【2歳馬ジャッジ】2023年の2歳戦総復習(3) ダート路線のトップは全日本2歳優駿勝ちフォーエバーヤング

山崎エリカ

2023年2歳ダート路線のPP指数アイキャッチ,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

2023年2歳戦振り返り第三弾 ダート路線

昨年6月から2歳戦の指数と評価を掲載してきた「2歳馬ジャッジ」。2023年の2歳戦を路線ごとにPP指数ランキングで振り返っていく。今週は振り返りの第三弾「ダート路線」をお送りする。

2歳ダート路線 PP指数ランキング(2023年12月31日まで)

1位 フォーエバーヤング 指数-33 全日本2歳優駿・1着
2位 ミッキーファイト 指数-25 1勝クラス・1着
3位 サンライズジパング 指数-22 JBC2歳優駿・2着
4位 イーグルノワール 指数-20 兵庫ジュニアGP・1着
4位 サトノフェニックス 指数-20 兵庫ジュニアGP・2着
6位 エコロガイア 指数-19 1勝クラス・1着
7位 ライジンマル 指数-17 プラタナス賞・2着
7位 ラヴオントップ 指数-17 未勝利戦・1着
7位 ブルーサン 指数-17 1勝クラス・2着
7位 グランオルカ 指数-17 1勝クラス・1着

1位 フォーエバーヤング
10月京都ダ1800mの新馬戦は好位の内目で包まれ、最後の直線で前が壁だったが、馬の間が開くと一瞬で抜け出し4馬身差で圧勝。ラスト2Fは12秒8-12秒2と急加速。文句なしの勝ちっぷりでかなり高い評価をした馬。JBC2歳優駿ではスタミナ面で優位に立ちやすい、キャリアを積んだ地方馬たちにいきなり通用するのか懸念もあったが、それを軽く吹き飛ばし、前走で初ダートの未勝利戦を圧勝していたサンライズジパングを最後の直線であっさり差し切った。2着サンライズジパングに1馬身半差、3着以下に9馬身半差をつけ、この時点で古馬3勝クラス勝ちレベルの世代最高指数を記録した。

続く全日本2歳優駿は2番手外と今までよりも前の位置を取っていく形。3角ではもう先頭に立つ強気な競馬をしながら、兵庫ジュニアGPの勝ち馬イーグルノワールを7馬身突き放す圧勝だった。そして、ここでは何と古馬GⅠ通用レベルの指数を2歳暮れの時点で記録した。前走のJBC2歳優駿はハイレベル決着だったため、2着馬サンライズジパングは次走のカトレアSでは疲れが残り、凡走した。一方、フォーエバーヤングは疲れどころかさらなる上昇をみせ、まだまだ余裕がありそうだ。

2歳時に古馬GⅠ通用レベルの指数を記録した馬と言えばフラムドパシオンを思い出す。2005年のデビュー4戦目、初ダートだった中山1800mの500万下で2着に2.4秒の大差をつけて圧勝した馬だ。その後はダートでどこまで強くなるのかと思われたが、UAEダービーではディスクリートキャットの3着に敗れた。当時の鞍上である武豊騎手がレース後、「この馬でも勝てないのか」とつぶやいたのが強く記憶に残っている。フォーエバーヤングは今後海外遠征が予定されているようだ。無事なら最大目標になるであろうケンタッキーダービー優勝を期待したくなる。

2位 ミッキーファイト
10月東京ダ1600mの新馬戦は大出遅れ。走破タイムが速くなる不良馬場での大出遅れは大きな不利。道中で中団馬群の先頭まで挽回したが、最後の直線では前も止まらず、ラスト2F地点でも先頭と7馬身ほどの差。とても届きそうな状況だったが、最後の最後にフットワークの回転が上がり、驚きの末脚でクビ差の差しきり勝ち。インパクト十分の走りだった。

次戦の12月1勝クラスでも出遅れたが、東京よりも馬場がタフな中山ダ1800mの良馬場。外枠だったこともあり、1角までには楽に好位に取りつくことができた。最後の直線では先頭のブルーサンの脚色も衰えていなかったが、容赦なく交わして5馬身差で圧勝した。このレースでは3着馬に9馬身差をつけており、古馬3勝クラス勝ちレベルの指数を記録した。

ミッキーファイトはこれで2戦2勝。レースぶりは新馬戦から内容が良化しており、着実な成長を感じた。フォーエバーヤング不在の国内なら、指数は現3歳世代トップとなる。次戦は雲取賞かヒヤシンスSを予定しているようだが、今年の国内3歳ダート三冠レースで好走がかなり期待できる存在だ。

