【2歳馬ジャッジ】能力全開で楽しみな逸材ゼーゼマン 上がり3F33秒3の鋭い末脚を発揮

山崎エリカ

11月4週目の2歳馬ジャッジ,ⒸSPAIA

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11月4週目の2歳戦

このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は優秀な上がりを出したゼーゼマンや、京都2歳Sを勝ったシンエンペラーなどが出た、11月25、26日の2歳戦について指数と評価を掲載する。

11月25日(土)東京5R 優勝馬 ゼーゼマン 指数-5 評価AA
5番枠から出遅れたが、無理して位置を取りにいかず、じわっと最内に入れ中団馬群の後方を追走。3角で包まれ4角で中目に誘導したが、まだ包まれたままで直線ではズラリと前が壁になった。そこでワンテンポ待ち、徐々に大外へ持ち出した。残り300mくらいでようやく進路を確保すると、そこからグングン伸びて1馬身1/4差で完勝した。

3着以下は2着馬から差のない決着となり、レースの着差構成からは一見、凡戦のようにも思える。しかし、本馬の上がり3F33秒3は同日の他のレースと比べてもなかなか優秀。ラスト2Fの11秒3-11秒2も悪くはない。

走破タイムの1分34秒9も道中のペースを考えれば悪くない。結論として、この新馬戦は質の高いメンバーが揃っていたため、着差が小さいわりになかなかの好指数決着になったと判断した。

芝1600mの新馬戦を後方から差し切ったというレース内容は本来あまり評価すべきではないが、本馬は最後の直線でスムーズに走れておらず、能力全開だったわけではないだろう。レース後、左前の橈骨遠位端に骨膜炎が発症したとの報。ストライドが大きく、もっと距離が延びて良さそうなフットワークだけに、来春~夏の上がり馬となり、菊花賞を目指すことになるだろうか。次走以降の飛躍が期待できる。

11月26日(日)東京5R 優勝馬 ブレスワード 指数-8(ダート)評価A
4番枠からまずまずのスタートを切って、そこから促されて好位馬群の後方内目を追走。3~4角で外に出しながら押し上げていったが、4角手前では手綱が動いており、良い手応えではなかった。しかし、直線で外に完全に出されると、なかなか回転の速い美しいフットワークで、一完歩ごどに前との差を詰めた。残り200mから100mで前3頭をまとめて差し切り、残り100mで先頭に立つと1馬身3/4差で完勝した。

上がり3Fタイム37秒0は同日の他のレースと比べても悪くない。ラスト2Fは12秒2-12秒1と、ダートの新馬戦で最後まで加速。以前ならば高評価すべき数字だが、今秋以降の数字は以前との比較から判断しても割引が必要。ただ、映像を見ると最後までしっかり伸びており、秘めた瞬発力を感じさせた。なかなか面白い馬に成長していきそうだ。

11月26日(日)東京6R 優勝馬 グローリーアテイン 指数-3 評価B
8番枠から五分のスタートを切って、そこから促されて好位直後の外を追走。3角過ぎまでは折り合い重視で乗られていたが、4角外からじわっと動き、直線で前を射程圏に入れるとグングン伸びた。ラスト2Fで2番手に上がって、残り300mでは早め先頭に立ったウォータースケイプとともに後続を引き離しての一騎打ち。この形になるとどうしても追うものの強みが出やすく、結果はグローリーアテインがクビ差で勝利した。

3着馬には3馬身半差をつけており、上位2頭はなかなか強かった。ラスト2Fは10秒9-11秒2。これは不思議と数字以上にスピード感があったように見えた。こういった着差構成の上位入線馬は、数字以上に強いことが多い。特に好スタートを決め、序盤で先頭、道中2番手と勝ちにいく競馬で2着だったウォータースケイプは内容も濃い。今後の成長が楽しみな馬たちだ。

11月25日(土)京都3R 優勝馬 ジャスティンアース 指数-5 評価A
前走の新馬戦は1番人気に支持されたが、やや出遅れて前半は折り合い重視で最後方を追走。3~4角でかなり外から位置を押し上げて直線半ばで2番手のプレリュードシチー(後に京都2歳S2着)と追い比べの形に持ち込んだが、最後に甘くなり3着という結果だった。

