【2歳馬ジャッジ】キャットファイトが重賞勝ち馬を上回る好指数で圧勝 牝馬クラシックでの活躍に期待

山崎エリカ

9月2週目の2歳馬ジャッジ,ⒸSPAIA

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9月2週目の2歳戦

このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回はアスター賞を勝ったキャットファイトや、センスある競馬をみせたシックスペンスなどが出た、9月9日、10日の2歳戦について指数と評価を掲載する。

9月9日(土)中山2R 優勝馬 ララヴィエルジュ 指数-4 評価B
6月東京のゴンバデカーブースが逃げ切った新馬戦では、単勝オッズ200倍超えの11番人気ながら、後方追走から最後まで脚を伸ばして2着にきた。今回はデビュー2戦目。前走の新馬戦で好走したが、3番人気と高い支持にはならなかった。

レースは3番枠から五分のスタート、鞍上が気合いを入れて2角で2列目の最内を取ることに成功した。そのまま最内で脚を溜め、3~4角で最内から2列目に進出。直線で前2頭の外に出されると2番手まで上がり、ラスト1Fで早めに抜け出したカリーシを捉えて3/4馬身差で快勝した。

ラスト2Fは11秒8-11秒8と減速せず。この日の中山芝は前日までの雨の影響から馬場が回復していく状況。中山2Rの時点ではまだ馬場が悪く、ラスト1F11秒8は悪くない。新馬戦とは違う形でレースを進め、勝利したことに大きな進歩を感じる。レース当日の馬体重が392kgと小柄な馬で、今後も高い評価を受けにくいだろうが、良い筋肉を持っているに違いない。昇級後も面白い存在となりそうだ。

9月9日(土)中山5R 優勝馬 フォルラニーニ 指数-5 評価AA
レースは9番枠から好スタートを切り、すっと行き脚がついて2番手で折り合った。レースは淡々と流れたが、3~4角で逃げ馬に並びかけていく形。しかし、4角を逆手前で回り外に張ったが、そこから立て直して直線へ。逃げ馬に1馬身ほど差を広げられたが、再び楽々と差を詰めて並びかけ、ラスト1Fで突き抜けて3馬身半差で圧勝した。

ラスト2Fは11秒6-11秒1と急加速。これはまだかなり余力があった勝ちっぷり。中山芝2000mの新馬戦で好位から抜けてラスト1F11秒1と言えば、後に京成杯を優勝したオニャンコポンを思い出す。

母リナーテは新馬戦でラスト2F11秒3-11秒1の好内容で勝利した。一時は伸び悩んだが、最終的には重賞で2度連対するまでに成長した。本馬が新馬戦だけでGⅠ級の評価を得るには、ラスト1Fの数字がわずかに足りなかった。しかし、様々な点を考慮すれば、いずれ重賞を勝つ馬になるのだろう。

9月9日(土)中山9R 優勝馬 キャットファイト 指数-13 評価AA
6月東京のボンドガールが勝利した新馬戦では6着。次走新潟の未勝利戦はなかなか良い内容で勝利し、今回がデビュー3戦目となった。レースでは6番枠から五分のスタートを切って、すっと内に入れて3番手を追走。終始最内が開いており3~4角では最内から2列目まで上がり、直線序盤で逃げ馬の外に出された。ラスト1F標辺りで先頭に立ち、そのまま突き抜けて5馬身差で圧勝した。

ゴール板を過ぎてもまだ伸びていくような走り。それはラスト2Fの11秒6-11秒3の数字にも出ている。とにかく強く、今回で記録した指数は新潟2歳Sの優勝馬アスコリピチェーノやダリア賞の優勝馬コラソンビート、未勝利戦を高指数勝ちしたチェルヴィニアをわずかに上回った。

つまりキャリア3戦目ではあるが、新馬戦では先着を許したライバルたちを、指数上で逆転したということ。ラスト1Fの伸びからまだ余裕がありそうだし、伸びしろも感じる。今後の牝馬クラシック戦線で活躍が期待される馬となりそうだ。

