【2歳馬ジャッジ】ステレンボッシュが出世レースの赤松賞を快勝 スムーズならどこまで弾けるか楽しみ

山崎エリカ

11月3週目の2歳馬ジャッジ,ⒸSPAIA

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11月3週目の2歳戦

このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は赤松賞を快勝したステレンボッシュや東スポ杯2歳Sを勝ったシュトラウスなどが出た、11月18、19日の2歳戦について指数と評価を掲載する。

11月18日(土)東京5R ジャスティンミラノ 指数-4 評価A
11番枠から好スタートを決めて、逃げ馬の外2番手を追走。外から上がったラスジャンに終始プレッシャーをかけられていたが、2番手をしっかり維持して3角へ。3~4角で逃げ馬に並びかけ、大外から捲ったヘデントールと4頭並走状態で4角を通過。直線序盤で逃げ馬とともに抜け出し、残り300m付近でこれを競り落として先頭。そのまま押し切って1馬身3/4差で完勝した。

ラスト2Fは10秒8-11秒3。ラスト1Fで減速している点は評価できないが、この日の東京芝は高速馬場とは言えない状態で、上がりを要していた。その中で上がり3F33秒4は同日の古馬と比較しても優秀なもの。先行して速い上がり3Fタイムでまとめたことは高評価できる。レースを使われながら徐々に強くなっていくタイプだろう。

11月18日(土)東京11R 優勝馬 シュトラウス 指数-14 評価AA
6月の東京新馬戦を好指数で圧勝し、前走のGⅢ・サウジアラビアRCでは出遅れたことで能力を出し切れなかった。しかし、東スポ杯2歳Sは指数通り順当に優勝した。指数は明らかに上だったが、なぜか4番人気。多くの人は新馬戦を好内容で勝利したほかのニューヒーローたちに期待したのだろう。

シュトラウスは7番枠からまずまずのスタートを切って3番手を追走。テリオスルルが単騎で逃げる中、やや離れた2番手のシュバルツクーゲルをマークして、3~4角でも同馬の後ろで我慢。4角出口で外に出ると、直線序盤でシュバルツクーゲルに並びかけ、残り300m付近で先頭に立った。ラスト1Fで同馬がしぶとく食らいついて差を詰めにきたが、振り切って1馬身半差で完勝した。

この日はやや時計が掛かる馬場でペースも平均まで上がり、東京芝としては瞬発力が求められなかった面もあるが、一戦ごとに上昇し確かな強さを見せた。今後のクラシックロードで上位争いする馬になっていくだろう。

今回人気を背負って負けたのは、秋以降の新馬戦でラスト1Fタイムが優秀だったフォルラニーニ、シャンパンマークなど1戦1勝馬たち。ラスト1Fタイムの価値が例年通りだったならキャリア2戦目の難しさや、馬場や展開の影響が多少あったとしても、上位争いに加わっていたと推測できる。

前記2頭などはラスト1Fの発表タイムは速いのに、レース映像を見るとスピード感がそこまでなかったことを懸念していたが、それが現実となってしまった。他のレースを見ても発表されるラスト1Fの数字は以前と変わっているように感じる。以前の数字と整合性をとるためにかなり修正が必要と見ている。

11月19日(日)東京9R 優勝馬 ステレンボッシュ 指数-10 評価AA
6頭立ての新馬戦は2番手を追走していたが、逃げ馬が1角で外に逃避。これに巻き込まれて1角でかなり外に膨らみ、中団中目の4番手からの競馬となった。しかし、3~4角で2列目まで挽回して完勝。次走のサフラン賞は、スプリンターズS当日の内と前が有利な馬場を後方2番手から4角で大外を回った影響もあり、最短距離から早めに動いたスプリングノヴァにハナ差で敗れた。

キャリア3戦目の本レースは6番枠からまずまずのスタート。これまでで一番の好スタートだったが、控えるとすぐに引っ掛かり、コントロールが難しい状態に。内のセキトバイーストに接触して、中団までポジションが下がったが、3角手前から再び進出して4角では好位の外。直線序盤で追い出されると、早めに抜け出したテリオスサラを残り300m付近で捉えて先頭に立った。同馬も交わされてからしぶとく食らいついたが、これを振り切って3/4差で完勝した。

今回もスムーズなレースはできなかったが勝ちにいく競馬で勝利。休養明けのサフラン賞を16kg増で出走し、今回もやや太めだったが一戦ごとに強くなっている。今後の重賞戦線で大活躍の期待が高まる。また、このレースの上位入線馬はこのコラムで高評価した馬ばかり。例年の赤松賞と同様に、この先活躍していくことになりそうだ。