今回はデビュー2戦目。7番枠から五分のスタートを切ったが、ここでも新馬戦同様にやや行きたがるところを抑えて好位の外目で流れに乗った。3~4角の外目からゆっくりと前に取り付いて手応え抜群で4角を回り、直線では早々と先頭。残り100mでもうひと伸びして、後続馬たちの追い上げを完封し、1馬身3/4差で完勝した。

ラスト2Fは11秒6-11秒4。早め先頭からしっかり伸びた内容は高評価できる。今回は新馬戦から格段に良化した内容で、潜在能力の高さを感じさせた。今回負かした相手は未勝利クラスとしてはかなり強い馬たちが多く、この先の重賞戦線で活躍してくれそうだ。

11月25日(土)京都5R 優勝馬 ヤマニンアストロン 指数-3 評価B
8番枠から好スタートを決めて、内の2頭を行かせて3番手を追走。3~4角で2列目まで上がり、4角では外から押し上げて直線序盤で先頭。強気な競馬だったが、内の馬たちが失速していくなかで最後までしっかり伸びて2馬身差で快勝した。

芝1400mの走破タイム1分22秒6は、時計がやや掛かる馬場状態の京都としてはまずまず。あまりにもタイムが速すぎるとダメージが残りやすくなってしまうので、このくらいがちょうど良いかもしれない。

ラスト2Fは11秒4-11秒6。本馬の上がり3Fタイムは34秒7。これらの数字はそこまで高い評価はできない。しかし、このレースの着差構成を見ると3着馬には5馬身もの差をつけている。こういった着差がつくレースは、勝ち馬が数字以上に強いことも多い。早め先頭から押し切った内容も評価できる。地味ながら強くなりそうだ。

11月25日(土)京都11R 優勝馬 シンエンペラー 指数-11 評価AA
前走の新馬戦はラスト2F11秒1-11秒0で、2着馬に3馬身差をつけて完勝し、かなりの高評価をした。今回は1戦1勝馬ながら、凱旋門賞馬ソットサスの全弟という血統もあってか1番人気に支持された。

前走時はトップスタートを決めたが、今回は5番枠からやや出遅れ。促されても進みが悪く、後方からの追走となった。道中は後方の内目を追走し、3角手前で中目のスペースを拾いながら押し上げ、3~4角で狭いところを通って中団辺りの位置で直線へ。直線序盤で馬群を捌いて3列目まで上がり、ラスト1Fでしぶとく伸びてまた馬群を捌いて抜け出し、半馬身差で優勝した。

鞍上のJ.モレイラ騎手は、今秋の競馬で前が詰まってスムーズさを欠く競馬が目立っているが、ここも直線で外に出さずに中目を割ることを選択。それが吉と出て、しっかりゴール前で差し切った。

今回は2着以下との差は僅か、指数は重賞としては平凡。ペースが上がったことで展開にもやや恵まれた印象がある。ただ1戦1勝馬はちょっとしたことで能力を出し切れないことが多々ある。それを考慮するとスタートが悪く、デビュー戦とは異なるレース内容でもしっかり勝利したことは評価できるだろう。

全兄のソットサスは敗戦を糧に少しずつ強くなっていった馬。シンエンペラーも今後取りこぼすレースは多々ありそうだが、兄同様にジワジワと成長していくのだろう。

このレースで気になったのは、指数上位に評価していた札幌2歳S上位馬のギャンブルルーム、パワーホールの見どころない敗戦。今回勝負ではないパワーホールの敗戦はともかくとして、ギャンブルルームは3~4角の好位の中目で包まれる不利があったにせよ、進路が開いてからも伸びず、不可解な大敗だった。

パワーホールも想定より先行争いが激化したことを考慮しても、直線で追われても全く反応なく下がっていくような馬ではない。札幌2歳Sが想像以上に負担の大きいレースだったのかもしれない。

2023年11月4週目の2歳馬PP指数,ⒸSPAIA


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ゼーゼマンの指数「-5」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.5秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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