【2歳馬ジャッジ】JpnⅠ勝ちフォーエバーヤングの対抗馬登場 ミッキーファイトが3勝クラス勝ちレベルの指数で圧勝
山崎エリカ
ⒸSPAIA
12月2週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は中山で古馬3勝クラス勝ちレベルの指数を記録したミッキーファイトなどが出た、12月9、10日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
12月9日(土)中山4R 優勝馬 ヤマニンアドホック 指数-6 評価A
10月の東京芝1800mの新馬戦は3~4角の中団中目で包まれ、直線では前が壁。ラスト2Fで位置を下げて、勝ち馬トロピカルティーの外に出されると、よく伸びて3着だった。
今回は新馬戦、未勝利戦を悪くない指数で2着した馬が3頭も出走しており、それらが1~3番人気に支持されていたように、未勝利戦としてはなかなかハイレベルなメンバー構成だった。
本馬は2番枠からまずまずのスタート。内枠の利を生かし、ロスなく好位の最内で折り合った。道中は逃げ馬とのスペースを作って追走。3~4角では最短距離から逃げ馬の直後まで上がり、直線では同馬の内を狙ったが突けず。ここで詰まるかと思われたが、逃げ馬と並走する形だった2番手の馬が失速し、幸運にも進路ができると、一気に抜け出して1馬身3/4差で快勝した。
2~4着に1~3番人気の馬が占める結果を堂々と突き抜けたことは価値がある。指数もなかなか良く、デビュー戦よりも前で立ち回っての勝利。レースセンスもあり、昇級後もジワジワと力をつけ、面白い存在となりそうだ。
12月10日(日)中山6R 優勝馬 エコロレイズ 指数-9 評価AA
6月東京の新馬戦で9着、次走の9月中山の未勝利戦では2着し、その後は3着。未勝利クラスで上位の存在であることは確かだが、指数面ではそこまで優秀ではなかった。今回は9月からひと息入れての一戦。馬体重12kg増が示すように、ふっくらとした馬体で成長を感じさせた。
レースは10番枠からまずまずのスタートを切って好位の外を追走。このレースは緩みなく流れ、3~4角では前を行く馬がバテ始めたが、本馬はそこで外から動いて4角では先頭列に並びかけた。直線序盤で先頭に立ち、そこから追われて2馬身ほど差を広げたが、背後からタンゴバイラリンが迫った。ラスト1Fでさらに詰め寄られたが、最後までかわさせずクビ差でゴールした。
3着以下には7馬身差。好位から勝ちにいく競馬で1クラス上の指数を記録しており、この中間に急成長したのだろう。この成長力ならオープンでも面白い存在になりそうだ。
一方、2着馬タンゴバイラリンは、11月東京のジャスティンミラノが勝利した新馬戦の3着馬。ラスト1Fの伸びが凄まじく、能力の片鱗を見せていた。今回は勝利しても不思議はない指数を記録したが惜敗。よほど体調を落とさない限り、すぐに未勝利クラスを突破し、オープンで活躍する馬となるだろう。
12月10日(日)中山7R 優勝馬 ミッキーファイト 指数-25(ダート)評価AA
10月東京の不良馬場で行われたダ1600mの新馬戦では大きく出遅れ。ダートの不良馬場では走破タイムが速くなるので大きな不利だが、中団馬群の先頭まで挽回。ただ、前も止まらず最後の直線ではとても前に届きそうもなく、ラスト2F標地点でも先頭と7馬身ほどの差があった。しかし、最後の最後にフットワークの回転が上がり、驚きの差しきり勝ちを決めた。当時の指数は目立つものではなかったが、末脚の非凡さはかなり光るものを見せていた。
今回はデビュー2戦目。15番枠から前走同様に大きく出遅れたが、東京よりも馬場がタフな中山ダ1800mの良馬場。外枠だったこともあり、1角までには楽に好位に取りつくことができた。道中は2列目の外付近を追走。3~4角で外を回って直線へ。直線では逃げたブルーサンの脚色は衰えていなかったが、容赦なくかわして5馬身差で圧勝した。
3着馬には9馬身差。今回で記録した指数は古馬3勝クラス勝ちレベルのもの。2着ブルーサンもダート路線に転向してから強くなり、今回は古馬2勝クラスレベルの指数を記録したが、相手が悪すぎた。
ミッキーファイトは馬体重540kgを超える大きな馬体を持ち、素晴らしいフットワークで走る馬。今回もスタートで出遅れており、能力を出し切ったわけではないだろう。現2歳ダート路線でフォーエバーヤングの一強ムードに待ったをかけうる馬だ。
12月9日(土)阪神6R 優勝馬 エーデル 指数-5(ダート)評価A
2番枠からまずまずのスタートを切って押していったが、外枠の2頭が競り合いながら内に切れ込んできたので、そこで抑えると外の馬に被され、頭を上げる場面もあった。キックバックを嫌がり、過剰に位置が下がってしまった。その後もリズムの悪い走りで、3角では最後方。大敗かと思われたが3~4角の中目から進出し、直線で大外に出されると、ひと追いごとに差を詰め、差しきって半馬身差で勝利した。
上がり3Fタイム37秒1はこの日の阪神ダートでは古馬を含めて最速。これはかなり価値が高い。指数は特筆するレベルではないが、ロスのある競馬ぶり、上がり3Fタイムの優秀さに非凡なものを感じる。気性面に危うさはあるが、かなりの潜在能力を持っているはず。今後の活躍が楽しみだ。