3位 サンライズジパング
6月東京の芝新馬戦はダノンエアズロックの4着に敗れた。そこから3ヵ月半休ませた9月阪神のダ1800mの未勝利戦は、最内枠から1角で外に張りそうになるのを抑えて中団最内を追走。枠なりで3角では2列目に進出し、4角で外に誘導しようとしたところで外に膨れノイヤーヘルトと接触した。しかし、同馬が壁になったことでそこまで大きく膨らむことなく、先頭列に並びかけ、4馬身差で圧勝した。

次走のJBC2歳優駿では、外枠から速い流れを好位外で追走。3角から仕掛けたパッションクライを追いかけて潰しにいく堂々の競馬。最後は相手が悪く2着に敗れたが、3着馬に8馬身差と決定的な差をつけ、好指数を記録しての2着だった。次戦のカトレアSでは疲れが残ったようで15着と大敗した。

おそらくカトレアSで大敗したことで、中央馬が3頭しか出走できない羽田盃TR・ブルーバードCの除外がほぼ確定となり、次走でホープフルSの出走を選択したと推測されるが、嬉しい誤算(?)。芝路線に転じてホープフルS3着、若駒S1着と賞金も積めた。今後芝で崩れて再度ダート路線に戻ってくるようなら、かなりの警戒をする必要がある。

4位 イーグルノワール
6月阪神の芝新馬戦は4着に敗れたが、次走9月小倉では初ダートの1700m戦に出走。速い流れを2列目の最内で進めて、ラスト2F13秒4-13秒0となかなかの好内容で後続馬たちにしっかりと差をつけた。次戦は強敵が揃ったプラタナス賞に出走。外枠からトップスタートを決めて好位の外に控え、最後の直線では逃げ粘るライジンマルを目標に、追うものの強みもあって差し切りクビ差で勝利。3着馬には4馬身差をつけて好指数を記録。この時点で後のダートでの活躍は保証された。

次走の兵庫ジュニアGPでは7番枠で外の2頭が速かったが、スムーズに外目に誘導し、2列目の外を追走。3角手前で前2頭に並びかけ、外から動いてきたサトノフェニックスと併走で先頭に進出して直線へ。直線序盤で同馬に前に出られたが、差し返してハナ差で勝利した。このレースでは3着馬に5馬身差をつけており、前走からさらに指数アップ。全日本2歳優駿では序盤でフォーエバーヤングの外に出し、同馬を負かしにいく競馬。しかし最後は止まり、指数ダウンも内容優秀な2着だった。今後も3歳ダート路線で活躍必至だ。

4位 サトノフェニックス
6月阪神ダ1200mの新馬戦は好位の内から4角で中目に出され、そこからしっかり長くいい脚を使って2着馬に4馬身、3着馬に7馬身の差をつけて圧勝。ラスト2Fも12秒4-12秒5とほぼ減速せず、好内容の走りで高評価した。次戦の9月阪神のヤマボウシ賞では当欄で高評価したナスティウェザー、ラムジェットとの対決となったが、見事に勝利し2戦2勝とした。

そして兵庫ジュニアGPでは好位外のイーグルノワールを徹底マークで乗り、3角手前で動いた同馬の外から並びかけ、直線序盤で一旦は先頭。最後に同馬に差し返されハナ差の2着に敗れた。

その次走の全日本2歳優駿では5着。出遅れて内の馬と接触して後手を踏み、中団中目から4角で押し上げるロスはあったが、最後の直線で伸びを欠いたのは距離の影響もあったと言える。それでも世代を代表するダート馬の一頭であることは確か。ここからも勝ったり負けたりしながら、現3歳ダート路線を盛り上げてくれるだろう。

6位 エコロガイア
6月阪神ダ1200mの新馬戦で5着した後、2戦目から芝を使われ2、3、3着と、ある程度の好成績を残したが、10月の京都で再びダ1200m戦に出走。アオリ気味のスタートで後手を踏んだが、そこから好位の外まで挽回し、3~4角の外から押し上げ4角では先頭に並びかけた。直線序盤で先頭に立つと、後続を引き離す一方。2着に8馬身差をつける圧勝で、1クラス上の指数を記録した。

次走のなでしこ賞では未勝利勝ち時ほどの指数では走れず4着だったが、12月阪神の1勝クラスでは、さらに1クラス上の優秀な指数を記録。ここではトップスタートを決めて行きたがるのを少しなだめながら、逃げたラヴオントップの外2番手を追走。3~4角でも食らいつき、直線では同馬との一騎打ちを制した。ラヴオントップとは3/4差だったが、3着馬に6馬身以上の差をつけており、完勝だった。

