【有馬記念】複勝率7割、単回収率1000%超の最強タッグを発見 データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

2023年有馬記念、データで探す穴馬のイメージ,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

データで見る「穴候補3頭」

いよいよ暮れの大一番・有馬記念がくる。国内のレースを盛り上げた歴戦の古馬勢、3歳クラシック組、そして海外のビッグレースへと打って出た“サムライ”たち。グランプリレースにふさわしい多彩な強豪が集結し、今年も楽しみな一戦になる。

ジャパンC3着馬スターズオンアースが人気の中心になりそうだが、例年以上に中~下位人気想定の馬たちも層が厚く、チャンスは大きい印象を受ける。様々な切り口のデータを駆使し、3頭の穴候補を導き出した。


同年GⅠ実績とローテでシンプルに スルーセブンシーズ

まず1頭目はスルーセブンシーズ。年初はまだ3勝クラスに出走していたが、そこから重賞を勝ち、宝塚記念はイクイノックスの2着、秋には凱旋門賞に挑戦して4着。大きな飛躍を遂げた1年だった。

有馬記念は高額賞金をかけたハイレベルGⅠであると同時に、シーズン最終盤に位置する「お祭り」的レースでもある。この二つの表情を持つがゆえに、以下のような特徴が生じる。

(1)GⅠ級の実績がないと基本的に太刀打ちできない
(2)距離が合わない馬の出走も珍しくない
(3)秋の大レースを連戦し、消耗した馬も出走してくる

裏を返せば、(能力と距離適性の両面で)中長距離GⅠで通用する裏付けを持ち、ローテーション的に余力のある馬を狙うのがセオリーということ。これをデータで示そう。

有馬記念 同年の実績別成績(過去10年),ⒸSPAIA


過去10年の有馬記念において、「同年に芝2000m以上のGⅠで連対していた馬」は【8-7-9-35】複勝率40.7%、複回収率95%。そうでないグループの【2-3-1-95】複勝率5.9%、単回収率25%、複回収率19%とは雲泥の差だ。まずは同年の中長距離GⅠ連対馬にヤマを張ろう。

該当馬のうち、「前走から中7週以上」空けた“余力ありローテ”なら【6-5-5-10】複勝率61.5%、複回収率131%。強くて、距離もこなせて、元気が残っていそうな馬。簡単な絞り込みだが、これだけで十分的中に近づける。

今年はジャスティンパレスら4頭が該当するが、穴と言えるのはスルーセブンシーズだけだろう。凱旋門賞は公式発表でレース上がり3F33.97秒、ラスト11.11-11.07という極限の切れ味勝負に屈した。中山は【4-1-2-0】の得意舞台であり、上がりがかかる競馬でパフォーマンスが向上するタイプ。3歳秋本格化以降の最強馬イクイノックスを最も苦しめたのがこの馬。ここに混じっても全く見劣りはしない。


斤量有利の3歳、今年は牝馬? ハーパー

2頭目は3歳牝馬のハーパー。クイーンCの好時計勝ちなど素質は見せているが、GⅠでは2~3着止まり。距離はあった方がいいタイプで、オークスが最大のチャンスだったと思うが、いかんせん同期にリバティアイランド。相手が悪かった。

言い尽くされた感もあるが有馬記念は3歳有利。成長により古馬との能力差がどんどん縮まる時期にありながら、斤量差は10月末の天皇賞(秋)などと同じく2キロ。また、古馬はトップ層がジャパンCを大目標に据える傾向もある。このあたりが原因だろう。

有馬記念 年齢別成績(過去10年),ⒸSPAIA


過去10年の年齢別成績を見ると3歳【4-3-2-16】複勝率36.0%。4~5歳【6-7-7-82】複勝率19.6%、6歳以上【0-0-1-32】複勝率3.0%とは一線を画する。3歳馬で、クラシックでの連対歴があれば【3-3-2-5】複勝率61.5%、複回収率163%。素晴らしい数字だ。

タスティエーラ、ソールオリエンスもいいが、今年は牝馬のハーパーも検討してみたい。オークス2着時の走破時計は2:24.1。ペースの差があったのは確かだが、ダービーの勝ち時計(2:25.2)より単純比較で1秒も速い。オッズの部分も考えると「現3歳世代は牝馬>牡馬だった」というシナリオにベットしてみるのも面白そうだ。


池添学厩舎の「最強助っ人」バウルジャン・ムルザバエフ プラダリア

3頭目、大穴プラダリアが気になって仕方ない。実績はGⅡ・2勝、GⅠはダービー5着が最高着順。おそらく2桁人気になりそうだ。ただ、今年の宝塚記念では0.4秒差の6着。全くチャンスがないというほどでもない。

管理する池添学厩舎の傾向は面白い。短期免許の外国人騎手を起用してきたら勝負。これがデータから明らかだ。

池添学厩舎の騎手起用別成績(過去5年),ⒸSPAIA


過去5年で短期免許騎手を起用したケースでは【16-11-12-49】複勝率44.3%、単回収率180%、複回収率118%。JRA所属騎手の場合は複勝率31.9%、単回収率75%、複回収率76%だから一目瞭然だ。

そして、そんな池添学厩舎にとって「最強助っ人」と言えるのが騎乗予定のバウルジャン・ムルザバエフ騎手。タッグを組んだ際の成績は驚愕の【3-1-3-3】複勝率70.0%、単回収率1068%、複回収率355%。ドゥラエレーデのホープフルS14番人気Vで数字的にぶっ壊れた感は否めないが、優秀なことには違いない。

プラダリア自身、これまでレース上がりを35.4秒以上要した際は【3-0-1-2】となかなかの好成績。タフな中山芝2500mは初めてだが、適性的にはいかにもマッチする。ロマンあふれる大穴馬券を握りしめ、直線で「ムルザバエフ!」と叫ぶのも一興ではないか。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

《関連記事》
【有馬記念】スターズオンアースとソールオリエンスは消し ハイブリッド式消去法
【有馬記念】好相性の前走レースあり データと中山適性からジャスティンパレスを推奨
【有馬記念】過去10年のレース結果一覧

おすすめ記事