【京王杯2歳S】近年はラップ傾向の変化で先行馬優勢 小倉2歳S組よりゼルトザームの経験を評価
佐藤永記
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近年はラップ傾向が変化
天皇賞(秋)ではイクイノックスが驚愕のレコードを叩き出した。しかも3番手から進んで、前後半3F34.9-34.7、前後半5Fは57.7-57.5というラップで2000mを走りきったのだから、非の打ち所がないとはまさにこのことだろう。
今週、同じ東京で行われる2歳重賞の京王杯2歳Sは、当然距離も馬齢も違うのだが、近年では先日の天皇賞(秋)を縮めたようなラップになることが増えてきた。2013~18年は後傾ラップで上がり重視となり、上がり3Fは33秒台のレースになる傾向があった。しかし2019年以降は、4年連続でレースの上がり3Fは34秒台になっている。また、前半3Fも2013~18年は35秒以上だったのが、2019年以降は34秒台(2021年のみ35.1)と、前後半どちらも3F34秒台と緩みないレースをしていることがわかる。
また、過去10年の先行馬成績を見ても【6-5-7-17】。なんとレースで先行した馬の51.4%が馬券圏内に入っており、府中の重賞にしては先行馬優勢の数字が出ている。差しは【3-2-3-46】、追込は【0-1-0-36】と、道中の位置取りが下がれば下がるほど成績は悪くなり、長い直線の東京であることを考えたらちょっと悪くなりすぎな感じがする。それだけ前の馬が有利なレースとも言える。
序盤中盤で前につけて、一瞬の脚よりも総合的な能力で押し切る競馬。昨年は特にその傾向が出ており、前後半3F34.6-34.5の緩みないペースで、道中4番手以内の馬が3着まで独占、二桁人気の馬でワンツーとなり3連単222万円超の大波乱となった。2歳馬の短距離重賞でも、これからは「締まったラップで先行する競馬」がトレンドになっていくのかもしれない。
逃げ先行しか経験していない馬が有利
過去10年に馬券圏内に入った30頭の過去レース全ての脚質を集計すると、逃げ、先行の比率は76.1%となるのだが、過去10年の全出走馬で同様に集計すると、その比率は59.6%まで落ちる。つまり当レースまでに前々で競馬していた馬のほうが信頼度が増す、ということになる。
ちなみに、馬券圏内に入った馬のなかで、過去に差し、追込で好走経験があったのは、2019年タイセイビジョンが最後。函館2歳Sで道中13番手から追い込み2着、京王杯2歳Sでは道中6番手からの競馬で1着だった。
直近3年の好走馬で差し、追込の競馬を経験していたのは、2022年のフロムダスクと2021年のキングエルメスのみ。フロムダスクは新馬戦で逃げて1着、カンナSで4角9番手からの競馬で10着、京王杯2歳Sで逃げて2着。キングエルメスは新馬戦で先行して1着、クローバー賞で道中7番手から5着、京王杯2歳Sで先行して1着という結果だった。いずれも逃げ先行で新馬勝ちから2走目に差しに構えて凡走し、京王杯2歳Sで前々の競馬に戻して好走しているということになる。
直近3年では、この2頭以外の好走馬はいずれも逃げ、先行の経験しかない。これは直近3~4年の傾向とほぼ合致しているといえよう。となれば徹底して「逃げ先行経験のみ」の馬を狙いたい。
ダートや重馬場でも結果を出してきたゼルトザーム
今年のメンバーのうち、逃げ先行のみで戦ってきた馬は思ったより少なく、さらに結果が出ている馬となるとさらに限られてくる。
まず挙げるのは、函館2歳S勝ちからの転戦となるゼルトザーム。その函館2歳Sは差し切り勝ちともいえるような内容だったが、道中の位置取りは15頭立ての5番手で、先行策に末脚がついてきたような形だった。デビュー戦がダートで、函館2歳Sも重馬場だったため時計面での実績はないが、逃げ先行策で戦ってきた馬のなかでは一番の実績を持っている。人気が上がる前に条件が合うここでぜひとも狙ってみたい。
小倉2歳Sに未出走ながら登録もあったジャスパーノワールは、新馬戦こそ凡走したものの続く未勝利戦で逃げ切り勝ち。ゲートの出は普通だが、その後の加速が良く、スタートが安定したらより序盤の位置取りが良くなりそうだ。また、未勝利戦は新潟芝1200m戦にてコーナーでいったんスピードを落とし、直線で再加速、ラスト3Fは12.0-11.5-11.6といった形で、まだまだ良くなる余地が残っているように感じられる内容だった。
このほか逃げ先行策のみで戦ってきた馬は、新馬戦逃げ切り勝ちからの参戦となるタイガードラゴンや、カンナS勝ちのオーキッドロマンス、ききょうS5着のレディーエンジェル(ファンタジーSと両にらみ)までが今年の該当馬となる。
小倉2歳Sで後方から連対したアスクワンタイムとミルテンベルクが登録していて、人気はこの2頭になりそうだが、近年の先行馬が有利な傾向に乗るならば、名前を挙げた5頭を中心に今年も波乱に期待してみたい。
<ライタープロフィール>
佐藤永記
20代を公営ギャンブラーとして過ごし、30歳から公営競技の解説配信活動を開始。競馬を始め多くの公営競技ファンに各競技の面白さや予想の楽しみを伝えている。現在はYoutubeで配信活動を続けながらライターとして公営競技の垣根を超えて各所で執筆中。
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