【ホープフルS】好位取りやすい「前走1800m組」 仕上がり早いレガレイラに注目

貴シンジ

ホープフルステークス、前走距離別成績,ⒸSPAIA

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

先週の有馬記念ではジャスティンパレスを推奨し1番人気4着。内前有利な馬場傾向のなか、道中最後方で大外を回る形。勝ったドウデュースと似たような位置取りではあったが、ドウデュースは早めに動き、ジャスティンパレスは仕掛けをワンテンポ遅らせた分、脚を余して届かなかった。

今回は12月28日(木)に中山競馬場で行われるホープフルSについて下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行なっていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の敗因」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった22頭のうち、除外対象のココナツキュートを除いた21頭を検討対象とし、前身のラジオNIKKEI杯2歳S(2013年)を含めた過去10年分のデータを使用する。


重要データ:前走1800m組が好成績

前走レース別成績,ⒸSPAIA


ホープフルSは17年からGⅠに昇格したレースで、朝日杯FSよりも長い距離に適性のある馬が出走してくる傾向がある。また、19年コントレイル、20年ダノンザキッドのように、朝日杯FS勝ち馬ではなくホープフルS勝ち馬が最優秀2歳牡馬に選ばれた年もあり、GⅠに昇格して以降、メンバーレベルは高くなっているイメージがある。

当レースで有効なデータとなるのは前走距離別成績。1200m【0-0-0-1】、1400m【0-0-0-3】で、1400m以下からの臨戦では好走馬が一頭も出ていない。さすがに適性が違いすぎるということだろう(今年は該当馬なし)。1600mは【0-3-0-10】で複勝回収率62%。1800mは【6-3-5-41】勝率10.9%、複勝率25.5%、単勝回収率206%、複勝回収率80%、2000mは【4-4-5-65】勝率5.1%、複勝率16.7%、単勝回収率22%、複勝回収率47%となっている。1800m組が勝率、複勝率トップ、単複回収率も高く優勢だ。

ホープフルSはGⅠとはいえ2歳戦。スローペース寄りの傾向もあって、前有利になりやすく相対的に距離延長組がポジションを取りやすい。例年、メンバーレベルが高めの東スポ杯2歳Sが1800mというのも、好成績を収めている要因の一つだろう。前走1800m組かつ先行できる馬は注目だ。

【前走1800mの出走登録馬】
・アンモシエラ(前走ダート)
・インザモーメント
・ヴェロキラプトル
・ショウナンラプンタ
・タリフライン
・テンエースワン(前走ダート)
・ホルトバージ
・レガレイラ


前走の敗因:アイビーSのレガレイラ

レガレイラの前走はアイビーSで、結果は3着。新馬戦で強い競馬をしていたことや良血ということもあって、1番人気に支持されたが人気に応えることはできなかった。敗因としては、スタートを決められなかったこと、かなりのスローペースだったわりに道中先行する2頭と3番手だった本馬の間に2~3馬身差あったこと、直線でフラフラと走っておりスムーズに持ち出せなかったこと、などが挙げられる。

それでも上がり最速タイ32.7秒の脚を使っており、内容としては悪くなかった。課題としては新馬戦、アイビーSと好発を決められていないゲートと、スムーズに手前を替えられずにフラフラと走ってしまうこと、の2点だ。2歳馬だからこのあたりの課題はあって当然だが、今回少しでも改善されるようであれば要注目の一頭となる。ゲートに関して陣営がどのようなコメントをしてくるか、最終追い切りの映像でまっすぐ走れているか、などはしっかりとチェックしたい。


血統解説:ゴンバデカーブース、シンエンペラー、レガレイラ

・ゴンバデカーブース
日本での牝祖は祖母レディオブヴェニス。現役時にジャストアゲームS(GⅠ・芝1600m)で2着、キャッシュコール招待マイルS(GⅡ・芝1600m)勝ちという実績がある。ちなみにだが、この時のキャッシュコール招待マイルSにはキストゥヘヴン、ディアデラノビア、コイウタなど日本馬も多数参戦していた。

