【ステイヤーズS】年齢や格より「適性」が問われる舞台 6歳シュヴァリエローズ、格上挑戦フルールもチャンスあり
勝木淳
ⒸSPAIA
適性がカギを握る舞台
いよいよ暮れの中山開催がはじまる。12月は「餅つき競馬」と呼ばれ、年末に向けて出馬ラッシュが発生し、フルゲートで馬券が荒れるとされ穴党を喜ばせてきた。
昨今は年内に勝利を上積みしようという意識は減り、管理馬の体調を優先させるようになったが、冬の到来とともに体調管理が難しくなる季節でもあり、思わぬ波乱は起こり得る。
12月開催といっても、開幕初日は11月末日。今年はちょっとJRAのカレンダーが早い。ステイヤーズSは条件的にフルゲートにはなりにくい。スタートは芝1800mと2000mの中間地点で、内回りを約2周。急坂を3度も越えるコースだ。
スタミナを問う舞台ではあるが、それ以上に中山内回りの急なコーナーを8回も通過するため、小回り適性も問う。距離よりもクルクル回るような競馬への適性がカギを握る舞台でもある。データは過去10年分を使用する。
1番人気は【4-1-2-3】勝率40.0%、複勝率70.0%と強力。といっても4勝のうち3勝はアルバートの3連覇で、一概にもいえない。21年以降は3連続着外。適性が如実に結果に出る長距離戦だけに、近況成績が中距離でよかったりする場合は疑ってみるのも手か。
3番人気【2-1-2-5】勝率20.0%、複勝率50.0%以下、なんとなく大きな差はない。6~8番人気が4勝しており、距離や内回り適性といった成績以上にハマるかどうかが重要なレースだ。
古い話だが、かつて3歳テイエムオペラオーが菊花賞2着後にここに駒を進め、2着に敗れた。次走の有馬記念は3着。やはり3000mを越える距離には独特な世界がある。
近年は3歳の参戦はほぼなく、4歳【2-3-2-9】勝率12.5%、複勝率43.8%が目立つ。4歳牝馬フルールは古都S3着。格上挑戦だが距離は問題ない。2走前はオープン2着。適性さえハマれば一発があってもいい。
6歳が【4-2-3-24】勝率12.1%、複勝率27.3%で、5歳【3-2-4-40】勝率6.1%、複勝率18.4%よりいい。5歳は出走数が多く数字を額面通り受け取れないが、長距離となればスピードは問われない。6歳馬も活躍できる舞台だ。まして京都大賞典を勝ったシュヴァリエローズは今が充実期。距離をこなせるなら楽しめる。
なんだかんだと決め手は大事
7歳からはアイアンバローズが連覇を目指す。昨年は好データの6歳、今年は【1-1-1-18】勝率4.8%、複勝率14.3%の7歳。ひとつ年をとったことでどう変わるか。
クラス別ではGⅡ【5-5-7-46】勝率7.9%、複勝率27.0%に対し、OP/L【2-1-1-22】勝率7.7%、複勝率15.4%、3勝クラス【2-3-1-23】勝率6.9%、複勝率20.7%で格は気にしなくていい。繰り返すが、あくまで適性を重視して考えるべきだ。
前走GⅡではアルゼンチン共和国杯が【4-2-4-31】勝率9.8%、複勝率24.4%と主要ローテになる。4着以内【2-0-3-1】、6着以下【2-2-1-28】。好走が条件も、やはり舞台替わりでの巻き返しもみられる。
アルゼンチン共和国杯6着以下の馬のうち、9番人気以内だった馬は【2-2-1-8】、10番人気以下【0-0-0-20】で前者なら通用する。7着メイショウブレゲは9番人気、16着ミクソロジーは7番人気だった。どちらも買える材料はある。
前走京都大賞典は【1-3-2-9】勝率6.7%、複勝率40.0%。1~3着が該当なし、6着以下が【1-3-2-7】と大半を占め、勝ったシュヴァリエローズはデータでは判断しづらい。
古都Sは【1-2-0-5】。その距離が3000mだった21~23年は【1-1-0-3】なので悪くはない。ただ、阪神の古都Sが【1-1-0-2】で急坂適性がデータを押し上げている。適性は距離だけではなく、安易に飛びつけない。
確かに長距離戦はスタミナを問う。だが、スローペース濃厚の舞台で、中山といえども最後は決め手の差が勝敗をわける。
ステイヤーズSで上がり最速を記録すると【6-2-1-2】勝率54.5%、複勝率81.8%と圧倒的。決め手の有無、それも長距離戦での決め手の有無は判断材料になる。後半1000m勝負の舞台、それもラスト600mが結果を左右する。この舞台で上がり最速を記録しそうな馬はどれか。そういった角度から考えてもいい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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