【マイルCS】淀の坂が追走力をカバー 末脚生かしてシュネルマイスターが復活だ
貴シンジ
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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す
先週の武蔵野Sはタガノビューティーを推奨し6番人気2着。得意の東京で実力のあるところを見せてくれた。さて、今回は11月19日(日)に京都競馬場で行われるマイルCSについて下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行なっていく。
・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の敗因」
・適性と素質を知るための「血統評価」
特別登録のあった16頭を検討対象とし、データは過去10年分を使用する。
重要データ:前走GⅠ、GⅡで好走した馬に注目
直近3年は阪神競馬場での開催だったマイルCSも今年は4年ぶりの京都開催となる。昨年こそ6番人気のセリフォスが勝利し、8番人気のダノンザキッドが2着とやや荒れたが、レース全体の単勝回収率は40%、複勝回収率は42%で堅いレースと言える。
そんな中で注目したいのは前走クラスと着順だ。3勝クラスとOPクラスからは1頭も好走馬が出ていないのはさすが秋のマイル王決定戦といったところ。GⅢ組は【2-3-1-45】となっていて計6頭の好走馬が出ているが、全てGⅢ時代の富士Sからの臨戦だった。富士Sは20年からGⅡに格上げされている。となればGⅢ組は苦戦すると考えられる。
続いてGⅡ組は【4-5-7-72】となっていて多くの好走馬を輩出している。GⅠ組は【4-2-2-21】でこちらも好走馬多数。ただ前走GⅠ、GⅡ組に絞っただけでは単勝回収率37%、複勝回収率51%となり、妙味がない。そこで前走着順で絞ると、3着以内だった馬が【8-7-5-32】となり単勝回収率84%、複勝回収率89%となる。基本的に堅いレースということを考えれば、まだ妙味のあるデータとして取り扱えそうだ。
【前走GⅠ or GⅡで3着以内だった出走予定馬】
・エルトンバローズ
・シュネルマイスター
・セリフォス
・ソーヴァリアント
・ナミュール
・レッドモンレーヴ
前走の敗因:毎日王冠のシュネルマイスター
シュネルマイスターの前走は毎日王冠で結果は3着。ペースは前半4F47.9とそこまで速くないなかで、後方待機の競馬を選択。直線では進路がまったく見つからず、ラスト200mで一旦最後方まで下げ、大外まで持ち出してから追い出すというかなり大味な競馬だった。2着のソングラインも直線ではなかなか進路が見つからず追い出しは遅れたが、勝ち馬のエルトンバローズはかなり上手く乗ったという印象だ。
追い込み馬の宿命かもしれないが、あれだけ展開の不利を受けながら勝ち馬とタイム差なしの3着。評価できる内容だった。
血統解説:シュネルマイスター、セリフォス、ナミュール
・シュネルマイスター
母セリエンホルデがドイツ産馬なので日本での牝祖は母。とはいえ、いわゆる「Sライン」の馬でサリオスやソウルスターリングなどと同じファミリーなので馴染みがある人も多いだろう。
Sラインの特徴は、日本の高速馬場にも対応できるスピード性能の高さを持ち合わせた馬が多いことがだ。本馬もサリオスやソウルスターリング同様に高速馬場への適性は高い。母セリエンホルデは現役時に独オークスを勝利。本馬は父がKingmanということもあってマイラーに出たが、徐々に母の血が出てきているように感じる。前走の毎日王冠を見ても折り合いがつくようになった反面、追走力が落ちてマイルがベストだった適性が徐々に1800mにシフトしてきている印象だ。
とはいえ京都競馬場であればラスト800mの下り坂で強制的にスピードに乗れるので、今のシュネルマイスターにとっては東京以上にベストな舞台と言えるだろう。王者復活があるとしたらこの舞台だ。
・セリフォス
母シーフロントがフランス産馬のため日本での牝祖は母。同馬は現役時ベルトランデュブルイユ賞(GⅢ・芝8F)で3着の実績がある。母父はプールヴィルの父やデゼルなどの母父でもあるLe Havre。本馬は母シーフロントやLe Havreの影響があってダイワメジャー産駒にしては切れる脚が使えるタイプに出た。安田記念では今までの後方待機とは違い、先行して馬群を割るという競馬をしたが、ソングラインの切れ味に屈してしまった形だ。
まだまだ柔らかい身のこなしをしているので、先行するより末脚を生かす競馬が合っていそうだ。実力はこのメンバーでも屈指のものがあるが、京都よりは東京向きで、先行するなら足元をすくわれる可能性もある。
・ナミュール
日本での牝祖は10代母シユリリー。長く日本で繋がってきたファミリーで、遡ればオグリキャップも同じ一族だ。3代母キョウエイマーチは97年の桜花賞馬。そのキョウエイマーチを根幹としてファミリーは繁栄していて、産駒には09年皐月賞2着のトライアンフマーチがいる。祖母ヴィートマルシェも繁殖として優秀で本馬の母サンブルエミューズの他に、新潟2歳Sと東スポ杯2歳Sでそれぞれ2着のアヴニールマルシェ、BCディスタフ勝ち馬のマルシュロレーヌ、マーキュリーC勝ちのバーデンヴァイラーなどを輩出。キョウエイマーチ以前は数代活力を見せていなかったが、ここにきてまた再燃の兆しがある。スピードがあり極端な前傾ラップにも対応できるタフさを持った馬が多いことがこのファミリーの特徴だろう。
母サンブルエミューズの父はダイワメジャーでスピードタイプのファミリーの長所を伸ばす形に。本馬はそこにハービンジャーでギアが備わった印象だ。大味な競馬になるタイプだからラスト800mで下り坂がある京都は合っている。消耗戦には強い血統で安田記念よりも前半が速いラップとなれば勝機もある。
Cアナライズではシュネルマイスターを推奨
今回はシュネルマイスターを推奨する。マイラーとしては追走力不足が目立ってきているが、それでも末脚は一級品。京都は今年のマイラーズCで上がり3F32.9秒で勝ち切った舞台でもあり、最も競馬がしやすい競馬場だろう。セリフォスも実力上位であることは間違いないが、安田記念の方が舞台適性は高かった印象だ。
ナミュールは前走の好走でどこまで人気になるかといったところだが、元々実力は一級品。大味なところがあるので負ける時は大敗するタイプ。とはいえ、今回も消耗戦になるようであればチャンスはありそうだ。
【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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