【セントライト記念】ソールオリエンスの相手探し Cアナライズの相手筆頭は「前走不利データ」を持つレーベンスティール

貴シンジ

中山開催直近9年のセントライト記念、前走レース別成績,ⒸSPAIA

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

先週の紫苑Sではエミューを推奨し5番人気9着。火曜日時点の予想では好走データに当てはまる可能性が高いと踏んでいたが、結果的には5番人気と好走データには当てはまらなかった。さて、今回は9月18日(月)中山競馬場で行われるセントライト記念について下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走不利データ」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった17頭を検討対象とし、新潟開催だった2014年を除く過去9年分のデータを使用する。

重要データ:ダービーかラジオNIKKEI賞か

前走レース別成績,ⒸSPAIA


セントライト記念と言えば春からクラシック戦線を戦ってきた馬、ラジオNIKKEI賞で頭角を現した馬、条件戦やその他の重賞からここへ駒を進めてきた3パターンの馬たちが激突する一戦だ。前走レース別の成績を見ると、ダービー【4-5-3-19】、ラジオNIKKEI賞【2-1-1-9】、その他【3-3-5-74】となっていて、どの路線からでも勝ち馬は出ている。

ただダービーとラジオNIKKEI賞組以外から勝利をつかんだ馬はいずれも人気馬。13年1着ユールシンギングは500万下(現1勝クラス)からの臨戦だったが3番人気、17年1着ミッキースワローは1000万下(現2勝クラス)からの臨戦で2番人気、22年1着ガイアフォースは1勝クラスからの臨戦で3番人気だった。

ではダービーとラジオNIKKEI賞組はどうかというと、1番人気と4番人気が2勝、6番人気と9番人気が1勝ずつで、その他の組に比べれば穴っぽい馬たちの勝利が見受けられる。回収率で見てもダービー組が単勝回収率85%、複勝回収率105%、ラジオNIKKEI賞組が単勝回収率373%、複勝回収率99%と高水準なのに対して、その他の組は単勝回収率20%、複勝回収率36%と低調な数字になっている。

基本的にはダービー、ラジオNIKKEI賞組を中心に考え、その他の組を馬券に組み込むのであれば、ある程度人気を背負っている馬が良さそうだ。人気馬ではドゥラエレーデが前例のない宝塚記念からの参戦で取り扱いが難しいが、ダービー以外の前走GⅠの成績は【0-0-1-3】と良くなく、割引対象として考えたい。

【前走ダービーの出走予定馬】
・グリューネグリーン
・シャザーン
・ソールオリエンス

【前走ラジオNIKKEI賞の出走予定馬】
・シルトホルン
・レーベンスティール

前走不利データ:ラジオNIKKEI賞のレーベンスティール

レーベンスティールの前走はラジオNIKKEI賞3着。同レース時の記事では条件戦とGⅢ組が不利でOP・GⅡ・GⅠ組が優勢と記した。ラジオNIKKEI賞での条件戦組の成績は【3-4-5-55】となっていて、好走馬を出しているが率では圧倒的にOP・GⅡ・GⅠ組に劣る。

レーベンスティールは1番人気だったが結果は3着、人気を考えれば物足りないのは事実だろう。しかし、重賞の流れを経験できたことは貴重で、成長力のある血統だけに今回への上積みは期待できる。

また2勝馬であるため優先出走権を獲得できなければ菊花賞出走は難しく、ここで賞金を積まなければ秋以降の古馬混合重賞への参戦も厳しくなる。陣営もここは前哨戦という考えではなく、背水の陣で挑んでくるのではないか。

血統解説:キングズレイン、ソールオリエンス、レーベンスティール

・キングズレイン
日本での牝祖は祖母リッスン。リッスンはGⅠフィリーズマイルの勝ち馬で牝祖としての実績は十分。本馬の母タッチングスピーチはローズS勝ちに加えエリザベス女王杯3着、その全弟には共同通信杯3着のムーヴザワールドや菊花賞2着のサトノルークスがおり、リッスンは繁殖牝馬としても優秀だ。このファミリーは3代母のBrigidから世界各国で抜群に繁栄していて、リッスンの枝はこれでも目立たない部類だ。

