【2歳馬ジャッジ】2023年の2歳戦総復習(1) 牝馬芝路線のトップはホープフルS勝ち馬レガレイラ
山崎エリカ
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2023年2歳戦振り返り第一弾 牝馬芝路線
昨年6月から2歳戦の指数と評価を掲載してきた「2歳馬ジャッジ」。2023年の2歳戦を路線ごとにPP指数ランキングで振り返っていく。今週は振り返りの第1弾「牝馬芝路線」をお送りする。
2歳牝馬芝路線 PP指数ランキング(2023年12月31日まで)
1位 レガレイラ 指数-16 ホープフルS・1着
2位 アスコリピチェーノ 指数-15 阪神JF・1着
2位 ステレンボッシュ 指数-15 阪神JF・2着
4位 チェルヴィニア 指数-14 アルテミスS・1着
4位 タガノエルピーダ 指数-14 朝日杯FS・3着
6位 コラソンビート 指数-13 京王杯2歳S・1着
6位 キャットファイト 指数-13 アスター賞・1着
6位 バウンシーステップ 指数-13 つわぶき賞・1着
9位 ボンドガール 指数-12 サウジアラビアRC・2着
9位 カルチャーデイ 指数-12 ファンタジーS・1着
9位 ナナオ 指数-12 もみじS・1着
9位 ピューロマジック 指数-12 未勝利戦・1着
1位 レガレイラ
新馬戦は出遅れを挽回し、中団の外から差しきり勝ち。2着は後に札幌2歳Sを圧勝するセットアップだった。レガレイラはこの時点で非凡な才能を見せていた。次戦のアイビーSでもやや出遅れ、東京で高速馬場のスローペースではこれが致命的となり、3着に敗れた。しかし、上がり3Fタイムはメンバー最速タイ、指数は-12を記録しており、負けて強しだった。
そしてデビュー3戦目のホープフルSでは、牝馬ながら牡馬たちに混じってGⅠ勝ち。アイビーSで能力を出し切っていなかったことも良かったのだろう。見事な末脚で記録した指数は先に行われた阪神JFを上回るものだった。現状は出遅れ癖もあることから、距離が短くなることにはやや不安がある。現時点ではオークスの最有力候補と言えるのではないか。
2位 アスコリピチェーノ
6月東京の新馬戦はラスト2F11秒6-11秒6で2馬身半差の追い込み勝ち。この時点で次走勝ちにいく競馬で勝利するようなら、相当上までいく可能性があると見ていたが、次戦の新潟2歳Sでは好位の外を追走と、そのミッションをあっさりクリアして勝利した。ひょっとしたらとんでもない潜在能力の持ち主ではと思っていたが、デビュー3戦目、休養明けながら阪神JFを3戦3勝で優勝したことには驚かされた。
指数上は後に行われたホープフルSのレガレイラ、前年の阪神JFの勝ち馬リバティアイランドよりも下。直前で最有力候補のボンドガールの回避もあったが、本馬の一戦ごとの上昇度合が素晴らしい。無敗であるということは、指数以上の潜在能力を秘めている可能性がある。まだまだ伸びしろがありそうで、上手く照準を合わせることができれば、当然、桜花賞での優勝が狙える。
2位 ステレンボッシュ
7月札幌の新馬戦は1角で逃げ馬の逸走に巻き込まれて外に膨らみ、2番手から中団中目まで下がる大きな不利がありながら、ラスト2F11秒6-11秒6で2着馬に1馬身半差をつけて勝利。とても高い評価をした。続くサフラン賞では内有利の展開を4角で大外を回ってハナ差2着。デビュー3戦目の赤松賞では本馬としては好スタートを決めて控え、コントロールが難しい状態になりながらも勝利した。
阪神JF時はこれまで能力を出し切っておらず、潜在能力はもっと高いはずと見ていたが、やはり2着に好走し、今後も楽しみな馬だ。ただ阪神JFにおいては、休養明けのアスコリピチェーノよりも順調にレースを使われながら能力を出し切れず、エネルギーが溜まっていた本馬の方が有利だったはず。桜花賞に向けては、同馬を逆転するために臨戦過程にひと工夫ほしいところではある。
4位 チェルヴィニア
6月東京のボンドガールが勝利した超ハイレベル新馬戦の2着馬。同レースのラスト2Fは11秒0-11秒1。逃げて目標にされたぶんの2着で、負けて強しだった。その次走の未勝利戦では2番手からの競馬で6馬身差の圧勝。ここでは後に行われた新潟2歳Sと同等の指数を記録した。
