【愛知杯回顧】父と母の特性が見事にマッチ ミッキーゴージャスが秘める可能性とは
勝木淳
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父と母のいいとこどり
4年ぶりの小倉開催となった愛知杯は1番人気ミッキーゴージャスの勝利で幕を閉じた。父ミッキーロケット、母ミッキークイーン。オーナーの野田みづき氏にとって最高のプレゼントでもあった。
2022年の新種牡馬ミッキーロケットはJRA重賞初制覇。自身の2018年宝塚記念制覇は5歳時のこと。若い頃は皐月賞にこそ出走したが、重賞好走は秋の神戸新聞杯。菊花賞5着から翌年、日経新春杯で重賞を勝つも、その後はGⅠの壁にぶち当たり、大崩れこそ少ないながら、ワンランク上に行くことができなかった。
重・不良はこなせないが、稍重ならやれる。そして良馬場だと少し足りない。壁にはね返されながらも力をつけた5歳夏、宝塚記念は少し時計を要する稍重馬場というこれ以上ない条件。千載一遇の好機をつかんでみせた。先行勢には少し厳しい流れをまくって、4コーナー2番手から押し切った。
ミッキーゴージャスの愛知杯も、そんな父の走りを重ねたくなる。父は時計を要する良か稍重を得意としたが、ミッキーゴージャスは開幕週の良馬場1:57.9を押し切った。直近の連勝も芝2000mで1:58.8、1:59.3と速い時計を苦にしない分、父より活躍できる幅がある。
この奥行きをもたせたのが母ミッキークイーンだろう。父ディープインパクトにヌレイエフの血が入ったミュージカルウェイで高速決着も苦にしなかった。ミッキークイーンは秋華賞で1:56.9。2着だったヴィクトリアマイルで1:31.9を記録と、距離適性にも奥行きがあった。ミッキーゴージャスも中距離中心の歩みだが、2000mを1:57.9で勝てるなら、マイルに対応してもいい。安田隆行厩舎は2月いっぱいで解散となり転厩を挟むことになるが、ここを勝ったことで、ゆっくり歩みを進むことができる。
川田将雅騎手の意志
川田将雅騎手はかつて所属していた安田隆行厩舎に重賞勝利をプレゼントした形になるが、その意志はレースにも強くあらわれていた。
グランスラムアスクが飛ばし、1000m通過57.4は開幕週とはいえ、楽ではない。12.2-10.4-10.9-12.0-11.9と行くだけ行く構えを見せられ、先行勢は馬場が味方したとはいえしんどい。後半1000mは12.3-12.4-12.2-11.6-12.0で1:00.5。ミッキーゴージャスは息を入れにくい流れを、中団から外を積極的に動いた。決してじっと展開待ちはしない。勝ちに行く。そんな強い意志が勝利を呼び込んだ。
全体的に緩みない流れであっても、開幕週の馬場がアシストし外差しは厳しい展開だったことを考えると、中団より後ろから勝つにはこれしかないといった競馬だった。途中で動いても上がり2位で走り切った馬の充実とあいまった勝利は将来楽しみが広がる。54キロはライバルとの比較でいえば軽量ではなかったが、今後は定量戦など斤量が増える可能性が高い。課題といえばそれぐらいだろう。
コスタボニータの狙いどころ
2着は8番人気のタガノパッション。こちらはイン優位の馬場を味方につけた面はある。ただ、小倉芝2000mで1:57.5など、もともと速い時計に対応できる素地はあった。一方で堅実ながら2、3着が多く勝ち切れない面もあるタイプで、今回もそんな面が出た。最後はきっちり脚を使うものの、コーナーで加速する機動性に欠けるのが原因だろう。昨年の初音S2着など、直線の長いコースがよさそうだ。
3着は2番人気のコスタボニータ。息の入らない流れのなか、好位から一旦抜け出しかかるも、最後はタガノパッションに差されてしまった。流れを考えれば健闘したといえるが、やはり2000mは長いようだ。1800mでは重賞3着があるが札幌での記録。本質的には1800mでも少し長く、ベストは1600mではないか。昨年3着だった阪神牝馬Sで面白い。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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