12月10日(日)阪神4R 優勝馬 チルカーノ 指数-2 評価A
8番枠から五分のスタートだったが、直後に外の馬に寄られて加速がつかず、ポジションが悪くなってしまった。道中は中団馬群の後方中目を追走。3~4角でも仕掛けを我慢し、4角では外目。直線で大外に出されると、そこから徐々に前との差を詰めた。ラスト1Fでは豪快なフットワークで脚の回転の速さが上がり、最後はきっちり前を捕らえて3/4差でゴールした。
ラスト2Fは10秒7-11秒6と大幅に減速。指数はそこまで優秀とは言えない。ただ上がり3Fタイムの33秒4は、他のレースと比較してもなかなか良い。数字面だけではあまり高い評価はできないが、最後の直線で見せたフットワークは美しく、目を奪われた。さすがジオグリフの半妹。秘めた素質はかなり高いものを感じる。
12月10日(日)阪神6R 優勝馬 エコロガイア 指数-19(ダート)評価AA
ダートデビューで5着した後、2戦目から芝を使われ2、3、3着。デビュー以来のダートとなった5戦目では、好位の外から4角で先頭に立つ競馬で2着馬に8馬身差をつけ圧勝、1クラス上の指数を記録した。続く昇級戦のなでしこ賞は強豪が相手。好位の最内を追走していたが、展開も向かず4着に敗れた。
今回は7番枠からトップスタートを決めて行きたがるのを少しなだめながら、逃げたラヴオントップの外2番手を追走。3~4角でも同馬に食らいつき、直線では同馬と一騎打ちになった。やはり追うものの強みで、最後は3/4差で差し切った。
3着馬には6馬身3/4差つけ、古馬2勝クラス勝ちレベルの指数で勝利した。今後、ダート短距離で末長い活躍が期待できる。
2着に惜敗したラヴオントップはキャリア4戦目の前走、初ダートの未勝利戦を古馬2勝クラス勝ちの指数で圧勝していた。今回は目標にされたぶん負けてしまったが、ダートでの能力はかなり高い。まともなら、すぐに1勝クラスは突破して、短距離ダートのオープンで活躍が期待される。
12月10日(日)阪神11R 優勝馬 アスコリピチェーノ 指数-15 評価AA
本レースは6月東京のハイレベルな新馬戦の勝ち馬ボンドガールが断然と見ていたが、直前で回避してしまった。1戦1勝、とても強い内容で新馬戦を勝利した素質馬タガノエルピーダも抽選漏れで出走できず。期待していた2頭が不出走となり、このレベルなら、前走の赤松賞でポジションが下がる不利がありながら勝利したステレンボッシュが最有力と当初は考えていた。
こういった想定外のことが起こり、流れが悪くなったときはだいたい間違った判断をしてしまうもの。いつもと違う思考回路に陥り、前走のレースぶりを過剰に評価してキャットファイトを本命視したが大敗。同馬はエンジンの掛かりが遅い中長距離馬で、トップスタートを決めてしまったことが誤算だった。外の各馬を行かせたことで中団の最内まで位置が下がり、直線序盤で進路を作るのに苦労。追い出しながら外に誘導してはいたが、進路を探しながらの競馬でエンジンが掛かり切らなかったのも敗因のひとつだろう。前走のアスター賞で好走した疲れも抜けていなかったようだ。
優勝したのはアスコリピチェーノ。同馬は前走の新潟2歳Sでやや出遅れたが、好位の外を追走しポジションを取りにいく競馬で優勝しており、その内容は新馬戦時から大きな成長を感じさせるものだった。やはり前走の走りは本物で、今後も成長が期待できそうだ。2着はステレンボッシュ。やはり前走で不利があって能力を出し切れなかった馬はよく走る。
コラソンビートはやや出遅れから勝ちにいく競馬で3着。とても高い能力を感じさせた。来春も活躍してくれるだろう。ボンドガールが勝った新馬戦で3着だったコラソンビートが好走したことからも、ボンドガールが出走していたらどのくらいの指数で走っていたのか。来年の桜花賞が今から楽しみだ。
12月9日(土)中京9R 優勝馬 バウンシーステップ 指数-13 評価A
新馬戦は4着、次走の未勝利戦は2着。デビュー3戦目の未勝利戦を勝利したが、そこまで高い指数ではなかった。ところが前走のりんどう賞は昇級戦ながら、馬場がタフだった京都芝を好位の外から勝ちにいく競馬。最後の直線では外の馬に寄られて追いづらくなる場面がありながらも3着と、大きな成長を感じさせた。
今回は9番枠から五分のスタートを切って中団外を追走。3~4角の外からじわっと進出して、直線で大外に出されると素晴らしい脚で一気に突き抜け、2馬身半差で完勝した。
指数はかなり優秀で、同週に行われた阪神JFでも3着争いレベルの指数を記録した。ここにきての成長は素晴らしく、脚をタメて末脚を生かす競馬で能力が発揮できるようだ。今回の指数を再現できれば当然、今後の3歳牝馬重賞戦線で上位争いできる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ミッキーファイトの指数「-25」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.5秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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