【京成杯AH】開幕週で内有利のコースと馬場 ハンデ51kgグラニットの逃げ切りに期待

山崎エリカ

2023年京成杯AHのPP指数,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

内枠が断然有利

京成杯AHは内枠の馬が有利。これは中山芝1600mが緩やかなカーブが続く円状コースで最初の2角で内に入れないと、終始外々を追走することになってしまうことが多いからだ。今年は2004年以来の少頭数だが、参考までに紹介すると、過去10年で馬番13番より外の優勝はない。

2着は2018年ワントゥワン、2020年スマイルカナの2頭だが、同馬は逃げて最短距離を立ち回ったもの。ワントゥワンは最後方列から3~4角を大外から押し上げてはいるが、捲り馬の出現で展開に恵まれた面があった。

この内枠有利の傾向は馬場が高速化するほど顕著になる。1分30秒7のコースレコードだった2012年は、馬番3番のレオアクティブが1着、1番スマイルジャックが2着、2番コスモセンサーが4着、5番ファイアーフロートが5着と、ほぼ内枠で決着した。

2019年に1分30秒3にレコードが更新されたが、その年は馬番10番のトロワゼトワルが2角で先頭を取りきり逃げ切り勝ち。しかし、10番人気で3着に好走したのは内ぴったりの競馬をした馬番2番ジャンダルム。4着は3番カルヴァリオ、5着は1番プロディガルサン。ちなみに6着は5番ストーミーシーだった。

今年のダービー卿CTのように3~4角でもペースが上がらず、タイムの遅い決着になれば、3~4角で好位~中団の外々を回ってもそれほど影響はない。しかし、開幕週の今回はある程度、馬場がタフになっても内枠有利の可能性が高い。

能力値1~5位の紹介

京成杯AHのPP指数,ⒸSPAIA


【能力値1位 インダストリア】
前々走のダービー卿CTで初重賞制覇を達成した馬。前々走は8番枠から五分のスタートを切り、そこから無理をさせず、じわっと流れに乗って中団外目を追走。3~4角でも前がペースを引き上げなかったため、ここで好位の外まで進出し、4角で仕掛け3列目付近で直線へ。そこからジリジリ伸びてラスト1Fでは2列目。ラスト1Fですっと抜け出し3/4差で完勝した。

ダービー卿CT当日は、3~4角と直線の内側が悪化しており、同日に行われた芝4レース全てで差し、追い込み馬がワン、ツーを決めていた。それが自己最高指数の記録に繋がった面はある。しかし、本馬を終始マークしていたジャスティンカフェを最後まで寄せ付けなかったことは評価できる。

しかし、前走のエプソムCはジャスティンカフェが優勝し、本馬は7着敗退。前走は前々走で激走した疲れもあったと見ているが、3番枠と内枠だったこともあり、意識的に出して好位の内と、勝ちにいったことも敗因だろう。前走はゴリゴリ前の位置を取りにいったわけではないが、末脚を生かしてこその本馬としては、1Fの距離延長でもありながら位置を取りにいき過ぎた。

今回は実績のあるマイル戦。後方で脚を温存し、3~4角で内目を通るか、タフな馬場で前が崩れ、後方からズドンという展開なら十分チャンスはあるだろう。脚質上、展開の制約を受けるタイプで、中心視するのは危険だが、今回は内から捌くのが上手い鞍上なので、3~4角で上手く内目を走れそうな気がしている。

【能力値2位 ソウルラッシュ】
一昨年の暮れにマイル路線に転向し、4連勝で昨年のマイラーズCを優勝した馬。同レースは13番枠から出遅れ、そこから促して流れに乗ろうとしたが、外から被されてやや窮屈になって位置が下がり、後方中目を追走。4角出口で外に誘導されると、直線序盤は内に刺さる場面がありながらも、立て直されてさらに外に出されると、一気に4番手まで上がり、そこからバテた馬を交わして半馬身差で勝利した。

本馬は昨年の安田記念では最後の直線で詰まり、位置が下がる不利があって13着に敗退。しかしその後は富士S、マイルCS、マイラーズCでは全て0.3秒差以内と、安定した走りを見せている。前走の安田記念は出遅れ、さらに両サイドに挟まれ後方に下がってしまう不利と、3~4角で後方馬群の中目で包まれて位置が下がる不利があって9着に敗退した。

昨年の安田記念は不利がなければもっと上の着順を狙える手応えはあった。しかし、今年は最後の直線以降の進路取りはスムーズでありながらも、伸びを欠いたあたりに物足りなさはあった。しかし、それは休養明けのマイラーズCで好走した反動だろう。今回はそこから立て直されての一戦。2番枠の今回は前走から巻き返しを見せる可能性が高い。ハンデ59kgは不安だが、重い印は打ちたい。

【能力値2位 ラインベック】
オープンクラス昇格後は中距離路線を使われ、そこでは結果を出せなかった。しかし、新馬戦、中京2歳Sを連勝したマイル路線に転向すると上昇。5走前のリゲルSでは、2番手あたりから逃げるシャイニーロックの最内を突こうとしたところ、同馬の内締め(斜行に近い形)で進路を失い、惜しい2着に敗れた。

