【フェアリーS回顧】イフェイオンの勝因とGⅠへの展望 いびつなラップで脚を余した2頭の次走に注目
SPAIA編集部
ⒸSPAIA
重要度増す一戦をイフェイオンが制す
牡馬クラシックの前哨戦は弥生賞やスプリングSより共同通信杯が重宝されるようになり、そして昨年はついに1月の京成杯勝ち馬ソールオリエンスが直行で皐月賞を制した。牝馬路線もかつての王道だったチューリップ賞が存在感を失いつつあり、阪神JFからの直行やクイーンC組、シンザン記念組などが桜花賞で活躍するようになった。
本番までの準備期間を長くとる風潮のなか、フェアリーSも重要度を増しつつある。この一戦を制し、桜花賞への出走賞金を確保したのは西村淳也騎手騎乗、5番人気のイフェイオンだった。
レースは明確な逃げ馬がいないなか、逃げ候補と目されたマスクオールウィン、テリオスサラがそろって出遅れる波乱のスタート。メイショウヨゾラが内枠からハナに立つもペースを上げる素振りはなく、「それなら」とばかりに坂井瑠星騎手、2番人気キャットファイトがハナを奪った。
外の2番手につけたジークルーネが半馬身ほど前に出ても坂井騎手は手綱を持ったまま。変則的な形で息を入れ、馬群はほぼ一団のまま直線に向いた。外の4頭目からイフェイオンが反応よく伸びて先頭に立つと、そのさらに外からマスクオールウィンが強襲。内から加わったラヴスコールと3頭併せの形になったが、わずかにイフェイオンが先着した。管理する杉山佳明厩舎にとってはJRA重賞初勝利だった。
タイムには疑問も残る
レースラップは12.3-11.1-11.3-11.9-12.3-12.2-11.5-11.4。最初の600mをやや突っ込んで入り、そこから600mはペースダウン。実質的な勝負はラスト400mで、最後の200mがその前区間より速い「加速ラップ」が出る歪な構成となった。逃げた坂井騎手の真意は分からないが、折り合いに難しさがあるキャットファイトをひと息で走らせないように、おそらくそんな意図だったのではないか。
内にいた各馬は残り600~400m、本来なら徐々にギアを上げたい勝負どころで仕掛けを待たされ、300m少々の直線だけで急加速しなければならなかった。端的に言うと脚を余した。反対にイフェイオンは馬群の外にいたことで、直線に向く前からリズムよく仕掛け、早め先頭の形を作ることができた。通常は不利とされる中山マイルの外枠だが、このレースに関しては功を奏した。展開を上手く利用した西村騎手の好騎乗でもあった。
2着マスクオールウィンは出遅れたが、結果的にはそのおかげで外からスムーズに上がっていくことができた。1200mで2勝を挙げてはいるが、マイルまでは守備範囲だ。
3着ラヴスコールはまさに内枠がアダとなって踏み遅れた。もうひとつ上のパフォーマンスを隠し持っていそうで、次走の注目馬としたい。ただ、アルテミスSでは目立つ脚を使えなかったように、東京や阪神などの上がり勝負は合わない印象もある。能力は買いつつも、桜花賞は条件的に微妙だ。
4着スティールブルーも仕掛け遅れた1頭。位置取りの差で届かなかったが、ゴール前は最も鋭い脚で伸びてきた。桜花賞を目指すのであれば賞金的にクイーンCあたりで続戦か。左回りの大箱には既に実績があり、出てくれば素直に有力候補と考えたい。
2番人気6着キャットファイトはアスター賞の時計が強烈だったが、その後2戦が案外。気性の難しさもあり、現状はこのあたりが精一杯だろう。3番人気7着テリオスサラは見ての通り、大きな出遅れが痛かった。
最後にレース全体のレベルについてだが、勝ち時計1:34.0は同日3歳未勝利に比べて0.6秒遅く、ペースの差を加味しても優秀とは言えない。2着マスクオールウィンは新馬戦でボンドガール、チェルヴィニア、コラソンビートからやや離れた4着だった馬。これを物差しにすると、上記3頭にアスコリピチェーノ、ステレンボッシュらがいるハイレベル世代のトップ層とは少し力量差がありそうだ。
果たして今年のフェアリーS組から桜花賞好走馬が出るか。強気な評価はしにくいところである。
《関連記事》
・【日経新春杯】データからは菊花賞5着サヴォーナが中心 穴馬の資格を持つのは「前走条件戦×2400m以上組」
・【京成杯】「7番人気以内の1戦1勝馬」が鉄板 ソールオリエンスと同ローテ、バードウォッチャーが最有力
・【愛知杯】距離に対応できればルージュスティリアにチャンス 今年は条件戦組も出番あり
おすすめ記事