【エリザベス女王杯】前哨戦の好走ライン見極めが大事 データが導くのはハーパー、マリアエレーナ、イズジョーノキセキ
勝木淳
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メジロドーベルとの共通点
この秋は話題多きGⅠが続いた。牝馬三冠、皐月賞馬とダービー馬の最終戦、そしてイクイノックスとドウデュースの激突。記録もタケホープ以来50年ぶりのダービー、菊花賞二冠なるかが取り上げられ、結末はメジロマックイーン以来となる重賞初出走での菊花賞Vと、日本競馬の歴史を感じる場面が多かった。
秋のGⅠ後半戦の開幕を告げるエリザベス女王杯は、前半のような話題は若干少ないが、そのひとつがジェラルディーナの連覇だ。古馬混合になった1996年以降、連覇はメジロドーベル、アドマイヤグルーヴ、スノーフェアリー、ラッキーライラックの4頭が達成した。
このうち、前年制覇から連覇までの1年間で勝ち星を挙げた馬が3頭。1年間未勝利だったのはメジロドーベルしかいない。ジェラルディーナは有馬記念3着を最後に馬券圏内がない。近走絶好調とは言いがたい成績だが、メジロドーベルも似たような戦歴で、1番人気は年下のファレノプシスに譲った。前走毎日王冠6着から女王の座を死守。ジェラルディーナもオールカマー6着から連覇を目指す。
1番人気はわずか1勝
近年、馬券に欠かせない3歳は、秋華賞3着ハーパーとシンリョクカ、ブレイディヴェーグの3頭が登録した。
ハーパーやシンリョクカの前走はデータで照合できるが、ブレイディヴェーグの前走ローズS2着は異例のローテだ。能力に体が追いついていないため、間隔をとり、大事に育てられた結果、秋華賞をスキップすることになった。ローズSを勝ったマスクトディーヴァは秋華賞でリバティアイランドの2着に入っており、能力的には牝馬トップクラスとそん色ない。ジェラルディーナの連覇とブレイディヴェーグの取捨が馬券のカギを握りそうだ。データは阪神施行の3年を含め、過去10年分を使用する。
阪神で行われた3年のうち、21、22年が波乱だったせいもあり、1番人気は【1-2-2-5】勝率10.0%、複勝率50.0%とGⅠとしてはやや寂しい数字だ。
エリザベス女王杯は人気を集めそうな前走1着馬が【3-3-2-37】勝率6.7%、複勝率17.8%とよくない。ちなみにヴィクトリアマイルでも同期間【0-3-0-38】と不振、今年勝ったソングラインも前走10着だった。牝馬GⅠは連勝が難しい。
人気に戻すと、3番人気が【4-0-2-4】勝率40.0%、複勝率60.0%と目立ち、6番人気以内は横並びといった感じ。9番人気以下の伏兵も台頭する。
3歳【2-4-2-30】勝率5.3%、複勝率21.1%、4歳【7-3-6-44】勝率11.7%、複勝率26.7%と4歳が優勢。3歳は秋華賞を目標に進め、そこから転戦してくるのに対し、ここは4歳の目標レース。斤量は3歳でも、状態面は4歳が上回るケースが多い。
オールカマーと府中牝馬Sの違い
昨年2着同着だったライラックや中山牝馬S以来のアートハウス、昇級初戦ゴールドエクリプス、良血サリエラ、府中牝馬S2着ルージュエヴァイユら4歳は、データ通り好走するのか。少しばかり力関係が微妙な印象もあり、今年はなにか起こりそうな予感もある。
前走クラス別をみると、前走GⅠは【2-3-4-27】勝率5.6%、複勝率25.0%とほかのGⅠと比べ、そこまで目立たない。大半は秋華賞組【2-3-1-24】勝率6.7%、複勝率20.0%で、その3着馬は【1-0-0-2】。17年モズカッチャンが5番人気で勝った。ハーパーも人気をライバルたちに譲り、このぐらいの人気に収まるなら狙ってもいい。モズカッチャン、ハーパーどちらもオークスは2着で、距離が延びるのは好都合だ。
主流はひと叩きの前走GⅡ【8-7-4-65】勝率9.5%、複勝率22.6%。その内訳をみると、中3週の府中牝馬S【4-5-3-40】勝率7.7%、複勝率23.1%も悪くないが、オールカマー【3-1-0-11】勝率20.0%、複勝率26.7%など牡馬相手のGⅡを戦った組がいい。ただし、京都大賞典は中4週が響くのか【0-0-0-13】で好走ゼロ。
前走オールカマーはジェラルディーナ、マリアエレーナの2頭。特にジェラルディーナは勝った昨年と同じローテだ。前走オールカマーは好走馬を素直に買うが正解で、2着以内【2-1-0-4】、5着以内でも【3-1-0-8】、6着以下は【0-0-0-3】。4着マリアエレーナはいいが、ジェラルディーナは少し心配だ。不死鳥のごとき連覇を期待する半面、データが味方していないのは頭に入れておこう。
府中牝馬Sについては、1着【1-2-1-4】勝率12.5%、複勝率50.0%を筆頭に5着以内【3-4-2-19】勝率10.7%、複勝率32.1%、6~9着【1-1-1-9】勝率8.3%、複勝率25.0%、10着以下【0-0-0-12】なので、オールカマーより好走ゾーンが広い点に注意しよう。府中牝馬Sについては、前哨戦は前哨戦と割り切って本番に挑んでくるタイプに注意だ。ディヴィーナ、ルージュエヴァイユ、ライラックに9着イズジョーノキセキが候補に残る。
イズジョーノキセキは昨年、府中牝馬Sを勝ち、本番10着だったが、有馬記念4着と使いながら調子をあげる。クイーンS、札幌記念、府中牝馬Sとコンスタントに出走しながら、密かに調子を上げている可能性もある。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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