【2歳馬ジャッジ】不利を跳ね返したステレンボッシュは重賞でも大注目
山崎エリカ
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7月4週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は大ロスを跳ね返して勝ち切ったステレンボッシュと、優等生な競馬で勝ち上がったセキトバイーストなどが出た、7月22日、23日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
7月22日(土)福島5R 優勝馬 アレグロブリランテ 指数-2 評価B
4番枠からまずまずスタートを切って、前を行く3頭を見ながら好位の中目を追走。向正面で外からアーマルコライトが捲って一気に先頭に並びかけると、それを追いかけて2列目3番手で3角へ。3~4角では前2頭の内から先頭に立とうとする勢いだったが、最内のキットハナガサクに張られてポジション後退。直線では伸びないかと思われたが、最後にグイッと伸びて前を行く同馬を差し切った。
このレースでは2着と半馬身差だったが、3着とは3馬身差をつけて勝利した点は評価できる。ラスト2Fは12秒4-12秒5。減速度合いは少ないので余力はあるように感じる。ただし、上がり3Fタイムは36秒8。時計の掛かる福島最終週の馬場ではあるが、良いとは言えない。今回の走りは数字面でそこまで高い評価はできないが、次走以降の上昇が期待できそうだ。
7月23日(日)福島5R 優勝馬 インビジブルセルフ 指数-3 評価A
セレクトセールで2億5000万円(税抜き)で取引された金子HDの馬ということもあり、断然の1番人気に支持された。3番枠から五分のスタートを切り、しばらくは中団馬群の中目を追走。しかし、ペースが落ちた向正面では行きたがって、先頭列まで上がり、そこで何とか折り合いをつけて一列下げる形になった。3~4角の外から上がって4角では2列目の外あたり。直線ではジワジワ差を詰めて、図ったようにゴール寸前で差し切った。
決してスムーズなレースではなかったが、ラスト2Fは12秒5-12秒1秒となかなか評価できる加速を見せた。大型馬でエンジンが掛かるまでに時間を要したが、高額の所以を感じさせる美しい走り。まだ本気で走っている感じではなく、もっと奥がありそう。いかにも距離が延びてこそというタイプで、今後は楽しめる存在になりそうだ。
7月22日(土)中京5R 優勝馬 ルクスノア 指数-3 評価B
3番枠から好スタートを切って序盤は2番手、外からブルーサンが上がってきたので、そこで控えて位置を下げ、単独3番手を追走。4角では同馬が外に逸走し、その外を走っていたエヴァンスウィートはさらに外に振られ、ポッカリと進路が開いた。直線では逃げ馬を早々に交わして先頭。あとは独走になり、結果2着に3馬身差、3着には5馬身半差をつけてゴールした。
レースを見たあと、かなり高い指数を記録したように感じたが、実際はラスト2F11秒2-12秒0と減速。上がり3Fタイム35秒1は悪くないが、着差ほど高い指数とはならなかった。それでも好位から抜け出したレース内容は良く、高評価すべきかのようにも思えるが、一つ大きな懸念点がある。それは減量騎手騎乗だったことだ。
新馬戦はスローペースの決め手比べになることが多く、他のレース以上に減量騎手の優位性が出やすい。新馬戦を減量騎手で好パフォーマンス勝ちだった馬が意外とその後伸びないことがあるのは、そのためだろう。今回の走りは着差など見ても派手ではあったが、減量騎手騎乗であったことは覚えておきたい。
7月23日(日)中京1R 優勝馬 セキトバイースト 指数-7 評価AA
前走はルージュスタニングが勝利した中京の新馬戦で2着。ラスト2Fは11秒6-11秒4と優秀で、その流れのなか、勝ち馬と同じ上がり3F最速タイムで2着まで追い上げていた。前走のレースは大きなダメージを残すようなものとは思えず、今回は順当に上昇が期待できそうだった。ここで単勝オッズ1.7倍の支持を受けたのも妥当だったと言える。
