【有馬記念】前走ジャパンC組は近4年で馬券絡みなし データで導く「過信禁物の注目馬」
藤川祐輔
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一年の総決算! スターホース集結のグランプリ
12月24日、中山競馬場では有馬記念(GⅠ)が行われる。当レースは過去10年で1番人気馬が6勝しており、近年は堅い決着が多い印象だ。その一方で、サラキア(20年11番人気2着)、トゥザワールド(14年9番人気2着)といった伏兵の活躍も少なくなく、高配当のチャンスも十分にある一戦だ。
特に今年は絶対王者イクイノックスが引退したこともあり、大本命不在の混戦模様となっている。上位人気馬の優劣をどうつけるか、頭を悩ませている読者も多いはずだ。そこでここでは、過去10年(13~22年)のデータを基に、「過信禁物の注目馬」を導いていく。
前走ジャパンC組は厳しい
まず注目するのは、前走レース別の成績だ。連対率、複勝率が高いのは、前走で菊花賞を走っていた馬で【2-2-2-7】勝率15.4%、連対率30.8%、複勝率46.2%となっている。また、凱旋門賞から挑む馬も【1-1-2-5】勝率11.1%、連対率22.2%、複勝率44.4%と好成績を収めている。長距離戦や海外遠征での疲労が懸念される2つのローテーションだが、データを見る限り心配の必要はない。むしろ積極的に買い目に入れるべきだ。
古馬王道路線では、天皇賞(秋)から転戦してきた馬が好相性。【3-2-1-12】勝率16.7%、連対率27.8%、複勝率33.3%と素晴らしい成績を残している。対照的に、前走ジャパンC組は【2-2-4-44】勝率3.8%、連対率7.7%、複勝率15.4%と低調だ。
ジャパンCからの間隔は中3週と短く、高いパフォーマンスを維持することは簡単ではない。間隔を十分に空けてレースを使う陣営が増えた近年は、この傾向が顕著で、前走ジャパンCの馬は19年以降1度も馬券に絡めていない。他のローテーションと比べ、不利であることはデータからも明らかであり、評価を下げるべきだ。
人気馬の凡走目立つキングマンボ系
続いては、種牡馬系統別の成績を取り上げる。当レースと好相性なのはロベルト系で【2-1-2-6】勝率18.2%、連対率27.3%、複勝率45.5%と抜群だ。ゴールドアクター(15年8番人気1着)の激走は印象深く、昨年もボルドグフーシュ(6番人気2着)が好走している。また、サンデーサイレンス系は【6-6-7-80】勝率6.1%、連対率12.1%、複勝率19.2%と率こそロベルト系に劣るが、過去10年では最も多くの好走馬を輩出している。
気がかりなのはキングマンボ系で【0-3-0-24】勝率0.0%、連対率、複勝率11.1%と苦戦を強いられている。この中には人気馬も数多く含まれており、昨年もタイトルホルダー(2番人気9着)、ヴェラアズール(4番人気10着)と、揃って惨敗している。さらに、19年には単勝1.5倍の圧倒的支持を受けたアーモンドアイが9着に敗れており、同馬のキャリアで唯一3着以内を外したレースともなった。
キングマンボ系は日本競馬においてサンデーサイレンス系と双璧を成す主流血統だが、当レースでは結果を残せていない。人気を背負った実力馬が多数凡走していることを鑑みれば、積極的に買い目に入れることは避けるのが無難だ。
大柄な牝馬は冬が苦手
最後は、牝馬の馬体重に関するデータを紹介する。牝馬の前走馬体重別の成績を見ると、460~479kgの馬が【2-1-1-6】勝率20.0%、連対率30.0%、複勝率40.0%と素晴らしい(前走海外組を除く)。
前走馬体重が480kg以上だった馬は【0-0-0-10】複勝率0.0%と1頭も馬券に絡めていない。この組には前項でも名前を挙げたアーモンドアイや、ラッキーライラック(20年4番人気4着)、モズカッチャン(18年4番人気8着)といった人気馬も含まれている。
これだけではサンプルが少ないので、冬期(12~2月)2000m以上の、古馬混合JRA重賞における、牝馬の馬体重別成績を調べた(2020年以降)。すると、479kg以下の馬は【7-7-9-57】勝率8.8%、連対率17.5%、複勝率28.8%と良好。対して480kg以上は【1-4-4-41】勝率2.0%、連対率10.0%、複勝率18.0%と低調だった。
このデータから判断するに、馬体重が480kg以上の大柄な牝馬は冬を苦手としており、当レースでもその傾向が顕著に表れている。新陳代謝の低下やホルモンバランスの変化など考えられる要因は様々だが、データ的には大柄な牝馬は敬遠した方が良さそうだ。
データで導く「過信禁物の注目馬」
ここまでに紹介したデータをまとめると、有馬記念における不安要素は以下の通りである。
・前走ジャパンC
・父キングマンボ系
・前走480kg以上の牝馬
これらを踏まえて、今回はスターズオンアースを「過信禁物の注目馬」として挙げる。
3歳時の桜花賞やオークス、前走のジャパンCを見る限りでは、ベストは直線の長い大回りコースである。一方で秋華賞、大阪杯といった小回りコースではパフォーマンスを落としており、器用さに欠ける面は否めない。小回りで直線の短い中山の舞台がベストとは言えず、力を発揮できない可能性も十分にある。
また、3つの不安データ全てに該当しており、特にジャパンCからのローテーションは気がかりだ。今秋にも蹄のトラブルで天皇賞(秋)を回避しており、ここまで万全の状態できたわけではない。しかも前走で高いパフォーマンスを発揮しているだけに、中3週という短い出走間隔で、どこまで状態が維持できているかは注視すべきだ。
データ面や適性を考えれば、当馬に絶対の信頼は置きにくい。混戦模様の一戦であるだけに、舞台適性のある馬を本命に据えた方がより確実と見る。
《ライタープロフィール》
藤川祐輔
98年生まれ、新進気鋭の若手ライター。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。以前は別媒体での執筆を行っていたが、よりデータを生かした記事を書きたいと考えSPAIA競馬への寄稿をスタート。いつの日か馬を買うのが夢。
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