11月18日(土)京都6R 優勝馬 ハヤテノフクノスケ 指数-8 評価A
ミスタージーティーが勝利した新馬戦の2着馬。そのときは2番枠から出遅れたが、馬場の悪化した最内から好位まで挽回して追走。3~4角でも最内を通ったことで外から蓋をされそうになり、それに抵抗して位置を取りに行ったため、最後に甘さを見せての2着だった。この厳しい内容からここでは有力視していたが、想定以上の大きな上積みを見せた。

2戦目となった本レースは、4番枠からまずまずのスタート。外から前を主張する各馬をじわっといかせて、好位の外目4番手を追走。3~4角の外から進出して4角ではもう先頭。直線序盤では半馬身ほどのリードだったが、そこからもうひと伸びして5馬身差で圧勝した。今回は馬場の良い外目を通っていたが、記録した指数は1クラス上でも通用するものだった。

このタイプは昇級後も勝ったり負けたりしながら出世していくことが多いだけに、今後も要注目だ。こうなると新馬戦の勝ち馬ミスタージーティーの今後にも注目したいが、同馬は新馬戦時、後方から最後の直線で外にモタれた影響もあり、馬場の良い外を走らせていた。レース内容が本馬とは違うだけに、さてどうなるか。

11月19日(日)京都4R 優勝馬 シヴァース 指数-2 評価A
2017年ドバイターフを優勝するなど、国内外のGⅠで活躍したヴィブロスの息子。母同様に名門の友道康夫厩舎の所属馬で、鞍上がC.ルメール騎手だったこともあり、1番人気に支持された。

レースは1番枠から五分のスタートを切って、中団最内を追走。3~4角で最短距離を立ち回り、直線でも最内1頭分のスペースを走り、ラスト1F標で先頭。外から2頭に迫られたが、クビ差で勝利した。

ラスト2Fは11秒6-11秒1。稍重の京都芝だったことを考えればラスト1Fの価値は高い。走破タイムが平凡なので今後に疲れをあまり残さず、順当に上昇していくだろう。次戦でどれほど上昇するかで、クラシック戦線で通用するかどうかある程度占えそうだ。

11月19日(日)京都9R 優勝馬 ダノンマッキンリー 指数-12 評価AA
9月の阪神芝1400mの新馬戦では行きっぷり良く先行し、4角先頭から押し切って勝利した。走破タイム、指数ともに優秀でとても強い内容だった。ただ新馬戦であまりにもタイムが速い馬は次走で反動が出てしまうことも多い。同新馬戦の2着馬ポエットリーは次走の新潟未勝利戦で勝利しているが、指数をダウンさせながらの辛勝だった。

つまり、本馬は今回で単勝オッズ1.8倍の圧倒的な支持を受けたが、能力の天井が低ければ取りこぼす危険性もあったということだ。そんななか、レースでは3番枠から出遅れ。しかし、鞍上は最初からそれが分かっていたかのように行く気もなく、道中は馬が行きたがるのを宥めながらの追走。3~4角で外を回って、直線でさらに馬場の良い外に出されると、豪快に伸びて2馬身半差で完勝した。

今回は出遅れたこともあり、新馬戦とは違う後方待機策の競馬。3角でフェンダーが引っ掛かって4角先頭と早仕掛けしたことで、展開に恵まれた面がある。それでも新馬戦の反動が懸念された2戦目をあっさりクリアできたことは大きい。

ここまで過剰気味に支持されており、この先も馬券妙味がなさそうで面白くないが、セレクトセールで2億4,200万円の値がついた馬。それだけ素質を高く評価されているのだろう。当然、今後の重賞戦線での活躍が期待できる。

11月19日(日)福島5R 優勝馬 スター 指数-3 評価A
レースでは12番枠からもっさりと出遅れ、最後方付近からの追走になりそうな気配だったが、そこからの行きっぷりが良く、すぐに中団に取りつくことができた。向正面から前との差を詰め、3~4角の外から抜群の手応えで上がっていき、4角では先頭に並びかけて直線入り口でもう先頭。そこから最後までしっかりと伸びて1馬身1/4差で完勝した。

ラスト2Fは11秒8-11秒7。時計の掛かる福島芝でこの数字は評価できる。なかなか大きいフットワークで走る馬で、素質はかなり高そうだ。秋の福島デビューではあるが、今後かなり上を目指せる馬と見る。

2023年11月3週目の2歳馬PP指数,ⒸSPAIA


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ステレンボッシュの指数「-10」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.0秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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