しかし、その次走の東風Sではその鬱憤を晴らすかのように自己最高指数を記録して勝利。同レースは4番枠から好スタートを切ってハナに立ったが、外から出鞭を入れてハナを主張するノルカソルカを行かせて、やや離れた2番手を追走。3~4角で前のスペースを詰め、最短距離から最後の直線。最後までしぶとく伸びてノルカソルカを捉え、ゾンニッヒ(次走ダービー卿CT・3着)の追撃を振り切って半馬身差で完勝した。

本馬は休養明けで東風Sを好走したその次走では、重馬場を先行したこともあり9着に崩れた。ただその後は米子S2着、関屋記念3着と安定した走りを見せている。今回も3~4角でロスがなければ安定して走れると見ているが、起爆力がないので勝ち負けとなると微妙なところではある。

【能力値4位 ウイングレイテスト】
5走前に中山芝1600mのニューイヤーSを勝利した馬。同レースは1番枠から好スタートを切り、そこから促されて先行し、最終的にハナを取り切った。松岡騎手らしく、外の逃げ馬ノルカソルカがハナへいくなら2番手でもいいというスタイルの逃げ。レースは前半4F47秒4-後半4F45秒8のかなりのスローペースだったが、中盤はノルカソルカに突かれたこともあり、ある程度ペースは流れた。

本馬は3~4角から動き、ラスト1Fでやや甘くなり、外からサクラトゥジュールにクビ差まで詰め寄られたが、これまでの競馬ぶりから一転、自ら目標になりながらも重賞通用レベルの指数で勝利したことは評価できる。

ただ近走は少しずつ後ろからの競馬をするようになっている。今回は開幕週、それを意識してこの状態から前に行こうとすると、序盤でやや無理に脚を使うことになりやすい。それが最後に微妙に伸びを欠くことを誘発してしまうかもしれない。

【能力値5位 メイショウシンタケ】
サマーマイルシリーズ第一戦・米子Sを勝利した馬。同レースは11番枠から出遅れて、中団よりやや後方の外を追走。前の1番人気ジャスティンスカイとのスペースを作って3角へ。3~4角では最短距離を立ち回り、4角でスペースを詰め切って、出口で中目に誘導されると、好位列の間を割ってしぶとく伸び、ラスト1Fで突き抜け1馬身1/4差で完勝した。

しかし同レースは、ノルカソルカが激しい先行争いを制して逃げ、前半4F44秒9という激流を作ったことで、後方で脚をタメたことが功を奏したもの。それも3~4角でロスなく乗られており、上手く脚をタメたことで自己最高指数を記録した。

前走の関屋記念は11番枠からやや出遅れ、そこからじわっと挽回して中団やや後方を追走。3~4角でも外目から仕掛けを待ち、4角出口で前のミッキーブリランテの外に出ると、序盤はジリジリだったが、ラスト2Fからしぶとく伸び始め、ラスト1Fでも食らいついたが、5着までだった。

本馬は時々出遅れることもあり、二の脚も遅いとなると、開幕週で前が残る流れになるようだと不安がある。ただし、前走はメンバー最速タイの上がり3F32秒8を記録しており、見た目以上に切れる脚が使えていたことから、通用する可能性は残している。

穴は逃げ馬のグラニット

グラニットは昨秋のサウジアラビアRCで、7番人気で大逃げをうち、2着に入って波乱の立役者となった馬。同レースは1番枠からまずまずのスタートを切って、押してハナを主張。道中も淡々とペースを刻んで後続を引き離し、10馬身ほど差を広げて直線へ。さすがにラスト2Fで甘くなり、最後はドルチェモアに交わされたが、3着以下は2馬身半差以上の差を付け完封した。

さらにタフな馬場で行われた3走前のスプリングSでも、1番枠からトップスタートを決め、後続を引き離しての逃げ。当時は重馬場ながら優秀なタイムが出ているように、とても逃げ馬が残れるペースではなかったが、0.4秒差の4着に粘った。同馬からやや離れた2番手を追走していたシルトホルンが9着に敗れていることからも、スタミナ型の逃げ馬と言える。

前走のラジオNIKKEI賞は2番枠から好スタートを切ったが、いつもよりも行きっぷりが悪く、かなり押して出鞭も入れハナを主張。外のシルトホルンの方が出脚が良く、同馬がしつこく抵抗したため、ハナを取り切るのに時間がかかった。先頭に立ってからはペースを落としたが、4角で外からまた同馬に並ばれ、直線序盤ではエルトンバローズにも並ばれて交わされたが、0.6秒差で6着は死守した。

前走は休養明けの影響があったようで、ハナを取り切るのに苦労したこともあり、後続馬とのリードを奪い切れなかった。しかし今回、同型馬はシャイニーロックのみ。また同馬がハンデ57kgに対し、グラニットはハンデ51kgということから、同馬がハナを切る可能性が高い。グラニットの勝ちパターンは大逃げであり、4角でどこまで後続とのリードを奪えているかが勝敗のカギとなる。雨の影響で時計の掛かる馬場は望むところだろう。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)インダストリアの前走指数「-17」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.7秒速い
●指数欄の下線、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

《関連記事》
【京成杯AH】関屋記念組が最多の6連対 本命は好走条件を満たすメイショウシンタケ
【京成杯AH】最多勝騎手は6勝の横山典弘騎手 最重量の優勝馬など「記録」を振り返る
【京成杯AH】前走・関屋記念3着のラインベックは大チャンス ソウルラッシュは連勝した舞台で巻き返し可能

おすすめ記事