【ジャパンC】複回収率235%、伝家の宝刀「ヴィクトリアマイル・リターン」 データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

2023年ジャパンカップの穴馬のイメージ,ⒸSPAIA

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データで見る「穴候補3頭」

今週日曜の東京メインはジャパンカップ。GⅠ・5連勝中の「天才」イクイノックスと、三冠牝馬リバティアイランドによる世紀の一戦が実現する。週末のことを考えると今からワクワクが止まらない。

正直、予想の上でこの2頭に逆らうのは無謀だろうが、だからこそ馬券は3頭目に食い込んでくる存在を的確に見極めてシャープに仕留めたいところ。今回も様々な切り口のデータを駆使し、3頭の穴候補を導き出した。


中距離GⅠ馬の「ヴィクトリアマイル・リターン」 スターズオンアース

まず1頭目はスターズオンアース。「それ穴か?」という指摘が聞こえてきそうだが、今週に関してはイクイノックスとリバティアイランド以外ならOKということでご容赦いただきたい。

時計の針を前走のヴィクトリアマイル(以下、VM)に戻す。VMはレース創設以降ずーっと明確な傾向がある。それが、「中距離GⅠ馬がよく出走するが、距離適性の違いでことごとく苦戦する」というもの。データで示そう。

ヴィクトリアマイルにおけるデータ(通算),ⒸSPAIA


VMの全18回で、それまでに「2000m以上のGⅠを勝っていた馬」の成績は【4-5-2-22】で、単回収率は26%、複回収率は47%の低水準。いかに難しく、妙味のない条件であるかが分かる。

本題はここから。上記の馬たちの次走成績(JRAのみ)を調べると【2-4-7-14】複勝率48.1%。次走が2000m以上だったケースに限ると、【0-3-5-5】複勝率61.5%、複回収率235%となる。本来は中長距離向きの牝馬が、番組の都合でVMを使って苦戦する。そのせいで次走はやや人気を落とすが、得意な距離に戻るので当然のように巻き返す。この様式美だ。ショウナンパンドラ、ミッキークイーン、デアリングタクトあたりの戦績がまさにこのパターンである。

これに合致するスターズオンアース。今回と同じ東京芝2400mではオークスを制している。本質的には広いコース、長めの距離が合うタイプで、近3走は内回り→内回り→マイルといずれも適性とズレていた。相手は強くなるが、舞台設定としては文句なしだ。


鬼に金棒、日本馬に短期免許騎手 ヴェラアズール

2頭目はヴェラアズール。昨年のこのレース覇者であり、鞍上には短期免許で来日中のH.ドイル騎手が予定されている。

外国所属騎手の成績(過去10年),ⒸSPAIA


欧州の平地競走がオフシーズンにあたることもあり、ジャパンCは短期免許騎手が豪華なラインナップとなるのも恒例だ。短期免許騎手が日本馬に騎乗したケースは過去10年で【5-2-2-14】複勝率39.1%、単回収率147%、複回収率128%。全部買いでプラス収支だ。

ちなみに上記のうち1~4枠は【5-1-2-6】勝率35.7%、複勝率57.1%、単回収率242%、複回収率200%とどれをとっても素晴らしい数字。ジャパンCでは、ちょうど昨年のヴェラアズール(ムーア騎手)のように、道中インで溜めに溜めて、直線ひしめき合う馬群を縫う騎乗がハマりやすい。当然詰まるリスクも高くなるが、JRA短期免許の厳しい取得条件をクリアした各国の腕利きたちは、そういった死線をいくつも潜り抜けてきたのだろう。

ヴェラアズール自身の話だと、芝では典型的な「瞬発力特化型」の戦績。レース上がり34.9秒以下だった3戦は全勝、35.0秒以上を要した6戦では1勝に留まっている。その意味で、昨年の有馬記念、今年のドバイWC(ダート)、宝塚記念、道悪になった京都大賞典はいずれも苦手な条件ではあった。パンサラッサとタイトルホルダーの存在は厄介だが、得意なコースに戻って反撃といきたい。


GⅡからの「ジャパンC狙い撃ちローテ」が炸裂 タイトルホルダー

そして3頭目、忘れてはいけないタイトルホルダー。昨秋の凱旋門賞遠征を境にやや不調だが、GⅠ・3勝の実績と昨春に見せたパフォーマンスはこの相手でも軽視できない。

ジャパンCは有力馬の大半が秋華賞や天皇賞(秋)、凱旋門賞などから来るため、データ上は一見して前走GⅠ組優勢。ただ、近年はこのジャパンC1本に照準を定め、消耗度の大きいGⅠ連戦ローテではなく、GⅡをステップに選んだ実績馬も活躍している。たとえば4歳時のキタサンブラックや3歳時のレイデオロがそうだ。

前走GⅡ組の成績(過去10年),ⒸSPAIA


これを数字で説明するのは難しいが、「前走GⅡで単勝2.5倍以下の1番人気に推され、3着以内を確保した馬」【2-1-0-1】がヒントと言えるだろう。GⅡで断然の1番人気になるほどの馬が、万全の態勢で臨んでくるパターンは不気味だ。

タイトルホルダーも本来の能力を考えれば、オールカマー2着はおそらく余裕残しの仕上げだったはず。そこからパフォーマンスを上げてくる可能性は高い。パンサラッサが大逃げを打つであろう今年は、展開がかなり特殊になると予想される。縦長馬群の2番手から早め先頭に立ち、後続を振り切ってゴールする姿も、想像には難くない。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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