【2歳馬ジャッジ】アルトゥームが同週中京芝で最速の上がり3Fタイムを記録 重賞戦線での活躍に期待
山崎エリカ
ⒸSPAIA
12月1週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は同週の中京芝で最速の上がり3Fタイムを記録したアルトゥームや葉牡丹賞を勝ったトロヴァトーレなどが出た、12月2、3日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
12月2日(土)中山3R 優勝馬 エリカエスティーム 指数-4 評価A
6月東京のゴンバデカーブースが勝利した新馬戦では1番人気に支持されていた。レースはやや出遅れて軽く促されると、位置を上げながら3角過ぎまで掛かって消耗し、最後は伸びきれずの4着。今回はそれ以来の休養明けの一戦だったが、前走の未勝利戦2着だった馬たちを差し置いて、ここでも断然の1番人気に支持された。
本レースは5番枠から好スタートを決め、直後はやや行きたがるような感じだったが、好位の最内に収めて追走。レースが緩みなく流れたこともあり、楽に折り合いもついていた。3~4角で最内から進出して4角では逃げ馬の直後。直線序盤で逃げ馬の外に出されると力強く伸びて2番手に上がった。ラスト1Fでは抜け出し1馬身1/4差で完勝した。
スタミナが不足する休養明けながら、緩みない流れを好位から抜け出した内容は評価できる。次走、差す競馬でどこまで弾けるか楽しみな馬だ。
12月2日(土)中山4R 優勝馬 モンサンアクシア 指数-14(ダート) 評価B
6月東京のダ1400mの新馬戦では出遅れて後方に置かれて6着。次走中山のダ1800mの未勝利戦では五分のスタートを切ったが、出脚がやや遅く、中団を追走して3着。今回は前走成績があまり良くない馬や指数が平凡な馬が揃ったこともあり、1番人気に支持された。
前走は3角で中団馬群の中目。ここで前の馬が下がった影響で一旦後退し、捌いて外に持ち出すロスがあったが、前に行けない弱みが出たようなもの。今回は押し出された印象の強い1番人気馬と見ていた。
このレースでは一転して前へ。2番枠から好スタートを決めてハナを主張すると、2着馬に9馬身、3着馬にそこから7馬身、それ以下にも決定的な差をつけて圧勝。人気以上の強さを見せた。
今回記録した指数は1クラス上でも通用するレベル。しかし、上がり3Fタイムは39秒3も掛かっており、スタミナは相当あるが、スピード面ではやや不安がある。条件は選びそうだが、すでに1クラス上で通用する指数は持っているだけに、再度の好走は見込める。
12月2日(土)中山9R 優勝馬 トロヴァトーレ 指数-11 評価AA
9月中山の新馬戦では、同週の中山芝最速タイの上がり3Fタイムで快勝した価値ある走りから、とても高い評価をした。今回はそれ以来の休養明けの一戦で馬体重10kg増と、筋力アップで成長している姿を見せた。
レースは1番枠からまずまずのスタートを切り、外の馬を行かせて1角では中団の内目。向正面で3列目の内、3~4角では中目に出して4角で外を狙ったが出せず、直線序盤では前が壁になった。そこでワンテンポ待って外の1頭分のスペースを割ってスパッと伸び、突き抜けて2馬身差をつけて快勝した。
新馬戦で古馬と比較して上がり3Fタイムが優秀な馬は、後々かなりの成長を見せることが多い。鞍上のW.ビュイック騎手が「ダービー候補に名乗りを挙げる一頭だ」とコメントしているように、クラシック戦線でも当然活躍は期待できる。ただ、このタイプは古馬になってから強くなる馬も多いだけに、長い目で見ていきたい。
12月3日(日)中山3R 優勝馬 ウインマクシマム 指数-5 評価A
8月札幌の新馬戦では2着。次走東京の未勝利戦では2番手からラスト1Fまで仕掛けを待ち、トラジェクトワールとの一騎打ち。同馬にアタマ差で敗れたが、後続に3馬身以上の大きな差をつけ、好指数を記録した。
今回はデビュー3戦目。2番枠から好スタートを決め、押して積極的に位置を取りにいった。外の馬にハナを譲ろうとしていたが、外の馬もハナに行きたがらず、枠の並びとスピードの違いから逃げる競馬となった。マイペースの逃げで、最後の直線ではもうひと伸びして1馬身1/4差で完勝した。
前走比ではやや指数ダウンでの勝利だったが、自らレースを作って勝利することはとても難しいこと。指数ダウンは評価を下げることにはならない。むしろ苦しい競馬をしながら、苦しく感じさせない勝利を決めたことに数字以上の潜在能力の高さを感じる。昇級後も楽しめる馬になるだろうし、最終的には重賞クラスで戦っていく馬になると見る。
12月3日(日)中山5R 優勝馬 クリスマスパレード 指数-4 評価A
レースは12番枠から好スタートを決めたが、外からヒラボクヒーローがダッシュ良く内に切ってハナを主張したので、控えてその外2番手からの追走。道中は手綱を動かしながら2番手をキープ。ヒラボクヒーローは目標にされて、数字以上に厳しいペース、展開だったように見えた。3~4角で同馬に並びかけ、4角では膨らんだが、直線序盤で早々と先頭。そこからはジワジワとした脚だったが、最後まで先頭を守ってゴールした。