自身の現役時ほどではないが繁殖としても優秀で、京成杯2着のアクションスター(父アグネスタキオン)、本馬の母で中山牝馬S3着のアッフィラート(父ディープインパクト)を輩出しており、一定の活力はあると考えられる。

ファミリーには機動力かつパワーもあるタイプが多い。本馬は東京で2連勝しているが、中山コースへの不安はなさそう。課題となるのは距離で、馬体や、ブリックスアンドモルタル×アッフィラートという組み合わせから考えても、ベストはマイルから1800mといったところ。ホープフルSは少々距離が長い気がする。

これまではストレスなく自分の競馬ができていたが、ブリックスアンドモルタル産駒ということもあって、馬群に入ってどうかという点も気になる。今年のサウジアラビアRCの勝ち時計は1分33秒4と、かなり優秀で、能力的にはここでも十分通用していい。しかし、そのパフォーマンスから人気するようであれば、適性面での不安要素が多いので軽視してもいい。

ゴンバデカーブースの血統表,ⒸSPAIA


・シンエンペラー
母Starlet's Sisterがアイルランド産馬のため日本での牝祖は母。Starlet's Sisterは競走馬としての実績はないが、繁殖としては超がつくほどの実績を残している。BCフィリー&メアターフ(GⅠ・芝2200m)などGⅠを7勝したSistercharlie(父Myboycharlie)、同じくBCフィリー&メアターフで2着、重賞3勝の実績があるMy Sister Nat(父Acclamation)、そして仏ダービーや凱旋門賞を勝利しているSottsass(父Siyouni)を輩出している。本馬も父がSiyouniだからSottsassの全弟にあたる。正直、日本でデビューさせるのはもったいないのではないかと思えるくらいの欧州の超良血で、今回のメンバーでの牝系の活力はずば抜けている。

母Starlet's SisterがMiswakiの3×3を持っており、その影響は強く、瞬発力は日本でも十分通用する一頭と言えるだろう。ただ兄弟の成績や血統を考えても成長曲線はゆったり目で、これまでの競馬や身体つきを見てもまだまだ成長途上といったところ。クラシックでも好走してくるかもしれないが古馬になってからが本領発揮といったところだろう。

また、ストライドがかなり大きいタイプでこれまでは東京、京都と適性に合ったコースを走っていたが、今回は機動力の求められる中山コース。となると、これまで通りの走りができるかどうかは疑問があって、こちらも適性面で不安が残る一頭だ。

シンエンペラーの血統表,ⒸSPAIA


・レガレイラ
日本での牝祖は3代母ウインドインハーヘアで、ディープインパクト、ブラックタイドなどを輩出している名繁殖。母ロカは芝1800mでの1勝しか挙げることができなかったが、クイーンC(GⅢ・芝1600m)で3着の実績がある。また、阪神ジュベナイルフィリーズでも1番人気に支持されるほど、仕上がりの早い馬だった。

このファミリーは持続性能とスタミナに優れたタイプが多く、本馬も父がスワーヴリチャードなので2000mは全く問題ないだろう。牝馬でストライドが広く、末脚の切れ味が武器の一頭だから、中山コースはベストな舞台ではない。ただ、初戦の函館での走りを見る限り、最低限は対応できそうでコーナリングもそこまで悪くない。前走は究極の上がり勝負になってしまった分で負けてしまったが、新馬戦で能力の高さは十分見せており、人気馬の中ではもっとも買いやすい一頭だ。

レガレイラの血統表,ⒸSPAIA

Cアナライズではレガレイラを推奨

今回はレガレイラを推奨する。前走は展開的に厳しく敗れたが、能力の高さは新馬戦でしっかり証明しており、能力通り走ればここでも十分勝負ができるだろう。また、有馬記念などを見ていても、今の中山は例年以上に勝ち時計が速く、スピード性能を要求される。そういう点から、末脚自慢の本馬も対応できそうで、やや人気を落とすであろう今回はねらい目と言える。2走連続で出負けしていることからゲートが課題。この点が少しでも改善されてくれば好走必至だ。現状14頭中11頭の抽選対象だが、ぜひとも通ってほしい。

【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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