【有馬記念】好相性の前走レースあり データと中山適性からジャスティンパレスを推奨
貴シンジ
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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す
先週の朝日杯FSではシュトラウスを推奨し2番人気10着。大きく出遅れたにも関わらず前傾1.6秒のペースを逃げる形となり競馬にならなかった。さて今回は12月24日(日)に中山競馬場で行われる有馬記念について下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行なっていく。
・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走不利データ」
・適性と素質を知るための「血統評価」
特別登録のあった20頭のうち回避予定のドゥラエレーデを除いた19頭を検討対象とし、過去10年分のデータを使用する。
重要データ:勝ち馬が出ている6つのローテーション
有馬記念は宝塚記念と並ぶグランプリと呼ばれるレースだけあって、勝ち馬が出ている前走レースは一流のものが並ぶ。勝ち馬が出ている数の順に並べると、天皇賞(秋)【3-2-1-12】、JC【2-2-4-44】、菊花賞【2-2-2-7】、凱旋門賞【1-1-2-5】、アルゼンチン共和国杯【1-0-0-6】、コックスプレート【1-0-0-0】となっている。
上記レースを使った馬を買うというだけではまだまだ絞り込めないのでもう少し個別に深掘りしていく。まず天皇賞(秋)からの臨戦であれば、好走組を買うのが良い。天皇賞(秋)1~3着馬は【3-1-1-2】で単勝回収率98%、複勝回収率92%。対して4着以下だった馬は【0-1-0-10】で単勝回収率0%、複勝回収率24%。馬券内に好走しているかいないかで明暗が分かれる。
続いてJCに関しては同レースでの人気を確認するのが有効で、1番人気が【2-1-0-2】単勝回収率212%、複勝回収率104%に対し、2番人気以下は【0-1-4-42】単勝回収率0%、複勝回収率25%。今年は好データに該当する1番人気(イクイノックス)は出走しない。
菊花賞についてもJCと同様。菊花賞で1番人気だった馬は【2-0-0-2】で単勝回収率287%、複勝回収率97%となっている。対して2番人気以下は【0-2-2-5】単勝回収率0%、複勝回収率166%となっていて複勝回収率こそ100%を上回っているが勝ち馬は出ていない。菊花賞で1番人気じゃないからといって消す必要はないが、本命にするのであれば1番人気だった馬が理想的だ。今年はソールオリエンスが該当する。
最後に、海外組は連対していると【2-0-0-0】で単勝回収率415%、複勝回収率160%、連対できなかった馬は【0-1-2-5】で単勝回収率0%、複勝回収率71%なのだが、今年は連対馬がいない。
【前走天皇賞(秋)で1~3着の出走予定馬】
・ジャスティンパレス(2着)
【前走菊花賞で1番人気だった出走予定馬】
・ソールオリエンス
前走不利データ:天皇賞(秋)のジャスティンパレス
天皇賞(秋)ではオッズが重要なファクターとなっていて、当日30倍以上のオッズがついていた馬は【0-1-1-85】複勝率2.3%とほとんどが4着以下に敗れている(13~22年の過去10回)。ジャスティンパレスは当日35.1倍。データ的にはかなりハードルの高いオッズだった中で2着と好走した点は評価したい。
レースの内容としては後ろ有利の展開で、恩恵を受けたのは間違いない。それでも今年に入って阪神大賞典、天皇賞(春)の勝利、宝塚記念3着、天皇賞(秋)2着と異なる適性が求められる一流のレースを全て好走している。イクイノックスが引退しリバティアイランドが出走してこない今回のメンバーであればトップレベルの実力と言えるだろう。
血統解説:ジャスティンパレス、スターズオンアース、ソールオリエンス
・ジャスティンパレス
母パレスルーマーが米国産馬であるため日本での牝祖は母。ジャスティンパレスはステイヤー色が強いファミリーの一頭だ。
兄にはベルモントS(GⅠ・ダート2400m)とメトロポリタンH(GⅠ・ダート1600m)を勝利したPalace Malice(父Curlin)と今年の特別登録にも名前があるステイヤーズS勝ち馬のアイアンバローズ(父オルフェーヴル)がいる。スタミナ適性の高さは言わずもがなだが、器用なタイプでもあって中山コースへの適性は高い。天皇賞(秋)よりコース適性が高くなるのは間違いないだろう。また、500mの距離延長も好感が持てて、天皇賞(春)だけではなく有馬記念のタイトルも獲得して、イクイノックスのいなくなった古馬中長距離戦線の主役になりたい。
・スターズオンアース
日本での牝祖は母サザンスターズだが祖母スタセリタを根幹とする一族の馬たちも日本で多く走っている。スタセリタは仏オークスなどGⅠを6勝した名牝で、牝馬の馬名の頭文字がSで続くいわゆる「Sライン」の一頭。本馬は叔母に17年オークス馬ソウルスターリング(父Frankel)、18年アルテミスS勝ちシェーングランツ(父ディープインパクト)がいる社台ファームが誇る超良血馬の一頭だ。
末脚の爆発力とスピード性能は抜群である一方、気性的に難しいタイプが多く出るファミリーでもある。しかし、スターズオンアースは難しさをあまり見せないタイプで、ドゥラメンテ牝馬らしく中距離で自慢の末脚を発揮している。追走力がついてきた点は成長の証で、実力的にも今回のメンバーでは上位だ。しかし、血統的には大回りコースがベストなのは間違いない。阪神内回りの大阪杯や秋華賞、中山のフェアリーSと機動力が求められるコースでは勝ち切れておらず、人気以上の走りができたこともないという点は不安要素だ。中山芝2500mがベストな舞台ではないだろう。
・ソールオリエンス
日本での牝祖は母スキア。同馬は現役時フランスの芝中距離GⅢ・フィユドレール賞を勝利している実績馬だ。牝系を遡れば3代母Gleam of Lightの孫に英オークスなどGⅠ・5勝のLoveがいて、牝系の活力も十分重賞級だろう。兄にディープインパクト産駒のヴァンドギャルドがいる通り、母系のデインヒルの影響も強く、早期からの活躍も可能だ。
一方MotivatorやRainbow Questも持ち合わせているので成長力も高い。瞬発力も十分重賞級の一頭だが、最大の持ち味はその持続性能の高さとタフさだ。条件の違う三冠レース全てで好走しており、タスティエーラと並んで今年の3歳世代では間違いなくトップレベルの実力を誇るが。ソールオリエンスのベストパフォーマンスはやはり皐月賞で、持ち前の持続性能の高さとタフさを生かすには有馬記念の舞台がうってつけだろう。
Cアナライズではジャスティンパレスを推奨
今回はジャスティンパレスを推奨する。前走は展開に恵まれた感は否めないが、それでも宝塚記念でイクイノックスと0.2秒差というのは評価でき、中山への舞台替わりは確実にプラス材料だ。他だと、ソールオリエンスは好走データにも該当し適性も高そうで、また、タスティエーラも好走データからは外れてしまったがソールオリエンスと同等の評価は与えたい。人気が予想される馬で軽視するのであればスターズオンアースだが、こちらも勝ち切るところまではいかなくても2、3着なら十分考えられる。
過去にはメジロデュレン、ダイユウサク、メジロパーマー、マツリダゴッホなど大荒れの年もあったため、「有馬記念は荒れる」というイメージを持つ方もいるかもしれないが、過去10年で見ればレース全体の単勝回収率が33%、複勝回収率が47%で、近年はJRAのGⅠの中でもかなり堅い部類となっている。イクイノックスやリバティアイランドこそいないが今年も堅くおさまりそうなメンバーだ。
【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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