強気な競馬で同日3Rの2歳未勝利戦と同じタイムでの勝利。道中のペースがこちらの方が速かったぶん、同じ走破タイムでもこちらの方が指数評価は低いものとなった。しかし、好内容での新馬勝ちだったことは確か。新馬戦としては走破タイムがやや速かったので多少疲れを残しそうな印象はあるが、潜在能力はかなり高そう。今後も活躍してくれそうだ。
12月3日(日)中山6R 優勝馬 グランオルカ 指数-17(ダート)評価A
新馬戦では逃げて2着、前走の未勝利戦は2番手から抜け出して快勝。ただ指数はそこまで優秀だったわけではなく、底を見せていない強みはあっても、昇級戦の今回で即通用かは微妙なところと感じていた。
レースは5番枠から出遅れ、後方から追いかけながらの追走。序盤はキックバックを嫌がる素振りを見せていたが、それでも中団馬群の後ろに取りつくと、そこで息を入れた。3~4角で中団中目を通って4角出口で一番外に出されると、脚が溜まっていたことで豪快に伸びた。結果は2着馬に2馬身差、3着馬に5馬身半差をつけて完勝した。
指数は古馬2勝クラス勝ちレベルのものを記録。展開に恵まれた面があったことは確かだが、キャリア3戦目の2歳馬としては優秀な指数だ。ここからは距離延長に対応できるかがカギとなるが、今後も楽しめそうだ。
12月2日(土)阪神5R 優勝馬 ビザンチンドリーム 指数-4 評価AA
レースは5番枠からゆっくりとしたスタートで出遅れ。鞍上が促してもなかなかスピードが乗らず、まだ幼い感じで後方3番手からの追走となった。道中で行きたがるのをなだめながら中団の外まで上がり、3~4角の外を回って、4角ではチャウチャウチャウの後ろから勢い良く進出。直線ではグイグイ伸びて、2着馬に3馬身、3着馬には5馬身の差をつけて完勝した。
スタート直後のトコトコした走りと最後の直線で見せた豪脚のギャップが凄く、インパクトある勝ちっぷり。ラスト2Fは11秒5-11秒3。上がり3Fタイム33秒9は今回の出走メンバーでは断トツの数字(次点が34秒8)。幼さを見せながらも秘めた素質は相当なものだろう。現状は脆さが同居している印象はあるが、最終的には重賞戦線で活躍していく馬になりそうだ。
12月3日(日)阪神2R 優勝馬 クランフォード 指数-9 評価AA
10月京都の新馬戦は、逃げてラスト2F11秒0-11秒0で3着馬に3馬身半差をつけて2着。勝利したタガノエルピーダとともにかなりの好指数を記録した一戦は、強烈なインパクトを残した。今回はデビュー2戦目、単勝オッズ1.5倍の圧倒的な支持を受け、どのくらいの指数で勝利するのかに注目していた。
4番枠からまずまずのスタートを切ったが、外のコスモバシレウスがダッシュ良くハナを主張したため、それを行かせて2番手を追走。4角で同馬に並びかけ、直線序盤で早々と先頭に立った。結果はそのまま押し切り勝ち。2着との差が1馬身3/4差に留まったのは意外だったが、3着馬には5馬身3/4差と大きく離した。
走破タイムは古馬と比較しても優秀。1クラス上で勝ち負けになる指数を記録した。すでに1勝クラス級の指数を記録しているので、数戦のうちに1勝クラスは突破するだろう。重賞で活躍する馬となるはずだ。
12月3日(日)中京4R 優勝馬 ナイトスラッガー 指数-5 評価A
11月京都のシヴァースが勝利した新馬戦では2着。同レースはラスト2F11秒6-11秒1と評価できる一戦で、ラスト2F目で内の馬が外に斜行して立て直すロスがあっての2着と強さを感じさせた。
今回はデビュー2戦目、4番枠から五分のスタートを切って、好位直後の中目を追走。4角で2列目の中目に上がって、直線序盤で詰まりかけてまごつく場面もあったが、進路が開くと力が違うとばかりに一気に突き抜け、3馬身半差で圧勝した。
ラスト2F11秒0-11秒1、上がり3Fタイムも33秒7と速い。まだ余裕を感じさせる走りから、昇級後も活躍して上を目指す馬となりそうだ。
12月3日(日)中京5R 優勝馬 アルトゥーム 指数-5 評価AA
レースは4番枠からまずまずのスタート。そのまま先団馬群を見る形で単独6番手を追走した。3~4角で中目を通って4角出口で大外に出されると、フットワークの回転が上がり一気にスピードアップした。内のインクルージョンとの併せ馬の形でグングン伸びた。最後はやはり追うものに強みがあり、本馬が半馬身差で勝利した。
ラスト2Fは驚きの11秒2-10秒9。従来との比較ではラスト1Fの数字は0.3秒くらいの割引が必要なので、11秒2-11秒2くらいか。それでも減速することなく、上位2頭で3着以下に決定的な差をつけた走りは高く評価できる。
また本馬の上がり3Fタイム33秒4は同週の中京芝では、古馬を含めてNo.1。これはさらに高く評価できる。今回の上位2頭はかなり強く、アルトゥームは今後の重賞での活躍が期待できるだろう。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)アルトゥームの指数「-5」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.5秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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