9月10日(日)中山2R 優勝馬 コイヌール 指数-5 評価B
7月福島の新馬戦では勝ち馬のエコロマーズを徹底マークしながら、伸びきれずの2着だった。今回はデビュー2戦目、1番枠から好スタートを切って、好位の最内を追走した。道中は新馬戦時ほどムキになることなく、3~4角で他馬が動いてもじっと我慢し、直線に向いてからスパート。ラスト1Fで抜け出すと、外から猛追するアバンデルを抑えて、接戦を制した。

アバンデルとはアタマ差だったが、3着馬には4馬身以上の差を付けており、指数は未勝利戦としてはなかなか良い。ラスト2F11秒8-11秒5も評価できる。

今回は新馬戦で厳しい競馬をしていたことが好結果に繋がったが、今後も経験を積みながら上のクラスを目指す馬となりそうだ。また、今回の2着馬アバンデルは未勝利戦としてはかなり優秀な指数を記録しており、遠くないうちに勝ち上がるだろう。

9月10日(日)中山5R 優勝馬 シックスペンス 指数-3 評価AA
6番枠から頭を上げながら好スタートを切り、二の脚の速さで2列目まで上がったが、2角ですっと控えて好位の最内に収めて追走した。競馬センスの良さを感じさせる馬で、無駄なエネルギーを使わず、3~4角の最内から直線でもラチ沿いの狭いスペースを付いて抜け出した。結果、外から鋭い脚で伸びてくるアタラヨにアタマ差で伸び勝った。

ラスト2Fは11秒9-10秒7と驚きの数字。芝1600mの新馬戦で加速しながらラスト1F10秒7を出した馬と言えばナミュールを思い出す。今回は最小限のロスで競馬ができたが、秘めた瞬発力は相当なもの。当然、重賞戦線で活躍する馬になっていくだろう。

また、このレースで強烈なインパクトを残したのは2着アタラヨ。スローペースから最後に向けて加速していく流れを終始外を回りながら、最後の直線では一気に突き抜けそうな脚色は強烈なものがあった。次走の内容次第ではこちらもかなり上を目指せる馬となりそうだ。

9月9日(土)阪神3R 優勝馬 アクアヴァーナル 指数-2 評価A
7月中京のミカエルパシャが勝利した新馬戦では離されての4着だった。今回はデビュー2戦目。6番枠からスタート後に内の馬と接触。新馬戦でも進みが悪かったが、今回もやる気がなくなったかのように前6頭から大きく離された。

1角を回った辺りでは「これは大敗だ」と思わされたが、そこから徐々に前と差を詰め、向正面では好位に上がった。3角では逃げ馬に並びかけていき、4角ではもう先頭に立つ堂々の競馬。直線序盤ではいったん外の馬にかわされたが、そこから差し返してアタマ差で勝利した。

今回は決して優秀な指数で勝利したわけではない。しかし、スタート直後のロス、そこからかなり無駄に脚を使い、最後に差し返して勝利。指数以上の強さ、スタミナの豊富さを感じさせる内容だった。昇級後もかなり楽しめそうだ。

9月9日(土)阪神5R 優勝馬 メイショウサチダケ 指数-2 評価B
2番枠からトップスタートを決めてハナを主張した。このレースはスタート直後に急に内に逃避して競走中止した馬がいたり、2番手から折り合いを欠いた馬に絡まれたりした中で、自分のペースを貫いての逃げ。最後の直線ではもうひと脚を使って後続を引き離し、3馬身差で完勝した。

ラスト2Fは11秒3-11秒4。スタート直後に逃避して競走中止した馬がいた中、自らレースを作ってほぼ減速しなかったことに価値があり、センスの良さも感じる。なかなか面白い馬になりそうだ。

9月10日(日)阪神4R 優勝馬 ビーグラッド 指数-3 評価B
5番枠からまずまずのスタートを切り、内の馬にやや抵抗されながらもじわっとハナを主張。後続を引き離し気味に逃げて3~4角で少し息を入れ、直線を向いても手応え十分。追い出されてからグンとは伸びなかったが、しぶとく伸び続けて2馬身半差で快勝した。

ラスト2Fは10秒9-11秒4とやや伸びを欠くものとなったが、逃げてそれなりに速いタイムで走ってのものだけに、仕方がない面もある。使われながらの上昇に期待したい。

2023年9月2週目の2歳馬PP指数,ⒸSPAIA


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)キャットファイトの指数「-13」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.3秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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