この牝系はなんといっても早熟性の高い馬が多いことが特徴。GⅠ級の馬たちは総じて2、3歳の頃からバリバリ走ってくる。そこから古馬になって少し尻すぼみな成績になってしまうのもよくあるパターンで、主戦場は芝の中距離。パワーもあってタフな馬場も歓迎といったところ。

本馬は父がルーラーシップということで、一族の他の馬に比べると成長力を補えている可能性が高い。ただ父譲りのすらっとした中距離馬体型で、ストライドの大きい走りをする点は器用さが求められる中山コースではマイナスに働くかもしれない。条件戦組では人気になる一頭と予想されるが、前走の東京コースの方がマッチしていただろう。

キングズレインの血統表,ⒸSPAIA

・ソールオリエンス
日本での牝祖は母スキア。同馬は現役時フランスの芝中距離GⅢ・フィユドレール賞を勝利している実績馬だ。牝系を遡れば3代母Gleam of Lightの孫に英オークスなどGⅠ・5勝のLoveがおり牝系の活力も十分重賞級だろう。兄にディープインパクト産駒のヴァンドギャルドがいる通り、母系のデインヒルの影響も強くて早期からの活躍も可能だ。

一方MotivatorやRainbow Questも持ち合わせているので成長力も高い。新馬戦は前半1000m65秒の超スローペースを上がり3F33.3秒で勝ち切ったり、京成杯の一気のピッチアップからも瞬発力は十分。ダービーは逃げたパクスオトマニカ以外は極端なスローペースとなったことで引っ掛かり、タスティエーラより後ろの位置取りになってしまったことが敗因だろう。

決して展開が向いたとは言えない中、2着まできたのは実力以外の何物でもない。重厚な血を持つ母系で馬場が渋るのも問題ない。春の時点では馬体に幼さを残しており、ひと夏こえての成長も期待できる。もちろん秋のGⅠ戦線に向けた叩きの一戦ではあるが、それでも春以上の走りを見せてくれる可能性が高いだろう。

ソールオリエンスの血統表,ⒸSPAIA

・レーベンスティール
日本での牝祖は5代母マギージグス。母トウカイライフはダート1700~1800mで中央3勝。母の産駒は3/5が勝ち上がっており優秀な繁殖と言える。本馬が属するF5の牝系はオーストラリアで長らく活力を見せている牝系で、最近だとヤマニンバイタル産駒でシドニーCを勝ったWho Shot Thebarmanなどもいる。しかし、近いところだと4代母の半姉に京成杯3歳S勝ちでエリザベス女王杯2着のタケノダイヤがいる程度で、ほとんど活躍馬が出ていない。

牝系としては芝ダートどちらも走るが、オーストラリアの中長距離戦線を主戦場にしてきた牝系だけあり、最大の特徴は豊富なスタミナ。本馬はリアルスティール産駒でスピードもあるので中距離がベスト。今回の2200mはギリギリだろう。ポジションを楽に取れるところは本馬のストロングポイントで、競馬も上手いので自分の持っている能力はしっかり出せるはずだ。

新馬戦はソールオリエンスとタイム差なしの接戦を演じているが、同馬はゴール直前までムチを温存しており、着差以上に差があった。さらに血統の成長力を考えてもソールオリエンスに軍配があがるため、逆転するには相当な展開の助けが必要だろう。しかし、操縦性が高く中山コースは向いている。ソールオリエンス以外に対しては一日の長があるだろう。

レーベンスティールの血統表,ⒸSPAIA

Cアナライズではソールオリエンスを推奨

今回のCアナライズでは素直にソールオリエンスを推奨する。今回の仕上がりが100%ということはまずないだろうが、それでも成長力で春以上の走りを見せてくれる可能性が高い。そうなるとこのメンバーで太刀打ちできる馬は見当たらず、素直に信頼するのが良いだろう。相手筆頭としては、前走不利データや中山適性を見込みレーベンスティールを挙げておきたい。

【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。


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