レースは4番枠から好スタートを切って、少し掛かるような行きっぷりだったが、内の2頭が前を主張すると、すっと3番手に控える優等生の競馬。そのまま直線で外に出されると、ラスト1F標地点で堂々と先頭に立ち、4馬身差で完勝した。
今回は新馬戦の時よりも積極策で、しっかりと勝ち切ったことは評価できる。上がり3Fタイム34秒6は、この週の中京芝1600mとしてはかなり優秀なタイム。指数も1クラス上で通用可能なものとなり、様々な点で高評価できる。
ここまでの順調さから重賞でもチャンスが十分あり、今後が楽しみだ。また、新馬戦でセキトバイーストに勝ったルージュスタニングにもさらに警戒が必要と言える。
7月23日(日)中京5R 優勝馬 マテンロウゴールド 指数-2 評価A
セレクトセールで1億4500万円(税抜き)で取引された高額馬で、叔母に牝馬二冠のミッキークイーンがいる良血ということもあり、今回の新馬戦では1番人気に支持された。
どんなレースになるのかと見ていたが、本馬は4番枠から好スタートを切って数完歩は良かったが、その後は口向きが悪くあまり進んで行かず、道中は中団外を追走することになった。それでも3~4角の外から徐々に前との差を詰め、4角では2列目の外付近。直線では堂々と突き抜けるのかと思いきや、ここでも口向きが悪く、最後は叩き合いを半馬身差でなんとか制した。
ラスト2Fは11秒6-12秒2。最後に伸びそうで伸びきれなかったあたりが数字にも出ている。上がり3Fタイム35秒4はこの週の中京芝2000mとすればマズマズだが、数字的にはそこまで高い評価はできない。しかし、高額馬らしく、フットワークには独特の大物感がある。現時点では過大評価はできないが、かなり素質は高そう。将来的には面白そうだ。
7月22日(土)札幌5R 優勝馬 アセレラシオン 指数-3(ダート) 評価B
4番枠から五分のスタートを切り、中団馬群の中目を追走。向正面では砂を被って嫌がったが、気合を付けられて特に怯む面は見せなかった。3~4角では2列目まで上がり、4角出口で外へ。直線で追い出されるとグイっと首が下がり、美しいフォーム。最後までしっかりと伸び続け、2着に3馬身、3着に6馬身差をつけてゴールした。
ラスト2Fは12秒9-13秒1と大きく減速せず。最後の直線での伸びが数字にも出ている。ただ、走破タイム1分48秒6、上がり3Fタイム38秒7秒はこの日の札幌ダートの古馬と比較するとそこまで優秀ではなく、指数はそこまで高くならなかった。しかし、最後の加速感は評価できるもので、フットワークも良い。今後の成長が期待できる。
7月23日(日)札幌5R 優勝馬 ステレンボッシュ 指数-3 評価AA
6頭立てのレースで本馬含めて2頭が出遅れ、好スタートを切ったのはカズアブディーンのみだった。このため楽に2番手外を追走と、流れが向いたように見えたが、なんと1角でカズアブディーンが外に逃避。これに巻き込まれて1角でかなり外に膨らみ、大きな距離ロスが生じた。
それでも立て直し、内に入れた。1角の影響でポジションは中団中目の5番手まで下がってしまったが、3~4角では2列目までポジションを上げ、直線序盤では馬の間をすんなり割るレースセンスの良さを見せた。不利などなかったかのように突き抜け、後続に1馬身半差をつけて完勝した。
まず、あれだけの不利がありながら勝利したことは驚きだ。しかも、ラスト2Fは余裕を感じさせつつ、11秒6-11秒6と減速せずにフィニッシュした。ただでさえ新馬戦で不利があった馬は次走で前進することが多い。指数平凡でも新馬戦で不利がありながら勝利した馬が、次走で重賞を勝ったという例は過去にもある。これは次走、大注目と言えそうだ。重賞級の馬と見て良いだろう。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ステレンボッシュの指数「-3」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.3秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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