【札幌2歳S】データは逃げ圧倒的不利も… 前走重賞級の時計で逃げたセットアップに期待

佐藤永記

札幌2歳Sの前走・逃げの成績,ⒸSPAIA

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逃げは割引

夏の2歳重賞シリーズのなかでも、後々にGⅠホースとなる馬を多数輩出している札幌2歳S。早い時期にコースを1周する重賞というのは、それほど貴重な舞台なのだろう。ただ、貴重とはいえデビュー戦から中距離で走り、1周コースを経験した馬の出走が多いので、経験的には問題なさそうに思える。

札幌2歳S 過去9年,ⒸSPAIA


しかし、実際はレースの質が新馬戦とは大きく変わってしまう。札幌や函館などの1800m戦を経験したとはいえ、大半の新馬・未勝利では前半1000mを1分3秒以上のスローな時計で、残り3Fあたりからヨーイドンといった競馬になりがち。

だが、直近9年の札幌2歳S(10年前は函館開催)になると前半1000m平均は1分1秒0と、新馬や未勝利と比べて急激にペースが上がっている。逃げて新馬を勝った馬が多く出走するため、引くに引けないペースになってしまい、結果的に逃げは好位を走る馬たちに捕まってしまう傾向にあるようだ。

札幌2歳S 脚質データ(過去9年),ⒸSPAIA


実際、逃げ馬の成績は直近9年で【1-0-0-8】と、2016年トラストの勝利以外は馬券圏内に入ることができず、2桁着順6回と大敗も多い。さらに「前走が逃げだった馬」の成績も【1-2-1-25】と芳しくないうえ、連対した3例は2014年の2着馬と、2015年の優勝馬と2着馬で、いずれもデータ期間ギリギリだ。3着の1例は2020年3着のバスラットレオンで、本番では2番手からの競馬だった。

つまり、本番での逃げは苦戦しており、逃げて勝ち上がった馬が本番で控える競馬をした場合も同様ということになる。それくらい、この時期の1周競馬の2歳重賞は折り合って末脚を生かすことが大事なのだろう。


例外かもしれないセットアップ

そうなると逃げたことのない有力馬に注目したい。阪神の新馬で33.7の上がりで追込を決めたギャンブルルームや、重馬場の札幌新馬を2番手で折り合って抜け出したガイアメンテあたりが人気でも注目ということになるのだが、一頭だけ例外かもしれない馬がいる。

それは札幌で逃げて未勝利勝ちをしたセットアップだ。前走は、8月19日の札幌1800m未勝利だったのだが、前半1000m通過が1分0秒9だったのだ。先程も述べたとおり、近年の札幌2歳Sでの前半1000mは平均1分1秒0である。他の出走馬が数秒遅いペースのレースで勝ち上がって来ている中、この馬は自ら札幌2歳S並のペースで逃げて押し切ったことになる。

さらに勝ちタイムは1:48.5。直近3年の札幌2歳Sの勝ちタイムは1:50.0、1:49.1、1:48.2である。1:48.2は3年前にソダシが記録した2歳コースレコードだったが、それに迫る時計だ。もちろん、札幌の芝は先週のレース中に豪雨に見舞われたこともあり、例年より荒れてきている印象がある。未勝利時と同じ時計は出にくいだろうと思われるが、1秒遅くなった程度であっても例年並の逃げ粘りとなる。他の逃げ馬との位置取りと馬場の悪化具合が鍵となるが、前走の未勝利と同じレースができれば、勝ち負けになるはずだ。

時計が良いことは知られているため上位人気の一角になるかもしれないが、敢えて当欄では過去傾向に逆らって……というよりセットアップが「過去を超える馬」であると期待して連軸の本命で狙ってみたい。

<ライタープロフィール>
佐藤永記
20代を公営ギャンブラーとして過ごし、30歳から公営競技の解説配信活動を開始。競馬を始め多くの公営競技ファンに各競技の面白さや予想の楽しみを伝えている。現在はYoutubeで配信活動を続けながらライターとして公営競技の垣根を超えて各所で執筆中。

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