そしてデビュー3戦目のアルテミスSではやや出遅れ、好位馬群の後方中目から3~4角で2列目に上がって、上がり3Fタイム最速で優勝。上がり3Fタイムは2着サフィラと0.1秒差だが、同馬よりも前でレースを進めながらも、ラスト1Fで進路を取るのがやや遅れる場面もあった。
アルテミスSはとても強い内容で、まだ能力を出し切った印象もない。順調なら半兄ノッキングポイントのように、古馬混合の重賞でも勝てる馬だろう。同時期比較なら兄よりも指数は上。もちろん今春の牝馬クラシック戦線でも超有力な存在だ。
4位 タガノエルピーダ
10月京都の新馬戦は2列目の最内を追走し、ラスト2F11秒0-11秒0で勝利した馬。当時の京都はやや時計が掛かっており、その上でラスト1F11秒0は怪物級の数字と見ていた。次戦は阪神JFを除外されたこともあり、牡馬に混じって朝日杯FSに出走して3着と好走した。
朝日杯FSではセットアップの内のスペースを拾ったが、そこから急にハナを主張し、同馬に進路をカットされて窮屈になり、位置が下がってしまう形。ペースは差し馬向きの流れで、この3着は着差以上に価値のあるとても強い内容だった。
ただ、新馬戦でラスト1F11秒0を記録し、キャリア2戦目で朝日杯FSに駒を進めたリオンディーズのように優勝できなかったのは、ラスト1F数字の価値が昨秋以降は大幅に落ちてしまったからだろう。昨秋以降とそれ以前では発表されるラップタイムが違っている。昨秋以降の数字を以前の数字と整合性を取ろうとすると、相当な補正が必要となっている。こういったことをしれっとした顔でやってしまうJRAの姿勢には強い憤りを感じる。
本馬の今後についてはデビュー2戦目でGⅠを激走した疲れが不安点。前年もデビュー2戦目にいきなりGⅠ・3着と好走したレイベリングがやはり疲れが残り、共同通信杯で大敗した。同馬はその後すぐに休養させたことで、慢性疲労状態から立ち直りつつある。タガノエルピーダも今後の使い方は要注意と見る。
6位 コラソンビート
6月東京のボンドガールが勝利した新馬戦は離されて3着だった馬。同レースは3列目の中目付近で脚をタメる競馬で敗れたこともあり、次戦6月東京の未勝利戦では楽に先手を取って、3馬身差の勝利。好指数での逃げ切り勝ちだった。この時点でボンドガールの新馬戦は指数が高いだけでなく、出走馬の質もかなり高かったと推測できた。
続く8月新潟のダリア賞では後の新潟2歳Sと同等の指数で勝利。さらに11月東京の京王杯2歳Sも優勝し、初戦で負けて以降は3連勝となった。そして2番人気に支持された阪神JFでは、やや出遅れたが好位の中目まで挽回し、最後の直線では外に出して堂々と勝ちにいく競馬。そのぶん最後に甘さを見せてしまったが、とても高く評価できる内容だった。本馬も一戦ごとの成長力が素晴らしい。今春もどこかで重賞をゲットできる手応えを感じさせた。
6位 キャットファイト
6月東京のボンドガールが勝利した新馬戦は勝ち馬から1.2秒差の6着だった馬。次戦8月新潟の未勝利戦ではこの時期の未勝利戦としてはまずまず良い指数で快勝した。驚かされたのはデビュー3戦目となったアスター賞。単独3番手から3~4角で2列目の最内から突き抜けて5馬身差の圧勝。ここでは先に行われた新潟2歳Sを上回る指数で勝利した。
このアスター賞では3~4角で仕掛け、ラスト1Fでも減速せずに粘れていることから、瞬発力よりも長く良い脚を使うタイプで距離はマイルよりも中距離がいいだろう。その後は成績が不安定となっているが、ハマった時の強さは十分に重賞レベル。狙うタイミングを間違えないようにして、穴馬として期待したい。
6位 バウンシーステップ
デビューからの2戦ははっきり出遅れて4、2着。デビュー3戦目もやや出遅れたが、それまでよりは良化を見せ、初勝利を挙げた。この時点では指数上、特に見どころがあるわけではなかった。ところがデビュー4戦目のりんどう賞ではスタートを五分以上に決めた。馬場状態を考えれば実質オーバーペース気味の流れを好位の外から3着に踏みとどまり、大きな進歩を感じさせた。
