤で後続を離しにかかったが、内から捌いてきたサクラトゥジュールに食らいつかれ、ゴール寸前でクビ差捉えられた。しかし、3着馬には3馬身差をつけており、並のオープンなら楽に勝てていたはずだ。

本馬は前で楽にレースの流れに乗ってこその馬。前走のリゲルSでは外のアナゴサンを行かせて2列目の外を追走、3~4角で2番手に上がり、直線半ばで堂々と先頭に立って勝利した。3走前のケフェウスSで9着に敗れたことなどから、芝2000mよりも芝1600mのほうがよく、今回のメンバーなら前走のように2列目を狙っていけるはず。ここは警戒したい。

【能力値5位 ウインカーネリアン】
昨年の東京新聞杯で重賞2勝目を挙げた実績馬。その東京新聞杯は2番枠からやや出遅れたが、促されると二の脚でスッとハナを主張した。外からファルコニアが競りかけてきたため淡々としたペースを刻み、3~4角でもペースを落とすことなく半馬身のリードで直線へ。ここでもファルコニアが食らいついてきたが、ラスト2Fで振り切って2馬身差までリードを広げた。ラスト1Fではさすがに甘くなったが、それでもナミュールらの追撃を振り切った。

前走のBCマイルはまずまずのスタートから押してスッとハナを主張すると、外から絡まれてもハナを譲らず、ぶっ飛ばしていく形。いかにもアメリカンな競馬で、直線序盤で早々と手応えを失い、11着に敗れた。前走の前半2Fは22秒16。日本の計測方法なら21秒16くらいのテンの速さなので、ここは楽にハナを切れるはず。昨年の東京新聞杯同様に超高速馬場を利して、淡々としたペースを刻んでの逃げ切りに期待する。今回の本命候補だ。

穴馬は昨年のメイSの勝ち馬サクラトゥジュール

一昨年12月のディセンバーS、昨年1月のニューイヤーSと、リステッド競走で小差の2着と善戦しながら、なかなか勝ち切れなかったが、休養明けとなった3走前のメイSでようやく勝利した。

そのメイSは2番枠からまずまずのスタートを切り、外の各馬を行かせて3列目の最内を追走。道中は行きたがっていたが我慢させ、3~4角の最内から直線で逃げるマテンロウスカイにじわじわ詰めより、最後にクビ差かわしてゴールイン。能力値4位の項目でも触れているように、このレースでは重賞で勝ち負けになる指数を記録している。

前走の中山金杯は前々走の関屋記念から2Fの距離延長を意識し、ゆっくり出して中団で控えていったが、前半のペースが上がらず、行きたがってかなり折り合いを欠く競馬になった。前有利の展開で後方に下がり、3角手前までスムーズさを欠く競馬では本来の能力を出し切れなかった。今回はマイル戦。距離適性はともかく、折り合いの観点からは芝2000mよりもこの距離のほうがやれるはず。1番枠から上手く内目を立ち回っての一発に期待したい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)マスクトディーヴァの前走指数「-22」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.2秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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