続くダ1800mのブルーバードCは、ダ1400mのなでしこ賞で4着だったことや距離延長が嫌われたのか、やや人気薄となった。しかし、逃げてクビ差の2着を死守。前走から指数をダウンさせながらも、メンバー中でも指数上位の強さを見せる走りだった。距離にも目途を立て、活躍の幅も広がった。今後が楽しみだ。

7位 ライジンマル
8月新潟ダ1800mの新馬戦を逃げて8馬身差の圧勝。最後までフットワークの回転が落ちず、ラスト2F12秒6-12秒6でまとめた走りは優秀で、かなりの高評価をした。

次走は10月東京のプラタナス賞。自ら緩みないペースを刻み、最後は押し切るかとも思われたが、目標にされた分苦しくなりクビ差2着に惜敗した。それでも3着馬に4馬身差と決定的な差をつけており、好指数を記録した。

現状は機械のような等速のフットワークでキレはそこまでないが、最後まで良い脚を持続できる点が長所。距離が延びた方が良いタイプだけに、プラタナス賞の走りが目一杯というわけではないだろう。今春のダートクラシック路線で大きな活躍が期待できる馬だ。

7位 ラヴオントップ
6月函館芝でデビューして、そこでは4着。その後函館芝で2、2着と善戦した。その後休養し、復帰戦は11月京都で初ダートの一戦。結果は2着馬に1秒8もの大差をつけての圧逃劇だった。ここで記録した指数は古馬2勝クラスで勝ち負けとなるレベル。とにかく強かった。

次戦は12月阪神の1勝クラス、ダート2戦目で前走と同じ1200m戦だった。未勝利勝ち時の走りが高く評価され、単勝オッズ1.2倍の圧倒的な支持を集めたが、目標にされたぶん2着に惜敗。勝ったエコロガイアも強く、悲観する内容ではなかった。初ダートの一戦で古馬2勝クラスの指数を記録した素質馬であり、今後も着実な成長が期待できる。ダート短距離路線でかなり活躍する馬となるだろう。

7位 ブルーサン
デビューから3戦は芝を使われ、8、7、5着。デビュー4戦目は10月京都のダ1800m未勝利戦。ここで逃げて2着と前進。このレースは3着馬に7馬身差をつけており、2着だったが好指数だった。次走でもダートを使われ、順当に初勝利。12月中山の1勝クラスでは今回のダート路線PP指数ランキング2位のミッキーファイトの2着に入り、古馬2勝クラスレベルの好指数を記録した。

次戦1月京都の1勝クラスでは、これまでのように逃げられなかったこともあり、1番人気を裏切って5着に敗れた。続く1月京都の1勝クラスでは逃げて1馬身3/4差で快勝。さすが指数上位馬という強さを見せた。今後もダート路線で渋い活躍を見せてくれそうだ。

7位 グランオルカ
9月中山ダ1200mの新馬戦では好スタート、好ダッシュから逃げて2着。苦しい展開になりながらも粘り切った内容はなかなか良かった。次戦は10月新潟の未勝利戦、2番手で流れに乗り、順当に初勝利を収めた。このレースでは3着馬に4馬身1/4差をつけており、なかなか強い内容だった。

驚かされたのは昇級戦の12月中山の1勝クラス。それまでとは違い出遅れてしまったが、押して何とか中団中目の位置をキープ。4角で大外に出されると、豪快に伸びて差し切り勝ち。ラスト2F12秒3-12秒3はなかなか評価できるし、2着馬に2馬身、3着馬には5馬身半差をつけての好指数勝ちとなった。

12月中山の1勝クラスでは、それまでの2戦から大幅に指数を上昇させた。差す競馬をしたことで、秘めていた素質が開花する結果となったようだ。指数面から3歳オープンクラスでも通用するはず。今後も要警戒の存在と言えそうだ。

2023年2歳ダート路線のPP指数ランキング,ⒸSPAIA


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)フォーエバーヤングの指数「-33」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.5秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

《関連記事》
【2歳馬ジャッジ】2023年の2歳戦総復習(1) 牝馬芝路線のトップはホープフルS勝ち馬レガレイラ
【2歳馬ジャッジ】2023年の2歳戦総復習(2) 牡馬芝路線のトップは札幌2歳S圧勝のセットアップ
【2歳馬ジャッジ】JpnⅠ勝ちフォーエバーヤングの対抗馬登場 ミッキーファイトが3勝クラス勝ちレベルの指数で圧勝

おすすめ記事