【阪神C】4歳の実績馬ママコチャ中心も相手は混戦 波乱の使者は1400m巧者グレイイングリーン

勝木淳

2023年阪神カップに関するデータ,ⒸSPAIA

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1着賞金6700万円

関西圏最後の重賞は例年どおり阪神Cだ。1着賞金6700万円はGⅡでもトップクラス。同じ1400mのスワンSより800万円も高い。この距離を得意とする馬にとって、是が非でも取りたいレースだ。スプリントでもなく、マイルでもない。1400mだからこそ輝ける馬は確実にいる。そんな馬たちの最大目標たるレースが暮れにあるのも、多様性の象徴たる競馬らしい。データは過去10年間のものを使用する。

阪神Cの人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気は【2-0-2-6】勝率20.0%、複勝率40.0%とやや物足りない。2番人気【1-3-1-5】勝率10.0%、複勝率50.0%、3番人気【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%まで含めるとそれなりの数字になるが、必ずしも手堅いレースとはいえない。

7番人気【1-1-1-7】勝率10.0%、複勝率30.0%、8番人気【2-0-0-8】勝率、複勝率20.0%、10番人気以下【1-1-3-77】勝率1.2%、複勝率6.1%と伏兵の台頭も十分あり得る。

阪神Cの年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢の傾向ははっきりしており、3歳【3-3-2-19】勝率11.1%、複勝率29.6%が断然で、4歳【2-2-2-22】勝率7.1%、複勝率21.4%、5歳【2-3-5-38】勝率4.2%、複勝率20.8%ときれいに年齢順になる。若い馬を中心に組み立てつつ、高齢馬に注意しよう。


距離延長より短縮、そして同距離

とはいえ今年は4歳ママコチャ、アグリ、5歳グレナディアガーズ、6歳ウイングレイテストなど古馬勢が充実している。年齢の傾向通り3歳中心で進めていいものか迷うところだ。そこで、前走成績を参考に候補をあぶり出してみたい。

阪神Cの前走クラス別成績,ⒸSPAIA


阪神Cの前走GⅠ、レース別成績,ⒸSPAIA


まずは前走GⅠ【5-6-5-37】勝率9.4%、複勝率30.2%に注目しよう。ママコチャなどが当てはまる前走スプリンターズSは【1-1-0-12】勝率7.1%、複勝率14.3%。GⅠであっても1200mからの距離延長はやや分が悪い。着順別の内訳は4着【1-0-0-0】、6~9着【0-1-0-1】、10着以下【0-0-0-8】で、前走3着以内は18年ラインスピリット(スプリンターズS3着→阪神C10着)しかいない。

そもそもスプリンターズS好走馬は香港に回ることが多く、あえてここに出走する馬が少ない。このデータをしてママコチャを疑問視するのは早計だろう。距離を縮めて大成しただけに、再度の距離延長は分からないが、1400mの安土城Sやマイル戦で実績を積んできた。距離が原因で負けるとは思えない。データから買えそうなのは7着アグリ、8着ピクシーナイトあたりだろう。この舞台で阪急杯を勝ったアグリは当然、コース替わりはプラスだ。

主要ルートは頭数も多い前走マイルCS【3-4-4-23】勝率8.8%、複勝率32.4%だろう。距離短縮がいいのは急坂がある阪神らしいデータでもある。ここは2~5着【1-2-2-4】、10着以下【2-2-1-13】勝率11.1%、複勝率27.8%。10着エエヤンは3歳馬で、データ上は強く推してもいいぐらいだ。春は中山で3連勝、秋は東京、京都で連敗という分かりやすい戦歴で、阪神に替わって巻き返してもいい。問題は力関係だろう。13着ダノンスコーピオンが候補にあがる。

前走GⅡ【2-0-2-22】勝率7.7%、複勝率15.4%では1400mシリーズのスワンSが【1-0-1-16】勝率5.6%、複勝率11.1%。着順内訳は1着【1-0-1-0】、2着以下【0-0-0-16】。ウイングレイテストだけが残る。スワンS、阪神C連勝となれば、昨年ダイアトニックと同じだ。

阪神Cの前走スワンS、開催場別成績,ⒸSPAIA


しかしスワンSはここ2年、阪神で行われていた。今年は久々に京都に戻ったわけだが、スワンSが京都だった年は【0-0-0-10】、阪神だと【1-0-1-6】。同舞台だったからつながったということだ。外回りで平坦の京都と、内回り急坂の阪神では同じ1400mでも結びつきは薄い。京都スワンS経由で負けた10頭のなかには、20年ステルヴィオ(2番人気12着)、13年マジンプロスパー(3番人気12着)など人気を裏切るケースもある。ウイングレイテストにとっては試練だろう。

阪神Cの前走OP・L、距離別成績,ⒸSPAIA


最後に前走OP・L【2-1-1-46】勝率4.0%、複勝率8.0%について、距離の傾向をみる。GⅠの傾向と同じで、距離延長【0-0-0-13】、同距離【1-1-1-19】勝率4.5%、複勝率13.6%、距離短縮【1-0-0-14】勝率、複勝率6.7%と、やはり1400mのスペシャリストがいい。オーロC2着グレイイングリーンは波乱の使者となるか。今春、阪急杯は0.6差4着とあと一歩だった。

阪神Cに関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。



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