次走の12月中京のつわぶき賞では、五分のスタートを切って中団外で脚をタメる競馬。最後の直線で大外に出されると目立つ脚色で伸び、ラスト1F地点では早くも先頭。そのまま押し切って2馬身半差で勝利し、重賞通用レベルの好指数を記録した。デビュー当初は出遅れ癖で能力を出し切れず、その癖が解消されて脚をタメる競馬で本格化。上昇一途の状態になっている。今後も面白い存在となりそうで、重賞での活躍が期待できる。
9位 ボンドガール
昨年6月の東京開幕週で大物感たっぷりのレース内容で好指数勝ち。AAA評価をするのに迷いを感じさせなかった馬だ。この新馬戦で負けた馬たちが次々と好指数で勝ち上がり、本馬は一体どこまで強いのかとサウジアラビアRCでは興味津々だった。
そのサウジアラビアRCでは明確に出遅れ。前半が速い流れのなか、後方から中目までやや掛かりながら位置を挽回していく形。それでも優勝すると見ていたが、脚をタメて直線一気に徹したゴンバデカーブースに伸び負けて2着になったのは、衝撃の敗戦だった。しかし、速い流れでも折り合いを欠くのはスピードがあればこそであり、能力を出し切ったものでないはず。対戦比較からも現3歳世代牝馬ではNo.1の馬と言っても良いはずだ。
その後、阪神JFは直前で取り消し、何かチグハグな感じとなっている。ドウデュースのような乗り難しさを感じさせたが、さてどうなっていくだろうか。本馬の取捨が今春の牝馬クラシック路線では最大のポイントとなるはずだ。
9位 カルチャーデイ
9月小倉の新馬戦はやや出遅れ、掛かりながら好位の中目まで挽回していくロスのある競馬。最後の直線では先頭列が壁となり、そこから外に出して残り150mでやっと進路を確保すると、そこから伸びて差しきり勝ち。ただし指数は超平凡なものだった。しかし、新馬戦でロスのある競馬で能力を出し切れなかった馬は次戦で大きな上積みを見せることも多い。
ファンタジーSでは五分のスタートを切って、すっと好位の内に入り込んだ。前がある程度ペースを引き上げていくなか、3~4角で最短距離を通って3番手に上がり、直線で外へ。ロスが大きかった初戦とは大きく違い、全てが上手くいき15番人気で優勝した。続く阪神JFは16着。近年素質馬は東京のアルテミスSを選ぶことが多く、ファンタジーSは波乱の連続となっている。この傾向はしばらく続きそうだ。
9位 ナナオ
デビュー2戦目の函館未勝利戦は、好スタートを決めて逃げ馬を深追いせず2番手を追走。3~4角で先頭に並びかけ、4角では早々と先頭に立って3馬身差で勝利した馬。ラスト2F12秒0-11秒8でなかなかの好指数を記録し、好評価した。次走函館2歳Sでは2着。そして10月京都のもみじSを堂々と逃げ切った。
昨年のもみじSは重馬場で時計が掛かる一戦。その前走はかなりタフな馬場の函館2歳Sをオーバーペースで逃げる馬の外を追走と、タフな競馬を経験していたことが大きかったのだろう。年末の阪神JFは12着に大敗したが、今後も勝ったり負けたりしながらチャンスを狙う存在となりそうだ。
9位 ピューロマジック
6月東京ダートの新馬戦は大敗だったが、次戦の芝の未勝利戦では3着と善戦。そしてデビュー3戦目となった9月札幌芝1200mの未勝利戦では好スタート、好ダッシュで逃げた。この日の札幌は後半にかけて時計が掛かっており、馬場状態を考えればかなり厳しいペースだったはずだが、最後の直線で後続を引き離し、10馬身差の圧勝。重賞通用級の指数を記録し、高評価した。
その次走のファンタジーSは8着。疲れも残っていただろうが、最後の直線半ばまで逃げ粘る、見せ場のある内容だった。12月阪神のさざんか賞では復活の2着。未勝利戦勝ち時の指数で走れていないと見ていたら、1月京都の1勝クラスで同週のシンザン記念を上回る指数-14を記録しての逃げ切り勝ち。ようやく立ち直ってきた。芝短距離で今後も大活躍が見込める快速馬だ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)レガレイラの指数「-16」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.6秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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