【天皇賞(秋)】イクイノックスの前走宝塚記念組はやや苦戦 ドウデュース、プログノーシスはどうか

勝木淳

2023年天皇賞(秋)に関するデータ,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

今年も名勝負の予感しかない

最後はパンサラッサの気迫とイクイノックスの解き放たれた進化が激突した。シンプルかつ大胆な真っ向勝負は秋の空を熱く染めた。

あれから1年、イクイノックスが連覇に挑む。この1年間を無敗で駆け抜けた天才はさらなる伝説を競馬史に刻むのか。それとも同い年のダービー馬ドウデュースが連勝を止めるのか。ひとつ年上のプログノーシスがまとめて負かすのか。今年も秋の盾は名勝負の予感しかしない。データは過去10年分を使用する。

天皇賞(秋)の人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気は【6-2-1-1】勝率60.0%、複勝率90.0%と圧倒的だ。かつてはシンボリルドルフ、メジロマックイーン(降着)、トウカイテイオーら名馬が敗れる波乱のステージだったが、近年は春以上に1番人気が強く、18年10着スワーヴリチャードを除きすべて3着以内で、4年連続連対中だ。滅多に崩れない。

2番人気【1-2-2-5】勝率10.0%、複勝率50.0%以下は、7番人気【0-2-0-8】複勝率20.0%まで可能性がある。6番人気【0-0-4-6】複勝率40.0%など中穴にもツボがあり、買い目はしっかり練ってほしい。2番人気の数字を考えれば、イクイノックスとドウデュースのワンツーではないかもしれない。

天皇賞(秋)の年齢別成績,ⒸSPAIA


最近は3歳クラシック組が菊花賞ではなく、中距離を求めてこちらに回るケースが多かった。エフフォーリア、イクイノックスと連勝中でトレンドになりつつあるものの、今年は珍しく春のクラシック組がそろって菊花賞へ向かった。登録が13頭にとどまったのは、強力すぎる上位陣の存在と3歳馬不在の影響もある。

4歳【3-6-4-30】勝率7.0%、複勝率30.2%、5歳【5-4-3-38】勝率10.0%、複勝率24.0%とデータ上は5歳が4歳を退ける傾向にある。とはいえ4歳1番人気は【1-2-0-1】勝率25.0%、複勝率75.0%。イクイノックスが崩れるのは想定しにくい。

規格外のイクイノックスにデータは関係ないのか

イクイノックス、ドウデュース、プログノーシスはそれぞれ異なる臨戦過程を経てここに挑む。3頭以外に台頭する伏兵はいるのか。前走傾向を参考にひもといていこう。

天皇賞(秋)の前走クラス別成績,ⒸSPAIA


まず気になるのはドウデュースだ。前走ドバイターフは左前肢跛行によって出走取消。そこから7カ月半ぶりの復帰戦になる。海外帰りは【0-0-0-4】だが、昨年5着シャフリヤールなど6月のイギリスや4月の香港ばかりで、ドバイ以来はいない。それもドウデュースはドバイで競馬をしていない。その後、じっくり休み、復帰してくる。万全なら今年初戦の京都記念のように圧倒的な強さを発揮できる。イクイノックスを下してダービー馬になったというプライドを胸にどこまで勝負できるか。東京の末脚比べなら負けられない。

天皇賞(秋)の前走GⅠ、レース別成績,ⒸSPAIA


そしてイクイノックスだ。前走GⅠ【5-7-4-20】勝率13.9%、複勝率44.4%のうち、宝塚記念は【1-3-2-12】勝率5.6%、複勝率33.3%。安田記念【2-2-1-3】勝率25.0%、複勝率62.5%と比べると、勝ち切れていない。これはスタミナ志向でスピード勝負になりにくい宝塚記念と、スピードを問う安田記念の違いだろう。

天皇賞(秋)は2000mといってもマイル寄りの中距離戦なので、宝塚記念で多少上がりがかかる競馬を経験したことがアダとなりやすい。とはいえ、これがイクイノックスに当てはまるかどうか。昨年の天皇賞(秋)は逃げ粘るパンサラッサを上がり32.7で差し切り、1:57.5を叩き出した。スピード不足を疑うのは愚問だろう。このデータでいえば、ジャスティンパレスの方がスピード勝負への対応がカギになる。

またヴィクトリアマイル以来のスターズオンアースは前例なきローテーションだが、この法則に照らし合わせるなら買える。マイルがベストのソングライン、ソダシに及ばなかったのも適性が中距離寄りなら納得できる。

天皇賞(秋)の前走GⅠ、着順別成績,ⒸSPAIA


前走JRAのGⅠのうち、着順内訳は1着【0-2-1-3】複勝率50.0%で勝利がない。これは天皇賞(秋)が下半期の古馬中距離GⅠ初戦であり、もっとも間隔が詰まった宝塚記念からでも4カ月以上開くことが影響した数字だ。これまで中10週以上の休み明け【4-1-0-0】と休みながらキャリアを積んできたイクイノックスにこのデータも不問ではないか。確かに休み明けのGⅠは常識的には厳しく、まして連勝となるとしんどくなる。しかし、そういった考えを覆す歩みで進化してきたのがイクイノックスであり、今後もこの傾向を踏襲する超A級はあらわれると考えよう。

対抗格を探すなら、前走GⅠ・3着以内【4-4-2-6】、4着以下【1-3-2-14】なので、スピードへの対応がカギになるジャスティンパレス、その心配が少ないスターズオンアースは候補に残る。

天皇賞(秋)の前走GⅡ、レース別成績,ⒸSPAIA


前走GⅡ【5-3-6-88】勝率4.9%、複勝率13.7%は出走数が多いため絞りにくく、前哨戦の毎日王冠【2-1-5-35】勝率4.7%、複勝率18.6%は特に頭を悩ませる。ここは3着以内【2-0-4-10】、4着【0-0-0-4】、5着【0-0-1-3】、6着以下【0-1-0-18】なので、4着アドマイヤハダルはそこまでアテにしづらい。

ならばプログノーシスの札幌記念【1-2-0-16】勝率5.3%、複勝率15.8%だろうか。札幌記念→天皇賞(秋)はかつてエアグルーヴが連勝したが、最近はそこまで結果を残せていない。それも1着【0-1-0-3】、2着【1-1-0-1】と負けた組がいい。勝ったプログノーシスは2000m【4-1-0-1】のうち2勝がGⅡで、この距離のGⅠが最適なのは間違いない。札幌記念が2:01.5、自身の上がり36.0で、宝塚記念と同じくスピードを問わない競馬を経験したことがどう出るか。本来は高速決着にも速い上がりにも対応できるが、前走経験が気になる。

天皇賞(秋)に関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。


《関連記事》
「京都巧者」をデータで徹底調査 京都ダートに抜群の適性を誇る種牡馬とは?
武豊騎手、JRA重賞350勝までの道のり 節目の重賞勝利を振り返る
2023年に産駒がデビューする新種牡馬まとめ 日本馬の筆頭・レイデオロは「ディープ牝馬」との配合で期待

おすすめ記事